ルシンドラ 驚愕の個人機密
ギルドカードですな。
そこには信じられない事が記載されていた。聞いてはいたが実際に目にすると驚愕する。
周りも皆同じだった。冒険者カードを裏返したり斜めから見たりしている。
アリアとコンスキーはそれをまたかという目で見ている。ほぼ全員同じ行動を取るのだろう。
クワトロは自分の冒険者カードを見る。
名前 クワトロ・ナリーニ (西史郎)
性別 男
年齢 28
職業 剣士 (日本連邦軍軍人)
レベル 1 (大尉27)
【賞罰 青】 (勲章2、感状3)
()内は自分で表示させないと見えない隠し情報だそうだ。【】の賞罰欄はギルド備え付けの機材か各地の門衛詰め所や領主屋敷にある機材でないと読めないそうだ。ギルドや治安関係者が注目するのは賞罰欄で青だけなら問題無し。青に黄色い線が入ると注意人物。幅にもよるという。黄色一色だと要注意人物。黄色に赤線が入ると明確な犯罪者。赤一色なら凶悪犯罪者。
このカードは住民証明にもなるので、持っている人間も多いと聞いた。全員の義務化をしようとすると反対勢力が多く案が流れるとも聞いた。どれだけ犯罪を犯しているのか。
「クワトロ。あなたはどうなの。驚いたわ。ここまで出てくるとか、驚きを通り越して笑ってしまうわ」
名前 イネス・マクレマン (稲州京香)
性別 女
年齢 28
職業 錬金術師 (日本連邦軍軍属)
レベル 1 (技官18)
【賞罰 青】 (博士号2)
「そうだな。本名まで分かってしまう。謎としか言いようが無い」
「神がもたらしたと聞くが、超先進的古代文明かもね」
「便利すぎるし、常時監視されているのかも知れない」
「監視は困るけれど、個人生活には影響ないって言うし。偽造も出来ないなど、究極の証明書よ。研究したいけど無理でしょうね」
「これで表だからな。裏もとんでもない」
西大尉の裏面はこうだ。裏面は本人が表示させないと見えない。
HP 32
MP 0
AGI 16
INT 35
MND 42
スキルLv 操縦5 指揮4 射撃4 格闘1 剣術2
魔法
加護 ******
加護が気になるがまあいいかと思って稲州と見せ合っている。
イネスはこうだ。
HP 13
MP 0
AGI 8
INT 56
MND 23
スキルLv 科学4 錬金1 文字1
魔法
加護 ******
「文字1とは」
「大学のゼミで指導教官がディスプレイを見てもいいが、文字から表れる個性というものも有る。紙に書いてなんぼだと文字の綺麗さにうるさくて。紙文書にするならプリンタで打ち出すのだからいいじゃないと言っても、手書き文字の練習をさせられたわ。これでも書道一級よ」
「凄いものだな。見掛けに「何ですか?」・何でもない」
「これ。シュテンがくれたわ」
一枚の紙を見せる。
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この世界の現時点での調査可能対象が持つ値。
項目 平均値 最小~最大
Lv 12 4~48
HP 36 最小10~最大349
MP 33 最小10~最大512
AGI 32 最小18~最大267
INT 12 最小6~最大128
MND 24 最小8~最大132
スキルLv 不明
加護 不明
*注意事項
調査対象は概ね冒険者。若年層や低い冒険者ランクの者が多い。性別は男が8割。調査させてくれる者は下級冒険者が多く金や道具を対価に協力してくれた。
調査に協力してくれたのは石級68名。鉄級94名。銅級56名。銀級8名。金級2名。それ以上のランクは見たことが無い。
暫定的な値であり、これが全てと思わないこと。
HPは体力と考える。おおよそその通りである。頑健さや筋力の強さに表れる。ムキムキマッチョでなくてもこの値が高い者がいるので、見た目で判断できない。
スキルや加護の影響と思われるが調査不足。
MPは魔力で調査不足。多ければ強い魔法を扱える。
AGIは俊敏性と思われる。スキルや加護の影響でとてつもない動きを見せる者がいるので地球の常識に捕らわれてはいけない。
