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【完結】悪役流儀の世界の変え方  作者: はるしののみや
2章 10〜11才 旅の仲間
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第21話 グアラ王国②


「久しぶりの一人部屋だわ!」


 大きいベッドの上に身を投げるようにして横たわり、私は歓喜の声をあげた。



 あの食事の後、馬車でしばらく揺られた私たちはグアラの王城に到着した。


 本当にオスカー様って王子様だったんだ……と感動したのは言うまでもない。


 

 一人だけ観光客のように声をあげながら王宮にはいり、美しすぎる調度品に目を奪われながらメイドさんに連れられて、私たちは一人ずつ立派な部屋に案内された。


 そして食事の時間まで部屋で過ごすようにいわれて扉が閉まり、ようやく私は部屋を見回した。



 ……シャーリーンの部屋より広い立派な空間だ。



 広すぎてどう使えばいいかわからない元平凡な私は、とりあえずベッドに自分の居場所を見出したのだった。


「レヴィン様、これからしばらく、たくさん話せそうですね!」


 私がベッドにごろんと転がったまま言うと、途端にぽんと音がなり、私の横に人型のレヴィン様が現れた。


「わ!? 久しぶりですね、その姿は」


 眼福眼福と心の中でつぶやく。


 レヴィン様は元々表情豊かなわけではないけれど、ドラゴンの姿の時はさらに感情がわかりにくいから、実はヒト型で会話できる方が楽しかったりする。


「しばらくグアラに滞在することになりましたわ。夜は一人部屋ですし、日中も今までよりプライバシーがありそうです」

「そうだね、やっと壁の向こうにも行けるかな」

「行きたいです! できれば毎日でも」


 少し前から、人目を盗んではレヴィン様と一緒に魔力のコントロールや魔法の組み合わせ方を学んだりしていたけれど、流石に、実戦らしい特訓は今までの環境じゃできなくて。


 そんなわけでレヴィン様は、彼のすみかがある「壁の向こう」へ行こう、とずっと提案してくれていたのだ。


 そこなら喜んで一緒に特訓してくれる魔物たちもたくさんいるし、周りを気にせず動いたり魔法が発動できるからね。



 ところが移動はレヴィン様が瞬間移動してくれるから問題ないものの、私の姿がしばらく見えなくなると当然みんなを心配させてしまうし、狭い船の中では誤魔化せる場所があるはずもないので、「壁の向こう」への訪問は延期になっていたのだった。



「楽しみになってきましたわ! ねえ、レヴィン様、それだけじゃないわ。嬉しいことがあったのよ。私、ルイスとラッセンさんとテトラに打ち明けたんです」

「うん、見てたよ」


 ルイスが、実は二属性もちで光魔法まで使えることを明かしてくれた時、私は少し自分を恥じた。


 そしてラッセンさんとテトラが、私が不思議な大魔法を使ったことを知ってなお、私の体を心配してくれていたのを見て、また恥じた。


 ──────私は、この人たちを信用していいんじゃないだろうか。


 そうして私は彼らに、自分が全属性であることと、詠唱や魔法陣がなくても魔法を発動できることなどを話したのだった。


「よかったね。信頼すべき人を、信頼できて」

「ええ、でもそれはね、もし傷つく結果になってもレヴィン様と逃げればいいわって思えたからでもあるんです。あなたの存在が私を支えてくれてるの。ありがとう」


 私が言うと、居心地悪そうにソワソワとしたレヴィン様が、どうも……とだけ答えた。



「さて、レヴィン様。せっかくですからグアラのお城探検でもしましょうか!」

「夕飯までこの部屋にいてと言われてなかった?」

「だけど夕飯まではまだまだ時間がありますもの」


 ねっ、と言って私がベッドから飛び起きると、レヴィン様はまたため息をついて、瞬く間にかわいい手乗りドラゴンの姿に変化した。




 ◇◇◇




 メイドたちは突然の客人対応で忙しいのか、部屋の前の廊下には誰もいなかった。



 王城ってところせましと衛兵が並んでるイメージだったけど、この離宮は客室ばかりで王族の部屋は本宮にあり、そちら以外は比較的警備も手薄らしい。


 使用人に出くわしても、オスカー様が言い含めてくれているのか丁寧にお辞儀されるくらいで、うろうろするなと怒られることもなかった。


「ね、レヴィン様。国軍かしらね?」


 廊下に太陽の光を存分に取り込む広い窓の向こうに中庭があり、そこで訓練している多くの兵士らしき姿にみえた。


「ラートッハにだけ軍がないのはやっぱり合理的じゃないと思いません? そういえばまともな歴史書が、グアラの国立図書館にならあったりするかしら」

「きみ、難しいものをお探しなんだね」


 突然背後からきこえた声に振り向くと、そこには見たこともないほどの絶世の美少女────いや、黒髪が艶やかな男装の麗人、が立っていた。


「……えーと、こんにちは」

「突然で驚かせてしまったね。私はユリア。あなたのお名前は?」

「え、私は……シャーリーンです」

「素敵な名前だね。かわいい」


 私の肩に腕を回し顔を固定され、耳元で囁かれて私はひっと悲鳴をあげる。


 そのとき、背後からハアというため息と共に、低い声が響いた。


「ユリア……。なにしてる」

「ああ麗しのお兄様、ごきげんよう。私がこの城のどこにいようが私の勝手だと思うけど?」

「勝手じゃねえ。また近衛が泣き言いってたぞ、急にいなくなるな」

「私についてこられない方を責めるべきだと思うけど」



 向こうから何人もの人を従えて歩いて来たオスカー様と、その横を涼しい顔で歩くルイスが視界にはいり、私は落ち着きを取り戻した。


 っていうかルイス、なんでそんな状況で平然としてられるの……。


 普段から人を従え慣れてるみたいな余裕さえ感じる。びっくりするほど鋼の心臓ね。


「ああルイス様、お会いできて嬉しいです。最近のお噂はかねがね……。相変わらずお美しく聡明ですね。我が兄とは違って」

「ありがとう。ユリアちゃんは以前見た時より一段ときれいになったね」

「おい、妹をたぶらかすな。ユリア、シャーリーンと何を話していた」

「なんだ、お兄様の友達だったの?」

「え? ま、まさか……お姫様、ですか?」


 話の流れからこの美少女がオスカー様の妹さん────つまり、グアラのお姫様だという結論にたどり着いて、さらに距離を置く。


 すると、にっこりと花がほころぶような笑みを浮かべて一層私に近づいてきたユリア様に、私はよくわからないままハハハ、と乾いた笑い声をあげた。


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