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人型戦闘機発進  作者: 銀河乞食分隊
人型戦闘機
55/62

人型戦闘機 殲滅

 ジブラルタル星系に出現した敵艦隊は依然として移動要塞の速度に合わせていた。防衛する側のブリテン艦隊はじりじりするばかりだった。

 あと3週間で星系コロニーの一部が移動要塞のレーザー射程に入る。その前に何としても阻止したいブリテン艦隊から攻撃が開始されるだろう。戦力に劣っていてもだ。

 そこにやってきたのがブリテン・ニューカッスル星系からの応援だった。標準編成1個艦隊でも有り難い。

 あと2週間。1週間後には攻撃を開始する予定だ。戦力の上積みを願うが難しいだろう。

 万久里艦隊がシンガポール星系で補給と整備を行っているのは知っていた。シンガポール星系から先行した通信衛星で急行することを知らされていたものの本当に間に合うかどうか疑心暗鬼だった。万久里の移動性能は極秘とされ、知る者は少なかった。


 天は彼らを見放してはいなかった。

 あと3日で艦隊攻撃を開始する予定だった時に、やってきたのが万久里艦隊。

 前回の侵攻を1隻で打ち破った万久里(万久里一党だけ目立った)の登場に現地は沸いた。



『サマービル司令。万久里司令南部准将です。通信で失礼する。そちらに行って直接ご挨拶したいのだが、時間が無い』

「ジブラルタル星系守備隊司令サマービル准将です。南部司令、時間が大切なのは分かっている。時間を優先して欲しい」

『ありがとう』

「では、早速だが敵の詳細戦力は今の時点で偵察できる限りはそちらに送っている。どうするね」

『そうですな。4基とも重装甲移動要塞だと厳しいと思われる』

「万久里でもか」

『必中を期すとどうしても相手の射程内に踏み込む必要があってね』

「装甲を削られたと聞くが、実際どれだけ耐えられそうかな」

『2発なら耐えられるが、同じ場所に3発は拙い』

「2基なら相手に出来そうですな」

『出来ると思います』

「どうしますかな。合同訓練をしたこともない艦隊同士での艦隊行動など出来ませんが」

『宙域を区切ってですね』

「それしか有りませんな」

『それで、頼みがあるのだが。よろしいか』

「ふむ、なんでしょうな」

『インドラ級と合同で公算射撃を行いたい』

「性能が違いますが」

『敵を弾道で包むのが目的です』

「包むとは」

『敵の軌道を絞り込みます。そこで集中射を浴びせます』

「都合良く行きますかな」

『そこはお互いの参謀達が頭を捻るでしょう』

「知恵熱でも出してもらいますか」



 参謀達に知恵熱まで出させた策は


1.フッド・ロドネー・ネルソンの3隻で敵移動要塞4基の手前に弾体をばらまき針路を限定させてしまう。

2.ある程度針路を限定できた時点で万久里のレールガンを撃つ。

3.レールガンの弾体は移動要塞と軌道交差後に自爆させる。

   効果は敵が慌てて判断を誤ればいい程度には期待している。

4.2基撃破するまで続ける。2基撃破後はフッド・ロドネー・ネルソンの3隻も含めて突撃する。

5.上記でレールガン攻撃中に阻止目的で近づいてくる敵艦隊は全力で阻止する。



 弾体をばらまくことになったのは、インドラ級のレールガンが命数600発ということが効いている。

 万久里のレールガンは命数200発であり、ここまでに1基辺り40発を発射。後のことも考えれば投射数は減らしたい。

 インドラ級は600発の内訓練で20発を撃っただけだ。200発くらいは余裕で撃てる。弾体は1基辺り700発と十分に積み上がっており、インドラ搭載数は1基200発だが補給艦を付属させることで弾切れを防ぐとなっている。

 銀河連合軍艦隊はさらに1個艦隊が間に合い敵8個艦隊相当対味方6個艦隊となっており、対抗可能と考えられた。



 初弾はフッドから発射された。距離約800万kmの大遠距離で。勿論単独では正確な照準など出来ない。多数の戦術衛星を護衛と共に送っている。

 敵移動要塞のレーザー砲は有効射程50万kmと解析されている。有効射程はコロニーを破壊できる距離としているので宇宙駆逐艦以上なら損傷は軽微だ。

 今の技術では拡散して威力が減衰し有効射程は有るが光速のレーザーと、空気抵抗が無いので事実上有効射程は無いが最大でも秒速1000kmのレールガンとの戦いだ。

 インドラ搭載レールガンの投射速度は毎秒400kmなので2万秒後に到達するが、敵の移動速度と軌道を考えると1万8000秒後に軌道が交差する。約5時間後である。距離が有るとどうしても時間が掛かる。