INTは知力と思われる。受けた教育とその後の自己学習によって大差がある。数値が多ければ気力と合わせて精密な魔法操作が可能になるらしい。知力の最小値が低いのは、公的な義務教育すらも無いためと思われる。
MNDは気力と考える。最後の粘りや魔法発動時に精密な発動が可能になるらしい。
スキルLvは、個人の蓄積によるものが多いが意味不明のものも有る。切り札的なもので教えてくれる人間が少なく調査が進まない。
加護は、恐らく何か有利になるとかの現象があるらしいが、かなり大事らしく喋る者はいない。
値のばらつきが大きいのは、個人の能力にかなりの差があるためである。この差はレベル差に表れる。
調査が可能だったのは石級から金級冒険者までで、それ以上は数倍の上積みが有っても不思議では無い。
調査が可能だった人数は石級と鉄級が多く、全体調査が可能ならばさらに値は増えると思われる
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「MP0でこのカードが動くのが理解できない」
「それはおそらく我々でもカードを作動させることの出来る程度に表示されないMPが有るということでしょう」
「それなら納得できるが、不思議なものだ」
「ほんとにね」
その頃シュテンはギルドマスターとギルドマスター室で話していた。
「新しい技術を持ってくると言っていたな」
「まあな」
「早く見せろ」
「待て。その前に今回の納品だ」
「そうだった。どのくらいある。特に突撃一番を希望する人間にせっつかれている」
「慎めとでも言っておいてくれ」
「慎む人間がせっついてくると思うか」
「思わんね」
「そうだろう。だから早く出せ」
「分かった、今回はこれだけだ。根城にはまだあるから、また持ってくる」
「ほう、どれだけだ」
出された紙を見るギルドマスター。
(そう言えばこの紙は随分と品質も良いし助かっていると思う。今回はどれだけ納品してくれるのだ。ギルドの成績にも関わるからな。おお。多いじゃないか。有り難い)
紙には、
白紙 20万枚 1万枚は当ギルドへ寄贈
突撃一番 20万個 1万個は当ギルドへ寄贈
と書かれていた。
「いつもの倍だな。寄贈は有り難いがいいのか」
「今回連れてきた連中が迷惑を掛けると思うから、迷惑料も込みだ」
「それなら受け取っておく。それと、お前達の出自は聞いても理解できないが、狙われているぞ。気をつけろ」
「知っている。もう何組も返り討ちにした。王様にも反撃で返り討ちにする許可は取ってあるので気にするなよ。ハゲるぞ」
「馬鹿野郎。まだフサフサだ。それにしても王様から上位貴族に対して警告が出ていると聞いたが」
「しつこいのは隣の国とジャミトフ教会だよ。それに伯爵家と子爵家が単発でだな」
「伯爵家と子爵家は上位貴族が動かないのをおかしいと思わないのかな」
「欲に目が眩めばそんなものだろう」
「隣国とジャミトフ教会か。隣国はどっちだ」
「北と東だ」
「北はクリニガン帝国と東はフランセ共和国でいいのか」
「よく北と東だけで分かるな」
「その2国は強欲で知られているからな。見当は付く。ジャミトフ教会も強欲だからな」
「警戒は続けるよ。で、新しい技術だが」
「おお。砂糖と塩は凄く助かっている。今度は何だ」
「馬車の乗り心地を良くする技術だ」
「何?可能なのか」
「バネが有るだろ。馬車でも使える強いバネと信じられないくらい柔らかいクッションだ」
「すぐに、すぐに見せろ!」
「慌てるな。今回連れてきた連中の中に教えることが出来る者がいる。そいつらがここに慣れてからだ」
「早くしてくれよ」
「善処しよう」
その後も話をしてシュテンは皆の元へ戻った。
次回更新 12月24日 05:00
次回「個人情報ダダ漏れ」
各人の初期ステータスです。
冒険者と言いながらカードを出せない奴は犯罪者です。ただ小さい町や村には機材の無い所もあり、活動場所にされています。カード義務化反対勢力はそういうことです。




