ルシンドラ 会話
高度知性体と思われるドラゴンが基地にやって来た。
基地司令の岩村大佐は、挨拶をしただけで引っ込んでしまう。後はよろしくと。
「私が実質的責任者の大江です」
「先程も名乗ったが我はガイデキングという。紹介をしようかの」
「ありがとうございます。ではこちらからさせていただきましょう」
「穂刈です」
「真田です」
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「燕です」
「我はガイセダーンである」
「我はギグリニクス」
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「私がライディレーン」
「さて、名乗りも終えた。他にも大勢居るが気にしなくても良いだろう」
「そうですね」
「そこのそなた、穂刈といったかな」
「はい」
「そなたの部下か。先程子供達と遊んでもらったのは」
「満久と羽里ですね」
「感謝を。仲間内だけだとどうしても新しい要素が入らぬ。ここで新しい要素が入るのは良いことであった」
「それはこちらとしても感謝します。やはり他の存在と出会うのは良いことだと考えます」
「それにしても良い腕なのだな。いくら出来の良い飛行機械といえどもあそこまで動かせる者は少なかろう」
「飛行機械をご存じですか」
「うむ。昔は飛んでいたな」
ざわつく周辺。穂刈はそれを制して
「昔とは、どのくらいなのでしょう」
「興味があるかね」
「勿論です」
「では、こちらにも詳しい者がいる。ファルコローン。ここへ」
「ファルコローン、参りました」
「うむ。過去の飛行機械について教えて差し上げろ」
「分かりました。この者ですか。他に聞きたい者は?」
「ファルコローンさん。大勢居ます。記録はするので大丈夫ですが、数人呼んでも良いでしょうか」
「3人としよう。そなたを入れて3人だ」
「ありがとうございます。では」「真田、住友。こちらへ」
「さて、3人が穂刈と真田と住友だな。我はファルコローンだ。飛行機械について聞きたいことがあるな?」
「はい」
「答えられる範囲がある。それは分かるな」
「当然だと考えます」
「よろしい。では聞くが良いぞ」
「いつ、誰が。お願いします」
「真田だな。良いだろう。あれはこの地の5000年ほど前のことだ。そなたらの1年とは違うぞ」
「5000年ですか。我々にすれば6000年ほど前ですが、我々は文字を使い始めた文明が有った程度の頃です」
「1年の単位は大差ないのだな。君らからすれば遙か過去だな。疑問があるのだろ。良いぞ」
「はい。何故今は無いのでしょう」
「彼らはこの地にたどり着いた者達だ。君らと同じだな。500年ほど暮らしていたが去って行った。この地に降り立ったのは事故が原因であったか。物資の補給と休養を願われてな。許可した」
「彼らの痕跡は残っているのでしょうか」
「無い。彼らは綺麗に全部持って行った。持って行かなかった物は全て破壊して痕跡を残さないようにした。まあ見ていてそれほどまでにと思ったらしいが、痕跡を残してはいけないと言ったそうだ。我もまだ誕生前でな。古老から聞いた話だが」
「失礼します。住友です。記録は残っていないのでしょうか」
「あるぞ。石版に残してある。ただ見せる訳には行かない」
「理解しました。残念ではあります」
「我慢してもらう。いろいろ見せられない物は多いし、さすがに風化が進むので我らも頻繁には見ていない」
「次は私から質問します」
「穂刈だな。良いぞ」
「ありがとうございます。彼らはどんなやり方で飛んでいたのでしょうか」
「やり方か。そうだな。彼らから口止めされている部分もあるが、話せる部分もある。話せる部分だけだぞ」
「はい。お願いします」
「彼らは君らのような反動推進は使わなかった。慣性駆動を使っていた。重力制御は面倒なので慣性駆動の方が使いやすいと言っていたらしい」
「慣性駆動ですか。私たちはまだ可能だろうという段階で、理論構成等とても出来ません。凄い科学技術です」
「そうだな。君らの星から2000光年ほどの位置でそれでも苦労していると聞いたが、彼らは彼らの単位で300万光年向こうの星雲へ渡っている途中の事故でこの地に降り立ったのだよ。相当な違いがあるのは当然だろう」
「300万光年の星雲間移動ですか」
「君たちには可能か」
「現状不可能です」
「素直だな。出来ますと言うと思ったのだが」
「技術力も足りないですし、無理に実行しても長期航行に精神が持つとも思えません」
「そこまで認めるか。なかなか見所がある」
「彼らについては、誰かが質問していそうですので伺いません」
「うむ。では続けよう」
あちこちで質問が飛び交う集団が出来ている。
・・・
「彼らが作られた存在なのかか」
「はい。私達の研究では加工された痕跡が見えます」
「見つけたのか」
「と言うことは、やはり」
「うむ。もともとこの地の生物ではなく、彼らの連れてきていた生物だ。彼ら、獣人は極秘裏に製作された違法生物で有り数も多く取り扱いに困っていたと聞く。ひ弱だったのだが何故かこの地に適合してな。彼らはそれを見てこの地に置いていく判断をした。我らは協議を重ね受け入れたと記録にある」
「ゴブリンとオークなどの生物はどうなのでしょうか」
「あれらは元々居た。神神紛争の生き残りだな」
「は?神神紛争の生き残り…ですか」
「我も聞きかじっただけなのでな。事実と異なるかも知れぬが良いか」
「はい」
「20万年前から数万年間、神と神が争った。争ったと言ってもかなり上位の神と神だ。この地の神が対抗できるような存在ではない。いいかな」
「はい。質問よろしいでしょうか」
「フム。何だね」
「はい。稲州です。争われたのはこの地だけなのでしょうか。それとも広い範囲ででしょうか」
「おおよそ3000万光年の範囲と聞く」
「3000万光年ですか」
「質問させて欲しい。よろしいですか」
「君は」
「西です」
「言いたまえ」
「どういう争いだったのでしょうか」
「争点か」
「はい」
「方針の違いだな。積極的に神が介入すべしと言う勢力と滅ばない程度に介入すべしと言う勢力だ」
「勝ち負けはあったのでしょうか」
「有ると思うかね」
「思いません」
「そういうことだ。優勢だったのはあまり介入しないと言う勢力だ。そして、この星は引き分けた。積極的な介入と言うが神が面白半分に地上を弄ることを積極的と言うらしい。反対の勢力はほぼあるがままでという勢力だ。その時、面白半分で作ったのが魔物達だ」
「ふー・」
「あの…質問良いですか」
「江間だったね。かまわない」
「星を遊び場にしたい神々と観察にとどめる神々という事でしょうか」
「正解に近いと思うぞ」
「神々も人とさして変わり無しか」
「そういうことだ。西」
「あの、小林です。我々の星には魔物がいません。観察されているのでしょうか」
「ふむ。観察派が勝った星だね。神の手出しはないだろう。伝説では有っても」
「はい」
「ドラゴンという存在は、監視者であり調停者で有ると?」
「神に頼まれてな。人を食料としか思っていない奴らは、我とは違う存在だぞ。見た目は近いが種そのものが違う。そなたらの所にも見た目は近いが種そのものが違う存在はあるのだろう」
「鳥に見えるけれど鳥では無いとか、そっくりだけれど種が違うとか有った気がします」
「だから気にせず討伐して良いぞ」
「はぁ」
質問は続いた。
次回更新 01月28日 05:00
次回「進展」
魔法金属の高度な応用が可能に。




