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A Turning Point

 僕が全てを失なった日の前日、日本の東京ではオリンピックが行なわれていた。

 まだ最終試験の前日なのに、僕は緊張で心拍数が上がったままだった。

 その時は休憩時間で、たまたま、食堂 兼 休憩室のTVを観ていた。

 試験に受かったら、僕がやる事になる種目の中継だった。

 しかし……。

『現地からの中継が、突然、途絶えました』

 しばらくしてから、構内放送。

『候補生の試験および訓練は一時中断。オリンピック開催中の東京で何らかの異常事態が発生した模様。我々の計画に重大な影響が及ぶ可能性が有る為、続報を待て』

 突然、降って湧いた「何もしなくていい1日」。

 でも……。

 判らない。

「候補生は全員待機しろ」

 教官(センセイ)達も研究員達も、それ以外の指示を何1つ出してくれない。

 物心ついてから始めての……ルーチン・ワークでもなければ……マトモな指示を出してくれる人も居ない異常事態。

 異常事態なのに、何の混乱もなかった。

 ただ、それが……何か不気味な……今にして思い返せば、自分も含めて生きている人間が誰も居ないから、混乱も何を起き得ないような……そんな嫌な感じが続いた。

 そして、事態が判ったのは……夕方ごろだった。

 日本で最も高い山「富士山」が歴史的な大噴火をして、オリンピックが開催中だった東京とその周辺地域は壊滅。

 主要なオリンピック参加選手やIOCの役員は……死亡か行方不明。

 そして……。

 余りに多くの経験をしてしまった今となっては……何故、当時の僕が、教官(センセイ)達や研究員達の反応を「異常」だと認識出来なかったのか……判らない。

 ましてや……。

 ともかく、静かだった施設内に、喧騒が訪ずれた。

 施設内はまるで死者の国から徐々に生者の国へと変貌していった。

 僕達、「ピュア・ブラッド・ヒューマン」を製造し育成している施設、通称「レーベンスボルン」は……いつしか歓声に包まれていた。

 僕の知る限り、日本出身の教官(センセイ)や研究員さえも……数百万の死者を悼もうとする者は誰1人居なかった。

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