人型戦闘機 戦いは数だ
再び侵攻してきたアルガレータ法国の奴らは数が多かった。
問題はあの移動要塞の数だ。200基近く確認される。付随する艦隊も超弩級宇宙戦艦2000隻、宇宙戦艦4000隻以上が確認された。巡洋艦は数倍だし駆逐艦クラスは数えるのも嫌になるくらいの数だ。
当然こちらも稼働全戦力を投入する。それくらいでないと戦線を支えられない。攻撃する方は場所を選べるが防御する方は重要性で投入戦力は変化こそすれ可能性のあるところを全てを守らねばならない。
広大な戦線では、守る方は敵の数倍の戦力がなければどこかが蹂躙されてしまう。
銀河連合軍統合参謀本部で驚いたのは、移動要塞の数だ。捕虜の情報からせいぜい10基から20基と見られていた。国力からしても同じ物を200基作ることが出来るのか。悩んだ。
幸いにして、大型レールガン搭載砲艦インドラ級の建造は順調でここまでに400隻近く建造できた。300隻が慣熟訓練を終え、侵攻が予想される前線重要64星系に各4隻配置済みだ。後方星系は1隻の応援用予備兵力だが重要度によって3隻配置の所もある。
移動要塞1基についてインドラ級3隻あれば撃破可能とされている。移動要塞の機動力は低い。予備戦力として後方に配置されているインドラ級の移動が間に合えば被害を減らせることが出来るだろうと。
当然ながら万久里も主戦力として参加する。現在でも万久里を上回る攻撃力と防御力をもつ存在は無い。
「万久里出航する」
秋田星系は重要防御地点となっている。万久里の他に日本連邦軍独自開発の1000メートル級レールガン搭載戦艦スサノオ級2隻が守る。他に通常編成2個艦隊が駐留する。
1基や2基の移動要塞なら対抗可能だ。
万久里は自由戦力として銀河連邦の要請で戦場を駆け巡ることとなった。
おかしかった。各部で移動要塞が簡単に撃破される。貫通するはずのないインドラ級のレールガンが貫通する。
自爆の危険を冒して内部に調査員を派遣した。リモートでは良く分からないことも人間が直に見ることで明らかになる。
結果は見た目だけの張りぼてだった。装甲は無いに等しく隔壁も少ないなど、ひたすら安く作ってあった。大型レーザー砲だけは等角度に配置した4基で射角を増やしてある。
移動要塞の半数以上を撃破した時点で前回同様の重装甲移動要塞は4基しか確認されていない。では残りの重装甲移動要塞はどこに現れるているのか。またはどこへ現れるのか。
移動する方法もいろいろだが、どこへ行くにも都合の良い場所というのが時々現れる。最短距離だけではない。そこを通らなくてもいいのだが補給や休養に都合の良い場所だとか。重要な産業地帯へ向かうのに地形的に鉄道や道路、さらには航路とかが集中する場所もある。
そんな場所が銀河連合にもある。
ブリテン領域ジブラルタル星系がそれだ。
「サマービル司令、ジブラルタル外縁警戒衛星より緊急通信です」
「なんだ」
「ジブラルタル外縁にアルガレータ法国移動要塞確認。4基です」
「何でこんな奥まで入ってこれる」
「わかりません」
「済まんな。ただの愚痴だ。補給物資と根性さえあれば事実上航続距離は無限だ。大量の補給物資を積んでいるのだろう。置き場所はありそうだし」
「緊急通信衛星発射します」
「よろしい。発射だ」
「移動要塞護衛部隊確認しました。陣容、超弩級宇宙戦艦66、宇宙戦艦84、宇宙空母50、宇宙巡洋艦330、宇宙駆逐艦4300」
「緊急通信衛星に送るデータに載せとけ」
「了解」
『サマービル司令。駐留艦隊司令キスリング大佐です。我々はどうしますか』
「キスリング大佐か。フッド・ロドネー・ネルソンのインドラ級3隻でやれるか」
『無理ですね。1隻はやれるでしょうが、そこまでです』
「駐留艦隊も数倍の相手では厳しいだろう」
『全滅してもよろしければ』
「それは無理だ。そんな命令は出せん」
『幸いなことに全艦移動要塞の速度に合わせているようですね。こちらの迎撃想定線まで2ヶ月ほどです』
「それまでに敵が速度を変えずにいてくれて、味方の救援が届くことを祈るだけだな」
『実に楽観的なお考えです』
「そうでも考えないとあの数だ。やってられんよ」
『全くです』
緊急通信衛星から発信された救援要請は、次々とリレーされた。だが、3個の星系には有効な戦力がいなかった。
ジブラルタル星系から4個目のニューカッスル星系と8個目のシンガポール星系にそれらは居た。有効な戦力だ。
4個目のニューカッスル星系からは星系防衛戦力の半分1個宇宙艦隊が抽出され救援に向かった。
8個目のシンガポール星系には、補給と整備に立ち寄っていた万久里艦隊が居た。
「南部司令。緊急通信です。ジブラルタル星系より「敵移動要塞4基と8個宇宙艦隊相当の敵勢力確認。至急救援を請う」以上。付属情報有りです」
「付属情報を出してくれ」
「大スクリーンでよろしいですか」
「かまわん」
「これは・とんでもないですな。司令」
「たまらんな艦長。だが、ジブラルタル星系は拙い」
「交通の要衝であり、周辺星系の中心地でもあります。それに、あそこを抜かれると[ ウォーレンツ共同体 ]までろくな戦力が無い」
「その通りだ。相互無干渉を決めているが、アルガレータ法国の奴らがあそこまで届けばこちらが侵攻したと見るかもしれない」
「全く困った奴らです」
「万久里艦隊司令栗田大佐より通信です」
「司令席で取る」
『通称万久里艦隊司令井上大佐です。本艦隊は34時間後に出航可能です』
「いや、井上大佐。通称はないだろう」
『南部司令。誰も第二十四艦隊などと呼んでくれません。万久里艦隊ですよ』
「目立って申し訳ない」
『いいんです。目立つのも仕事と思えば』
「わかった。艦長?」
「本艦は32時間後に出航可能です」
「では、艦隊は40時間後に出航する」
「『了解』」
40時間後、万久里艦隊はジブラルタル星系に向けて出航した。
次回更新 3月10日 05:00
次回「殲滅」
殲滅する、予定です。
アレクサンドリアの地名はエジプトが使っていますので。使いたかったけど。
銀河連合全体の経済規模に占める軍事比率は、GDP比2%くらいでしょうか。いろいろな分野で自動化が進み、食費や被服費や燃料他消耗品など地味に維持費として掛かる部分が安価で規模の割に安く済んでいます。




