人型戦闘機 最終話 制圧
最終話です。ここまでお読みいただきありがとうございます。
敵移動要塞は前に出てきたと思ったら戦闘機隊を収容して惑星アルガレータの軌道に帰って行く。
「なんだ?逃げるのか」
「戦闘機を収容している状態では追えません」
「仕方ないな」
翌日、遂に惑星アルガレータまで50万キロと迫った銀河連合軍。
しきりに降伏勧告を出しているが降伏しようという反応は無い。それどころか「神罰を下す」と強がっている。
アルガレータの首飾り破壊命令が大型レールガン搭載艦に出た。
この距離になると軌道上の大型目標は照準しやすい。次々と破壊されていく。
残りの移動要塞が3基まで減ったところで、圧力を掛けるべく艦隊を前進させた。
「惑星状に高エネルギー反応。極大!」
「全艦に命令。レーザー拡散ガス放出急げ」
レーザーの照準を確定する色つきレーザーという前触れは無かった。高エネルギー反応が観測されてから1分後。
艦隊の2割が消えた。損傷艦は多数出ている。
「トンブリ応答無し。クミポン司令長官生死不明」
「タケミカヅチ応答無し。山口司令官生死不明」
「ロドネー応答無し。フィリップス司令官生死不明」
「相模大破、艦内ガス拡散中」
「サラトガ大破、爆発中」
「雲呼中破。楊司令官重傷」
大損害だった。
万久里も損害を受けた。
「損害報告急げ」
「前面装甲3層まで破壊」
「レールガン砲口扉変形、開きません」
「現時点で戦死86名。意識不明120名、骨折258名、裂傷1347名他重軽傷者多数」
「発射地点解析急げ」
「おおよその発射地点判明」
「レールガン砲口扉、なんとしても開けろ。爆破しても良い」
「発射地点温度。急速に低下中。冷却しているものと思われます」
「2番レールガン発射可能」
「2番レールガン目標発射地点付近。精密照準はいらん。質量が仕事をする」
「2番レールガン発射準備良し」
「撃」
「・・ぅ、艦長。艦は万久里は。私はどうした」
「指令。気絶されていました。状態は頭部を打って出血が見られます。止血剤を噴射しただけですから安静にお願いします」
「少し痛いが、大丈夫だ」
「艦は前面装甲が3枚破壊されました。レールガン砲口扉が損傷。現在1基発射可能。反撃をしています」
医務班がやって来て南部司令を担架に乗せた。
「理解できた気がする。艦長、後は頼む」
「お任せください」
アルガレータから発射された超大型レーザーは艦隊の2割を吹き飛ばし、同じだけの艦に損傷を与えた。
命令系統が乱れた銀河連合軍は各自で反撃を行った。各艦の判断でレールガンを撃ち込んだ。アルガレータの大地に。
「3番4番レールガン発射可能、1番は30分で発射可能の見込み」
「超大型レーザー破壊した模様」
「今は惑星の反対側にいる移動要塞が出てくるぞ。もう地上はいい。移動要塞に備える」
地表は酷いことになっていた。超大型レーザー発射地点は穿り返され激しいスパークが飛んでいる。レーザー装置が破壊され逃げ場の無い電力が放電をしているのだろう。
他の地点でも軍事基地と大聖堂や大きな教会が目標になった。直径数百メートルのクレーターが多数出来ている。
「飛行長。戦闘機隊の整備は済んでいるか」
「済んでおります」
「また戦闘機が出てくるだろう。待機せよと」
「了解です」
「レールガンが残弾少なしとな。砲術」
「2番14発、3番4番17発、1番32発です」
「新型の移動要塞1基がせいぜいだな」
「インドラ級を頼りにします。スサノオ級は2隻になりましたし」
「残りはスサノオとミチザネか」
「イカヅチは大破です」
「タケミカヅチとイカヅチは正面装甲が同じだから耐えられると思ったんだがな」
「姿勢制御が間に合わなかったようです」
「斜めから受けたか」
「インドラ級も同じようです」
「後方の空母群がやられなかっただけ良しとしよう」
移動要塞が惑星の陰から出てきた。戦艦など多数の他、戦闘機多数を前面に押し出してきた。この期に及んで戦闘を継続するようだ。自分が前面に出ようとしないところがなんとも言えない。
「移動要塞はあの3基で終わりだな」
「そうですが、3基とも新型だと難儀します」
「ブリテン艦隊インドラ級撃ち始めました」
「タイ艦隊インドラ級撃ち始めました」
「・・・
「本艦撃ち方始め。各砲残弾5発で撃ち方待て。惑星重力干渉に注意」
「敵戦闘機接近中。総数6万前後。日本連邦軍前面にはおよそ2万」
「司令長官代行リベラ中将からです「全力を持って迎撃すべし」」
「ここが最後と見ているのか」
「普通なら最後でしょう。地表がアレでは。また内部で反乱が起きてくれませんかね」
「無いな。やる気満々だぞ」
「空母戦隊より。戦闘機隊1万1654機発艦完了」
「飛行長、本艦はどうか」
「出撃準備完了しております」
「空母戦隊戦闘機隊に合流させる。出撃せよ」
西中佐はボロボロで帰ってきた機体の整備がようやく完了したところで出撃となった。両足と片手を失い胴体だけでしぶとく生き残った。
「小村整備班長。試運転も出来ないな」
「中佐なら飛びながら微調整と修正が出来るでしょ」
「なかなか厳しいことを言ってくれる」
「両足と右腕が新品でクセも分かりませんから、お気を付けて」
「ああ、行ってくる」
「戦闘機隊発艦始め」
敵戦力を壊滅に追い込んだ翌々日。降伏勧告を受け入れないアルガレータ法国に、銀河連合軍は遂に地上制圧を決意。
「人使いが荒いな」
「西中佐。全機バリュート装着完了」
「総員搭乗せよ」
「我々の任務は、陸戦隊が安全に降下できるよう対空砲火と地上戦力の破壊だ。地上戦は不慣れだと思うが、連携を取り単独で突出しないように。敵航空機はVSFが対応する。無理に空中戦をやるな。では出撃する」
低軌道から次々と惑星に降下していく。日本連邦軍のVSFはバリュート無しで降下していく。他のVSFはバリュート降下だ。
圧縮断熱で高熱のバリュートが赤みを失い高温だったバリュートや機体が冷却され始めると生き残っていた対空ミサイルが次々と発射される。日本連邦軍戦闘機隊のVSFが迎撃するが数が多い。バリュートに命中してバリュートが潰される。バランスを崩して機体に大きなダメージを負う機体もある。
VSFは大気圏内でも平気だからバリュートを投棄して即座に飛行に入る。MSFは自由に飛べないが、推力だけなら機体重量を上回るので地上に墜落することも無い。同様にバリュートを投棄した。
大気圏内戦闘機として活動を始めたVSFと地上に降りて歩き始めるMSF。
制中権を確保し制空権も抑えた銀河連合軍は陸戦隊の降下を開始した。
2ヶ月後、組織的な抵抗は排除された。
その1ヶ月後、アルガレータ法国は降伏した。
ここで完結です。いつの日にか、後日談を上げるかもしれません。
グランドキャノン撃たれてしまいました。我らはゼントラーディだったよう。
ありがとうございました。




