人型戦闘機 戦闘
各編隊ごとに散開した戦闘機隊は戦闘衛星の長距離対空ミサイルを援護に敵機集団に突撃した。
敵味方とも激しいECM・ECCMの掛け合いで電波障害が激しい。レーダー画面は補正してもノイズだらけだ。通信機器もノイズだらけで聞こえないことがある。
出力で相手のECMをぶち破る事も、相手がほぼ同じ出力なので上手くいかない。高性能レーダーや高性能光学センサー他各種センサーを積み運用するには戦闘機も戦闘衛星も小型だった。
ミサイルの最終誘導はレーダーではECMのせいで不能。カメラ映像と赤外線センサー等の光学センサーを頼る。それさえも、デコイや赤外線フレアで誤魔化される。
したがってミサイルの命中率は低い。それでも、命中するので回避は必要になる。
「敵も撃ってきたな。各機当たるなよ」
『『『『了解』』』』
長距離対空ミサイルを最小限の損害抑えて躱した万久里戦闘機隊は次の行動に移る。
『中距離対空ミサイル。射程まで30秒』
戦術衛星からの無線が聞こえる。
「射程に入り次第中距離対空ミサイル。全弾発射」
『『『『了解』』』』
「発射」
味方機から合計300発を超える中距離対空ミサイルが発射される。
(当たるのは5%ってとこか。ん。敵も撃ってきたな)
「各機、回避自由。今度も当たるなよ」
『『『『了解』』』』
そして、それを見ている戦場の目が有った。おそらく相手にも居るだろう。
大きさ的には大型戦闘衛星で、高性能レーダーや高性能光学センサー他各種センサーを複数運用するために改造されている。武装は自衛手段の他は無い。
戦場で電子戦の主役となり味方に情報補助をする戦術衛星とは違う、戦場監視衛星だった。戦場を見張り戦闘状況を記録し戦訓を回収する。味方がやられても救助せずに、情報を持ち帰ってくることを最優先とされている。そのための逃げ足として強化された核融合ロケットも装備されている。
内部容積のほとんどを強化された機材に奪われ、乗員区画は小さい。通常なら10人乗り込めるが4人で一杯だ。通常は3人で運用。一人分は補助的なものだ。
回収する戦訓の一つにパイロットの肉体データがある。激しい電波障害で完全とはいえないが8割方は受信できている。
(一条君の心拍数が上がっている。70を超えた。呼吸数も多い。かなり緊張しているわね。それに引き換え穂刈少佐と満久二曹と羽里二曹は70まで上がっていない。呼吸数は減っている。故意になの?それとも無意識?凄いわね)
早瀬中尉は、人型戦闘機開発チームの監視という任務で乗り込んでいる。4人目として。
戦場は戦闘機と援護の戦闘衛星が主役になっている。そこへ新たな敵が増援で現れた。
『こちら、鵜の目だ。敵増援を探知。推定戦闘機80機。注意事項として速い。敵戦闘機の推定最高速度より20%は高速。各機注意されたい。戦場への接触は4分後。ミサイルは発射されていない』
「鵜の目。こちら穂刈。速度がミサイル同等なのか。針路はどうなっている。2点でいい」
『こちら鵜の目、了解。速度はミサイル同等。針路は、あ、いかん。分離した。40機ほどが監視衛星に向かう。接触推定時刻は4分20秒後。残りはこちらへ向かっている』
「穂刈了解。情報を謝す」
「穂刈だ。各機、聞いたな。速いぞ。注意しろ。ミサイルもたっぷり持っているに違いない」
『『『『了解』』』』
「満久二曹と羽里二曹は一条二曹を連れて監視衛星の援護に向かえ」
「加藤中尉と古代中尉も続け。指揮は加藤中尉が執れ」
「南部チーム、穂刈だ。監視衛星の援護に向かえ。速度で間に合うのが君らしかいない」
『『『『『了解』』』』』
『穂刈少佐。西大尉です。こちらはとどまる。目立つので群がられている。現状からの離脱は困難』
「西大尉。穂刈だ。余裕はありそうだな」
『墜とされないだけなら、何とでもなります。ただケンタウロスに集合する時間が足りない。間に合いそうにない」
「状況は了解した。そのまま増援を受け持ってくれ」
