ルシンドラ クエストは難しい
初心者向けでも難しいですよね。
一同はせっせと薬草を探して採取する。ひとり大きめのヨモギの葉が20枚、茎の長さ15センチ以上のゼンマイが10本。これがクエスト達成条件。
全部で1食分と少しくらいにしかならないが、成りたてや子供達が街のそばで採取するので1回のクエストがこの量に決められている。あまり多く採取するのもいけないという。本当に成りたて向けのクエストだ。
ヨモギの葉はいい。見つければフサフサとしている。大きい奴が一株有れば20枚くらい付いている。
ゼンマイもまた3本くらいまとめて生えている。
問題は見つからない。
「終わったわ」
イネスが早い。いつもの鈍臭さがない。
「さすが技官だな」
シュテンが褒める。
「これでも、植物観賞は好きなのよ」
「それでか」
「みんな苦労しているわ」
「まあ、見たこともない植物だ。子供の頃、草むらで遊ぶとかしていないだろ」
「そうね。コロニー育ちだとしないわね。先日からの訓練でやったくらいよ」
「コロニー育ちの他の連中も同じだろう」
「見分けが付かないのね。それはいいけれど、なんで洗っているの」
「これか?これはゼンマイの場合、魔法で出した水で洗うと品質の低下が少ないそうだ。そして、部隊で水を豊富に出せるのが俺だけ」
「お疲れ様です」
「おお、敬っとけ」
シュテンが足下の桶に水を流し込んでいる。不思議なものだとイネスは見ている。
全員が集めるた頃には日が暮れそうだった。
「お知らせがあります」
シュテンが変な言い方をする。おかしい。皆思う。
「都市の門は日没で閉まります。今から戻っても閉まっていて入れません」
「「「「「えー?」」」」」
「とっとと野営の準備だ。完全に日が落ちる前に完了しろ。電灯やケミカルライトの使用は不可だ」
「「「「「えー?」」」」」
「さっさとやれ!」
「「「「「「はっ」」」」」」
ぼそぼそと相談する一同。
明かり取りに火を付けるようだ。
「こんなこともあろうかと、市場で火付け道具を買っておいた。枯れ枝を拾ってくるように」
「ここ野っ原で枯れ枝なんて有りませんよ」
「は?」
「枯れ枝は有りません」
「わっはっっは。ユキムラ、まだここを理解していないな」
「クッ、まあ初心者なのは認める。ではどうやるのだ」
「少し離れているが林がある」
「魔物が出そうだな」
「いきなり誰かを行かせると思ったが」
「さすがにそれは無い」
「済まんかった。では、スコット。林まで誰かを連れて行きた焚き火の材料を取ってこい」
「了解」
スコットが三人ほど連れて林に向かった。スコットは本名鈴木次郎で、本業は狙撃手のスポッターをやっている。スポット≒スコットになった。
残りは野営の準備をする。
が、そこでユキムラがシュテンに文句を言う。
「何だよ、そのセンサーは」
「対人レーダーだ。中大型の生き物なら反応する」
「現地の材料だけで鳴子を設置するのではないのか」
「さすがに危険度は下げるぞ。あくまでもここに馴染むように活動しているだけだから。おもえらも魔法の入手が目的だろ」
「そうだが、現地の素材や技術で全部やらなくていいのか」
「そういう趣味なら、ここが解放されてからやってくれ。邪魔はしないぞ」
「そういう趣味は無いな。現地の人に見られなければいいのか」
「概ねそうだ。現代技術の灯火は目立つからな」
「じゃああのクッションは」
「素材がダメだと言ったろ」
「テントやターフの生地が最新なのだが」
「危険度を下げるためだ。防水防風防刃性能は高いし、保温力もなかなかだ。手触りも現地の生地に近いしな」
「見られると都合の悪い所だけ現地に合わせるのか」
「そういうことだ」
「ではエアクッションを展開しても良いな?」
「エアクッションだと。まだ持っているのか」
「こんなこともあろうかと軍用のものを持ってきている」
「ちっ。せっかっく地べたに直接寝るつらさを味合わせようと思ったのに」
「それなら大館の森でやった。だから寝袋兼用になる軍用エアクッションを持ってきた」
「準備のいいことで」
「こんなこともあろうかと常に備えるのだ」
「そうかよ」
その夜は枯れ枝が少なく煙いが生木を細く裂いて燃やした。飯の味は軍用レーションだった。
次回更新 01月04日 05:00
次回「クエスト納品」
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