 この大遠距離で発射する事になったのは、弾体の改良が有ったからだ。

 弾体は軌道変更できるが、内包する炸薬量を減らし軌道変更能力を高めた。インドラ級レールガンなら10万キロで4キロの軌道変更が可能になった。

 戦術衛星で軌道を制御できるようにされ、監視中の戦術衛星が適宜軌道を変更することになった。


 万久里のレールガンは破壊力を依然として重視しているが、威力過大ということも有り投射速度を毎秒600kmまで低下させたモードも有る。そのモードなら同じ弾体で200メートルは軌道変更が出来る。


 フッドに続き、ロドネー・ネルソンと発射を続ける。様々な軌道要素で3時間にわたり各砲60発撃って休止。合計360発が宇宙空間を驀進する。しばらくは様子見だ。


 敵移動要塞は弾体を探知したのだろう。交差しない軌道を取る。だが後続の弾体も探知するに及んでとれる軌道の自由度が減る。

 移動要塞が軌道変更し終えた頃、第2弾が届いた。第2弾は、6時間後に発射開始した360発だ。


挿絵(By みてみん)


 さらに軌道を狭められた移動要塞4基に対して万久里が毎秒1000kmの40発を発射した。

 移動要塞4基は回避行動を取るが3基には命中しなかった。しかし1基に2発命中が確認された。1基は軌道がずれジブラルタル星系を避けるような軌道になった。

 さらに3基を囲うようにインドラ級3隻の砲撃が続く。

 行動の自由度を大幅に失った3基に対して万久里が再び40発を発射。

 今度は1基を行動不能にした。

 その時点でフッド・ロドネー・ネルソンの3隻は突撃を開始した。


 その頃、2回目のレールガン発射開始前だが、宇宙艦隊同士の交戦が始まっている。レールガン発射を阻止しようとするアルガレータ法国宇宙艦隊と銀河連合軍宇宙艦隊の戦いが。

 宇宙戦艦同士の戦いは数に勝るアルガレータ法国宇宙艦隊が有利に進めるが、近距離戦となったと時点で銀河連合宇宙軍が巻き返した。

 近距離戦の主役は駆逐艦と戦闘衛星や宇宙戦闘機で、ここでも数で圧倒してくるが銀河連合軍には切り札が有った。

 人型戦闘機GM3と宇宙戦闘機VGF-3がそれだ。

 GM3は3代目の人型戦闘機。G(銀河)M(人型)で1がMSF38。2がMSF43。それぞれサンプルとして20機銀河連合に送られた。それを基にした銀河連合独自開発の機体がGM3。MSF38やMSF43程の量は使っていないが魔法金属を使い、従来の人型戦闘機よりも小型で機動性能も良く、標準型として独自開発できない国やしない国に広く配備されている。改造型も多い。

 GF-3はGM3と同じようにVSF-1を参考に銀河連合独自開発した機体。VSF-2は日本連邦軍でVSF-1の簡易化量産型として配備されている。G(銀河)F(戦闘機)でVSFと違いを強調している。

 戦闘衛星もケンタウロスを参考に多機能化した戦闘衛星が配備されている。

 さすがに全数更新できるような機数は製造されていないので、3割程度にとどまっているがそれでも敵を圧倒している。

 ジブラルタル星系防衛の終わりは移動要4基を始末した万久里とフッド・ロドネー・ネルソンの4隻が艦隊戦に参加した時点で決まった。

 万久里とフッド・ロドネー・ネルソンの4隻の支援も有り、駆逐艦以下の戦いで圧倒されたアルガレータ法国宇宙艦隊は戦艦や巡洋艦を守る楯が無くなり、銀河連合軍駆逐艦に群がられ消耗していく。そこに耐えていた戦艦や巡洋艦が突撃を始めアルガレータ法国宇宙艦隊を押し込む。


 残存1個艦隊程度まで磨り減ったアルガレータ法国宇宙艦隊が逃げていく。残された艦は多くが自爆させられていた。


 ジブラルタル星系防衛は成功した。


次回更新 3月12日 05:00

次回「反撃」

守るばかりではなく、元から絶つ決意で。

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