『了解。西、以上』
5機のVSFがストライクパックの核融合ロケットブースターと機体側核融合ロケットを全開にして監視衛星の援護に向かう。
『加藤中尉だ。各機推進剤残量が50%を切っている機体は無いと思うが、もし切っていたら加速は止めろ』
『加藤。古代。60%だが注意するよ』
『何でそんなに減ってるんだ』
『派手に動きすぎた』
『馬鹿』
「満久二曹と羽里二曹は減っていないよな」
『一条二曹は、減っているのか』
「加藤中尉。一条二曹の推進剤残量70%」
『下手くそね』
「悪かったよ」
この時点で加藤中尉と満久二曹と羽里二曹が残量80%。道中で減るし、監視衛星に速度を合わせればさらに減る。戦闘が長引くと古代中尉は確実に、一条二曹も回収班のお世話になるかも知れなかった。
そこに南部チームが追いついてくる。まだ火の鳥にはなっていない。魔力量という時間制限が有り使いどころが限られる。追いつけたのはケンタウロス改の機関性能が凄まじいからだ。だが推進剤の消費も凄まじいらしく、途中で加速を止め慣性で追いつく気らしい。
「速いな」
「移動開始します」
「それでも10%は奴らが速い。追いつかれるか。太田曹長、火器管制装置起動。迎撃は頼む」
「了解です。艇長」
「艇長。早瀬中尉。味方の救援が来ます」
「救援だと。追いつけるのか」
「敵よりさらに高速です」
「早瀬中尉。その救援の針路を出せ。水島少尉。針路をそいつらに合わせる。減速が少ない針路を設定」
「「了解、艇長」」
「艇長。早瀬中尉。伺いたいことがありますが今よろしいでしょうか」
「なんだ。少しなら良いぞ」
「ありがとうございます。なんで狙われるんですか。ほとんど無視されると聞きました」
「あー、それか。ほとんどの場合は新兵器新装備が出ていない。新型は情報を隠したいだろ」
「今回は有るということですか」
「そうなるな。超大型の戦闘衛星や移動ステーションは珍しくも無い。あのでかいのも大型の移動ステーションだろう。今回は何だ?」
「何でしょう」
「各自、現状維持のまま各センサーに異常が無いか調べろ。AIが無視するようなものだ。敵には見られたくない何かが有るのだろう」
何も見つけられないまま敵が近づいてきた。味方増援はその少し前に接触できる。
「各自。敵機の動きに注意。太田曹長は迎撃に専念せよ」
「太田、了解」
「間に合うか」
『加藤。どうする』
「古代。即席編隊が連携など取れないだろう」
『おう。そうだな』
「万久里チームは独自行動を取れ。指示有る時は別に言う」
『満久二曹です。良いのですか。加藤中尉』
「かわまんよ。君らふたりは絶対に連携を取れ。その方が活きる」
『ありがとうございます。一条二曹は、どうしますか』
「俺も勝手に動くから、古代と供に監視衛星の直掩だ」
『おい、加藤』
「古代は俺の動きについてこれないだろう。一条二曹も、ついて行けないはずだ。無理に編隊を組むと危ない。こういう事態だ。俺の指揮に従え」
『・了解だ』『了解です』
『南部チームです。加藤中尉。こちらはどうしますか』
「速度的にアレを使えないと苦しいだろ。君らも監視衛星の直掩だ。ただ、機会があればアレをやってもいい」
『良いのですか』
「南部司令は実戦で使われるのを見たいだろうな」
『機会があれば実行します』
「各機。あくまでも監視衛星の援護が最優先だ。忘れるな。では頼む」
『『『『了解』』』』
「満久二曹と羽里二曹。行くぞ。敵を遠距離で阻止する」
『『了解』』
VSFが3機、全開で敵に突っ込んでいく。
敵からミサイルが発射された。
次回更新 02月09日 05:00
次回「撃破」
敵を撃退するはず。
ストライクパックは胴体上下に装備されています。使えなくなったり損傷で危険になったりすれば投棄も可能です。そこそこお高い装備なのでビーコン付で後から回収出来れば回収します。回収班の出番です。




