人型戦闘機 解放
銀河連合軍はアルガレータ法国の領域に進軍した。
最初、重点的に行ったのは隷属化された世界の解放だった。投降した捕虜と艦艇から星系図や航路図を入手しており進撃路を決めるのは簡単だった。
各地でアルガレータ法国軍を打ち破り、隷属された世界を解放していく。勿論、占領はしない。治安は自分たちで守れるので自分たちでやってもらう。物資も自立してやっていけるので支援はしない。一部医療品の支援をしただけだ。
多くはアルガレータ法国から解放されて感謝されたが、一部の星では完全に服従していたりアルガレータ神教に染まっていたりして問題もある。そういった星は基本放置する。
快調に進軍できているのは、前の戦いでアルガレータ法国が無理をして戦力を作り出しその戦力の8割が消えたせいらしい。4年程度では戦力が回復できなかったようで各地の戦力が予想を下回っていた。
各地で地上制圧用強襲上陸艦からシャトルが降下し、シャトルから降りたGM3や地上戦闘車両で地上のアルガレータ法国戦力を削っていく。地上にいるのは2戦級以下の植民地管理軍だったので、GM3やVGF-3はおろか地上戦闘車両に対抗できる武力は少ない。ほとんど損害を出さずに地上を制圧していく。VGF-3の衛星軌道からバリュートで大気圏突入出来る性能は、急襲に役立った。
万久里を中心とする深部強襲部隊は、アルガレータ法国首都星系である惑星アルガレータを急襲すべく警戒体制の整っている宙域を大きく迂回して航行している。計画航路長は往復8000光年にも及ぶ。
作戦名は「長征」
今は恒星間の何も無い宙域にワープアウトして戦艦・巡洋艦・駆逐艦に物資を補給している。万久里の広大な内部は休養のために活用される。ドック機能もフルに稼働している。今回は艦外に強襲型オプションの超弩級宇宙戦艦を収容できるドック4基を接続していた。
万久里以外にも、スサノオ級4隻とインドラ級40隻が同行している。他には超弩級戦艦200隻、戦艦300隻、空母200隻、巡洋艦600隻、駆逐艦4000隻、高速補給艦2000隻も同行していた。巡洋艦と駆逐艦は大型艦ばかりである。この内現在までに高速補給艦400隻に護衛の巡洋艦10隻と駆逐艦100隻が離脱。帰路に就いている。
補給艦の数が多いのは、駆逐艦と巡洋艦の航続力と物資搭載量が小さいから頻繁に補給をする必要があったからだ。
航続力は巡洋艦で1200光年前後、駆逐艦で800光年前後だ。戦艦だと2000光年前後が多い。万久里の50万光年以上は補給艦兼任であってもおかしい。
万久里はあらゆる隙間に物資を詰め込み補給艦の補助もしている。元々艦隊補給艦を兼任するという性格を持っている。勿論艦隊各艦も同様だが、詰め込める場所の容積が違いすぎた。出発時点では7基のドックも補給物資で一杯だった。艦内ドック1基は緊急用として開けてある。
外接ドック1基に高速輸送船8隻分の物資が収まる。外接ドックは船倉としての機能も持たせた有るので割と扱いやすい。船内ドックはドック機能優先で船倉としての機能性は低い。それでも外接ドックよりも大容積なので同じ程度収納している。
長期航海で問題となるのはいつの世でも、水と食料。
食料は、冷蔵・冷凍食品とフリーズドライや缶詰、レトルト食品などの保存食が基本だが、少しでも食生活を改善しようと艦内で水耕栽培をして野菜を育てている。
水なのだが、現代技術で科学的物理的に浄化精製しても下水を基にした循環水を飲みたくは無い。物的には何の問題が無くても、精神的に嫌なのだ。大昔の宇宙船が循環水を飲用水としても使っていた頃に比べれば、贅沢になったものだ。
万久里の水タンクは巨大なので、艦隊の飲用水タンクとして扱われていた。勿論高速補給艦の中には飲用水だけを積んでいる艦も有る。
「ようやく広くなったな」
「そうですね。今までは補給物資でキチキチでしたから」
そう言っているのは、西中佐と江間少佐だ。人型戦闘機を格納しているドックにも補給物資は山と積まれていた。
今補給のためにいる宙域は、アルガレータ法国領域内に入っている。一番手薄なところの恒星間宙域だ。
あと1回補給をすれば、万久里の外接ドックは空になる。艦内ドックも2基は空になる。
ここまでに合計で高速補給艦1000隻と護衛の巡洋艦40隻に駆逐艦400隻が分離帰投している。
そして艦隊はアルガレータ星系強襲前の最終補給地点にワープした。
次回更新 3月16日 05:00
次回「強襲」
アルガレータ星系強襲です。
いかに浄化されて安全安心と言われても循環水は飲みたくないです。




