0から1へ 静と動
剣道は0から1に繋げる競技である。
静寂から一瞬で焦がれる1本それが剣道だと私は思う。
初めて竹刀を握ったのは5歳だった、親が剣道を習っており合宿についていった。
最初は端っこで座って見てるだけだったがみんながやっていやるのを見ると無性にやりたくなってしまっていた。それを見ていたのか手が空いた先生が相手をしてくれた。それから剣道を始めた。
小学生に上がると物珍しさにみんなが食い入るように剣道について聞いて来た
みんなから声をかけられるのはとても嬉しかっただけど友達が増えるとたくさん遊びたい反面、週3で行っていた剣道は行きたくなくなる。
そりゃあ小学生の身からしたらたくさん遊びたいし、
剣道なんて、臭い、熱い、重い、みたいに嫌な部分が詰まっているんだから嫌いになる。
中学生に上がって部活を決めなければいけなくなった。正直剣道部があったが入りたいとは思わない。
色々な部活を回ったが元々運動が好きじゃないこともあり、結局は剣道部に落ち着いた。
経験者ということもあり、他の新入部員とは違い最初から練習に参加した。中学が強豪高とかめっちゃ強い新入生とかではなく、ただただ経験者ということで参加していた。
目立つのも嫌いだし、どちらかといえばクソ弱い。
身長も高いわけでもない、体重は40kgとかいうクソ軽い体重、すぐ吹っ飛ばされる、覇気もない、ただなよなよしてるやつ周りからの印象はそんな感じだっただろう。
最初は練習に参加してても何も思わなかった。先輩も4人しかいなかったのでレギュラーという扱いで試合に出ることもできただけど自分の心には常に嫌な気持ちが付き纏った。
新入生は新入生用のメニューでやっていたのでみんな楽しそうにしているの横めで見ていると自分もそっちに参加したい、別に本気でやっている訳でもないし、なんでこっちに自分だけいるのかもわからないそう思っていた。今思えば周りは竹刀も学校の備品自分の防具も持っていない、当然のことではあるが中学生の俺にはもっとみんなと話したり和気藹々とする時間が欲しかった。
少したって部活をサボり始めた。
特に友達と遊ぶでもなく、家に帰ってゲームをする日々を過ごした。
先輩にいじめられたとかではなく、正直プレッシャーに耐えられなかった。弱いのに少し習ってただけでみんなに期待されてしまう。それが嫌で嫌で仕方がなかった。校内で先輩に見つかると話しかけられそうになってすぐに逃げた。三ヶ月がすぎた頃転校生がやって来た。その子は剣道を小学生からやっていたらしく、剣道部に入ることになった。武道場まで案内をして欲しいと先生から言われ、行きたくもない武道場に久々に顔をだした。
みんなから何を言うでもなくそそくさと武道場を後にした。
少しすると先輩から部活に来て欲しいと言われた。
最初は断っていたが何回か来たので渋々顔を出した。
そうするとみんなが近寄って来て現状について説明してくれた。転校してきた子が問題だったらしい。
先輩にタメ口使うは、俺に勝てないやつは文句言うなみたいな事を言っていたらしい。
だから同級生のお前が一回ボコボコにして欲しいと言われた。そんなことできるわけないのにと心の中では思ったが渋々承諾した。
久しぶりにやる剣道は体が動かない、発声も悪い、竹刀はいつもよりも重く感じる。そんな感じがした。
アップの時点で疲れ切ってた。
例のやつとの試合が始まった。
3分という短い試合時間、自分と相手が常に伺っている。なんとかして相手から一本を先に取った。このまま逃げれば勝てる。後何分、すぐ終われ、きつい心の中で渦巻く。
鍔迫り合いになった時相手が足を踏んできた。
わざとかそうじゃないのかわからない。
だけど怒るでもなく自分に静寂が訪れた、きっと周りにもそれはつたわっていたであろう、そこから綺麗な面抜き胴が入り勝利した。
自分が思いこがれた剣を初めて打てた気がした。
部活の後顧問にはサボっていたことをこっぴどく怒られた。だけど「お前がみんなを引っ張っていくんだろ」そう言われてとても嬉しかった。
剣道とはまっすぐな心、相手との真剣勝負がかっこいい、だけど相手の意表をつく技はもっとかっこいい私はそう思う。