人型戦闘機 強襲
アルガレータ星系強襲部隊は最後の補給を終え、アルガレータ星系外縁へとワープした。
天頂方向へのワープアウトも検討されたが、確保した情報によると厄介なことに縦に軌道をとる惑星が有り天頂方向の重力場が不安定となっていたため、星系外縁からとなった。
アルガレータ星系は外縁部の惑星軌道が大きく、ワープアウトはかなり外になった。
「ここから、3週間か。遠いな」
「奴らの移動要塞なら3ヶ月近く掛かる。早いと思うぞ」
「ワープアウトの距離は質量が大きいほど重力場の影響を受けるからな」
「この艦隊が遠い位置でワープアウトしたのはこの艦のせいか」
「これでも奴らのワープ装置よりも性能はいいし、万久里やインドラ級なら通常の戦艦と移動速度は同じだ」
不思議なことに抵抗は無く、惑星アルガレータまで戦闘らしい戦闘は無かった。偵察に来た奴らを追い払った程度だ。
強襲部隊は惑星アルガレータまで数光分となったところで強行偵察を行った。
一番足の速い駆逐艦で行ったのだが
「なんだ、あれ」
「アルガレータを取り巻いているのか」
「あんなに固めるくらいなら、最初から戦争などしなければいいのに」
惑星アルガレータを守るように強固な守備陣が置かれている。
通常艦隊が20個艦隊から30個艦隊。さらに移動要塞が20基。移動要塞はアルガレータの衛星軌道にいる。
さらに通信がやかましい。星系に入ってからずっと
『ここはアルガレータ神域である。直ちに立ち去れ。さもなくば神罰が下るであろう』
と言う戯言を通信で繰り返し送ってきている。
こちらからは
「直ちに戦闘を中止し、降伏せよ」
これしか送っていない。
強襲艦隊総旗艦トンブリ(改インドラ級)に座乗するクミポン司令長官と通信回線で会議が行われている。
出席者は
銀河連合
クミポン強襲艦隊司令長官 銀河連合軍大将
日本連邦
山口司令官 中将
ブリテン
ビュコック司令官 大将
チンタオ
楊司令官 中将
ロッキーユニオン
スプールアンス司令官 中将
を始めとする派遣艦隊司令官達。
「さてどうするか」
『クミポン司令長官。ここは一気に押し込みましょう』
「そうは言うが、山口司令官。アレは苦労しそうだぞ」
『万久里で移動要塞を半分にします』
『半分だと?出来るのか山口司令官』
『出来ますな。ビュコック司令官。万久里の南部司令より「5光秒先の衛星軌道上に有る移動要塞なら命中率5割は可能」と回答がありました』
『それなら他のインドラ級まで含めれば全部いけるのか』
『そう考えてもいいと思います』
「少し待て」
トンブリ艦長達と相談しているのだろう。
「待たせた。インドラ級だと少し命中率は落ちるが可能だそうだ」
『ならば、やりましょう』
「やるが、万久里とインドラ級が5光秒まで接近する前に敵が阻止に動くだろう」
『艦隊戦ですな。この規模の艦隊戦は前例がありません。戦史に残ります』
「君は楊司令官か。戦史の編纂をするには生き残らなくてはな」
『私は自慢する訳ではありませんが、負けないことで有名ですよ』
『「不敗の楊」か。頼らせてもらおう』
『スプールアンス司令官。私を楯にする気か』
『楯になどしないよ。ちょっと横で戦わせてもらうだけだ』
レールガン発射予定距離は5光秒とされた。艦隊は邪魔をしに来る奴らの排除が最優先となる。
惑星アルガレータまで8光秒となったところで、艦隊戦が開始された。まず駆逐艦がやって来た。巡洋艦や戦艦、空母は後方にいる。いつものアルガレータ法国の戦闘法だ。どうも駆逐艦や戦闘機に乗っているのが隷属化した世界から徴発した人間がほとんどで失っても惜しくないのだとか。
こちらもやられる訳にはいかないので、戦艦と巡洋艦を前面に出し容赦なく削っていく。
損害が駆逐艦500隻、巡洋艦30隻、戦艦6隻となった頃、距離が6光秒となった。敵駆逐艦は2000隻ほど減っている。
ようやく敵主力艦隊が出てきた。
双方とも4000隻近い艦隊がぶつかる大混戦であった。
「山口司令官。万久里の南部です」
『南部司令か。どうした』
「試射をしたい」
『試射?レールガンのだな』
「試射をすればレールガン搭載艦がいかに危険か認識されるでしょう」
『まあ、そうだな。インドラ級もか』
「大型レールガン搭載艦全てです」
『敵から脅威と見なされて、群がってくるぞ』
「それが目的です」
『目標にされるぞ。いいのか』
「ちょっとやそこらの攻撃でやられはしません」
『そうか。囮になってくれるなら、戦線が整理できるかもしれん』
「司令長官に図ってください」
『そうしよう。感謝する』
各艦で
「レールガン発射用意」
の命令が出された。
5.5光秒となったところで、発射が始まる。各砲10発と決められている。万久里40発、スサノオ級4隻160発、インドラ級40隻800発。2つの異なる弾体1000発が移動要塞目指して驀進する。スサノオ級4隻はインドラ級と同じレールガンを4基搭載している。
移動要塞3基に命中弾があった。アルガレータには10発が落ちたようだ。レールガンの落ちたところは阿鼻叫喚だろう。大気圏突入で大規模な衝撃波が発生し、地表に落ちれば半径10キロ以上が薙ぎ倒され、山が崩れたり地震の誘発さえ有るかもしれない。海上や湖に落ちれば水蒸気爆発や津波も発生するだろう。
非常に危険な存在と認識され敵艦隊がレールガン搭載艦目指して寄ってくる。
次回更新 3月18日 05:00
次回「発進」
人型戦闘機発進しまーす。
60トンの超合金が毎秒400キロで大気圏に突入するとどれだけの衝撃波が発生するのでしょうか。地表に落ちたのは10発ですが、同じくらいの数は大気圏に弾かれたと思います。こちらも衝撃波が発生しますね。
万久里の弾体だともっと凄いことになるでしょうね。地殻に影響の出るレベル?
リニューアルして使いにくいのですが、編集画面は前書きと後書きが投稿予約する前に同時で書けるのでこちらは良いと思います。
慣れなければいけないのでしょう。




