きれいな夢の中
ギリシャ神話を大まかなモチーフとしています。
色々と拙い部分がありますが、暖かい目で読んでいただけますと幸いです。
目が覚めると、私は物語のプリンセスのような、豪華なお部屋にいた。
目だけで辺りを見渡すと私は天蓋付きの大きなベッドで寝ていて、窓の無いバルコニーからは心地よい風が吹いていた。
(あー…夢かな…)
私にしては珍しく、夢の中の出来事を"ちゃんと"夢だと自覚したことに胸を撫で下ろした。これで目覚めた時にガッカリしなくて済む。
もう一度目を閉じたらこの夢から覚めてしまう気がして嫌だった私は、ゆっくりと体を起こした。
(なんか、夢にしては感覚がしっかりしてる…)
シーツやクッションの感触、頬を撫でていく優しい風の温かさがまるで現実のように感じる。いつもとは違う感覚に違和感を覚えた。
…でも、あんまり居心地良く感じてしまうと目が覚めた時のメンタルが怖い。
私は手足を動かすことに集中し、ベッドから降りた。
バルコニーから外を見ると、綺麗な光が漏れだす高い山。日の出か日の入かは見ただけでは分からない。
「…綺麗な夢だな。ずっとここにいたいな。」
「ずっとどころか、貴方が望むなら永遠に居られるわよ。」
「え…?!」
突然後ろから女性の声が聞こえて、振り返る。
部屋の入口らしき場所から人影が私に向かって歩いて来たが、恐怖や戸惑いを感じる以前に、そろそろここで目が覚めそうだな…と落胆し俯いた。
「いい目覚めだったかしら。」
「えっ…」
「貴方、"え"しか言えないの?」
まさかの未だ目が覚めないという展開にびっくりして、俯いていた顔を上げた。
姿を現したのは飴色の髪に青緑色の瞳の女の人。私を訝しげに見つめている。絵画の中の女神さまような、白い服を纏っている。
(すごく…きれいな人……だけど、なんだろう、人とは思えないような、神聖な雰囲気がある…)
「ぷっ、あなた思ってること全部顔に出るのね!」
「え?!出てました?!すみません!」
「流石は元人間ってとこ?でも…どこまでその純粋さを保てるかしらね。」
(…ん?)
「あの!質問してもよろしいでしょうか?」
「え、詳しい話は後でしたいんだけど…まあ、一つなら答えてあげる。」
「あ、ありがとうございます。その、ここは私の夢の中ですよね?」
「違うわよ。ここは神と神に仕える天使が住む山里。誰の夢でもないわ。」
「えっ、は?!か、神々…?!でも私は神さまじゃ、」
「神よ。あなたはもう人間ではないわ。…ってか一つって言ったのに二つも答えちゃったじゃない。」
新入り研修って思ったよりめんどくさいわね…と、横で呟いている声が聞こえるが、私はそれどころでは無かった。