ルシンドラ 冒険者ギルド
いよいよ登録か。
一行は目的地までケツを鍛えながら進んだ。休み休みなので、100キロに二日掛かった。
そして着いた。
「もう嫌。お家帰る」
「イネス。何言ってる。これからだぞ」
「ええ~?」
「お家帰るのは、魔法やらなんやら仕入れてからだ。命令だからな」
「夜明けが来ない…」
「大げさな」
「クワトロとイネス。夫婦漫才はそのくらいにしておけ。」
「断じて違う!」「いいのに」
一行の前にあるのは都市を囲う塀だった。
「「へえ~」」
「誰かアムロとヒカルの座布団持ってけ」
そんな周囲はお構いなしにイチャイチャしているのが
「ミリア。はいこれ」
「なに。これ」
ミリアが渡された紙には[ジーナスとミリアは夫婦であるように装うこと]と書かれれいた。
「シュテン隊長は判っているわね」
「そうだね。帰ったら式を挙げようか」
「いいの?」
「いつかはと思っていたんだ」
「ありがと」
「「「「ケッ!!」」」」
一行が乗った馬車3台は塀で守られた都市に入ろうとする列に並ぶ。
「あと何時間かかるんだ?」
「1時間くらいかな」
「えーと、アレだ。あっちの空いている門は使えないのか」
「あそこは貴族様とか緊急用の門だから使わないぞ」
「使わないということは使えるのか」
「使えるが目立ちたくない」
「分かった」
検問は何やら特別な符丁をかざして即行で抜けることが出来た。無事抜けた後でシュテンとユキムラが話している。
「検問は無事に抜けたが目立つのが嫌なはずなんだがな?」
「上級冒険者や領主に良い利益をもたたらしてくれる商人とか向けの割符が有る。俺たちは持っている」
「どっちで」
「冒険者と言いたい所だが、まだ中級の上と言った所で特別な割符は貰えない」
「ということは商人か」
「まあ、ずるだな。現代技術のお裾分けだ」
「商品を聞いてもいいか」
「かまわないぞ。コピー用紙と突撃一番だ」
「いいのか」
「どちらも捨てられても自然分解する。パッケージも含めてな」
「他には。有るのだろう」
「砂糖と塩の効率的な作り方だな」
「ここでは効率的に作れないのか」
「地球史で言えば近世から抜け出ようとしている頃だ。まだ無理だが問題無いとされたよ」
「その頃なら火器も有ったはずだが」
「火縄銃程度なら魔法の方が強力だし中型以上の魔物相手だと威力が足りない。試作はされたが役立たずで金食い虫だったらしい。音がでかすぎて魔物を呼び寄せてしまうのもマイナスで、コストパフォーマンスが悪くてお蔵入りだ」
「地球でも最初はそうだっただろ」
「地球には魔法が無かったからな。威力が有れば良かったんだ。魔法の方が使い出も有るし威力も有る。第一大量に装備するのにどのくらい金が掛かるか」
「日本の戦国時代が凄かった気がするな」
「兵器史ではあの時代の日本は変態扱いだよ。とにかく魔法という存在で科学技術の発達が遅れている。ただレポートにもしたが、文明が遅れている訳では無い」
「地球の近世レベルだと思わない方が良いと」
「文化レベルは高い。特にトイレ関係は変わらないぞ」
「地球だとその時代のトイレは考えたくも無いからな」
「ここは地球だと西暦2000年以降のトイレ先進国と変わらないな」
「使うまでは信じない」
「馬車という時点で信じられないのは分かるが、馬車も臭くないだろ」
「臭い?」
「馬は糞をたれる。歩きながらでもな。でも臭くなかっただろ」
「馬車は臭いものなのか」
「糞が臭いのだ。そこは魔法技術で臭わないようにしている」
「たいしたものだな」
「ボロ袋、まあウンコ溜めの袋だが魔道具だ」
「ボロ袋?」
「馬のケツにぶら下げて有る袋だよ」
「はあ~?」
「よし着いた。ここが冒険者ギルドだ」
「ここがか。いよいよだな」
「まあ待て。お前らはこっちだ」
そう言われてがっくりしたのが1名ほどいた。
「正面じゃ無いのか」
「人数も多いし年齢的に田舎から出てきた若者でもない。一般の受付で混乱が有るといけないので無理言って団体様扱いにして貰った」
「無理を聞いて貰えるくらいの実力は有るのか」
「冒険者としての実力では無理だな。コピー用紙と塩と砂糖だ。そのおかげである程度無理は聞いて貰える」
「混乱か」
「誰でも知らない奴は警戒するだろ。それがいい年こいた集団だ」
「分かるような気がする」
「じゃあこっちだ。ギルドマスターと受付が待っていてくれる」
若干1名、目が輝いた。
シュテンに案内されて入ったそこは、ギルドの横についている建物だった。
「待ってたぞ」
「時間前だと思うが」
「期待の新人と新技術だろ。早くもなる」
「分かった。先ずは登録からしてくれ」
「アリア、コンスキー。登録頼むぞ。俺はシュテンと話がある」
「「分かりました」」
ギルドマスターはシュテンを連れて出ていった。
「さあ皆さん。登録ですが、知らないのですよね」
アリアが言う。
「そうだな。俺たちも慣れている訳ではないが付いていてやるよ」
シュテンの部下、マークが言う。
「そりゃありがたい。早速始めるか」
「待って、コンスキー。説明しなければ」
「シュテン達から聞いていると思うが」
「それで「ギルド側から教えてくれると有り難い」も…」
「ではご説明します。えーと」
「フォッカーだ」
「フォッカーさんですね。ありがとうございます」
「では登録前にご注意等を一式説明します。冒険者ギルドは半官半民の国家間にまたがる組織です。所在国の影響は受けますが、所在国によって支配されることはありません。細かい部分は隠していないので調べると良いでしょう。ここでは説明しません。冒険者ギルドの仕事は多岐にわたりますが、主になるのは国や領主の依頼から個人の小さな依頼までを冒険者に仲介することです。よろしいですか。次に、この仲介で大事になる冒険者階級を説明します。一番上がオリハルコン級でギルドにも4名しかおりません。次にアダマンタイト級でこちらも20名しかおりません。ギルド最大戦力です。次がミスリル級。こちらは400名くらいいますので、見掛けることもあるでしょう。よろしいですか」
「あのー。シュテンはどのくらいなんでしょうか」
「シュテンですか?あの人は銀級でもうすぐ金級ですね。ただ・」
「俺が言うよ。シュテンとその一党は対人戦がものすごく強いな。盗賊や違法奴隷業者なんかはいい稼ぎになっている。ただ魔物退治は今一で、魔物退治さえきっちりやれば金級だぞ」
「「「「あ~、なるほど」」」」
「知ってるのか」
「何故強いかなら」
「聞かないぞ。冒険者の手の内を聞くなよ。忠告だ」
「「「「「「はっ」」」」」」
いい返事にちょっと腰が引けたコンスキー。やはりこいつらも軍人かと思う。
「では続けまして。その下に金級、銀級、銅級、鉄級、石級と有ります。皆さんは石級で登録して貰います」
(SABCDEFじゃあないんだ)
「申し訳ない。一番多いのはどの級なんだろうか」
「一番多いのは鉄と石ですね。皆さん小遣い稼ぎ程度の仕事をするために登録している人も多いので」
「ではギルドだけの仕事で生活しているのは?」
「純粋に冒険者だけですと銅級ですね。日々の暮らしに困りません」
「ありがとう」
「どういたしまして」
そうして説明を受け、登録する。
「ではこの登録カードに血を一滴付けて下さい。血を付けてからこの箱の上に置いて箱の両側を手で挟むようにして下さい。それで登録が完了します。この登録カードは個人を証明するもので偽造も出来ません。悪用するとギルドから指名手配されますのでご注意を。この箱を傷つけると厳罰です」
「「「「「「はっ」」」」」」
各人が恐る恐る血を付ける。そして
「「「「「「おおー」」」」」」
ビクッとするアリアとコンスキー。少年少女が驚いたり感激するのは見慣れているがいい年こいた集団がそれをするとちょっと引く。
次回更新 12月24日 05:00
次回「ルシンドラ 驚愕の個人機密」
大喜利は永遠だと思います。希望。
コピー用紙も滅びることはないかな。




