ルシンドラ 冒険者への道
惑星ルシンドラに到着
ルシンドラに降り立った一行だが、全く人気が無いどころか現地人の足跡さえも無い場所だった。
「おお、見事に何も無いな」
「何ででしょう」
穂刈少佐と一条二曹が話している。
「そりゃあアレだ。見られると拙いものがいろいろ有るからな」
「有原技術少佐か。拙いのか」
「拙いな。オーバーテクノロジーだよ。多少は知られているが、全部は拙い」
「兵器とかだな」
「彼らも当然警戒はしているだろうが、今まで我々調査隊が「穏便且つ安全な存在ですよ」をアピールしてきたのが無駄になるといかん」
「そりゃ拙いな」
「分かれば良い。現地への出発は2ヶ月後の銀河連合標準時5月16日09:00で、現着が翌日13:00。現地時間午前10時頃の予定だ」
「予定は予定だが、我々が2ヶ月で慣れると思うか」
「慣れて貰う。我々冒険者の都合もあるのでな」
「頑張るとするか」
そばで聞いていた小林二曹は、冒険者というワードに目を輝かせる。
一行は現地の日本連邦秘密基地周辺で2ヶ月にわたる指導を受けた。
「ここの森は歩きにくいが、大館の森もたいがいだったな」
「大館の森も厳しかったですね」
「大館か。良い所なのか?」
「小島中尉。それはもう良い所ですよ。綺麗なビーチに綺麗なエメラルドブルーの海。最高です」
「江間中尉は女性だからな。でものんびりするには良さそうだな」
「ふれあい広場は最高です」
「動物園か」
「ふれあい広場です」
「済まん。好きなのだな」
「大好きです」
「西大尉。お願いしますよ。突撃されたらたまりません」
「失礼な。私だって分かっています」
「江間中尉。本当に我慢できるか」
「我慢します」
「頼むぞ」
「了解」
一行は訓練を重ねる。最初は基地周辺の掃討済み区域を歩いて野宿をするだけだったが、やがて魔物が出てくるようになる。
「アレが魔物」
「ちょっと実物を見ると敬遠したくなります」
「小林二曹、ようやくだね」
「稲州技官、からかわないで下さい」
「いやいや、あの臭いはたまらないな。とにかく臭い。本物だ」
「あそこまで臭いのですか」
「見た目が悪いな」
「西大尉。落ち着いていますね」
「現実味が無くてな」
「そういう意味なら分かります」
好き勝手言う一行。彼らの目の前に現れたのはゴブリン10匹だが、一行の数が多いので戸惑っているようにも見える。
「ここには居ないはずなのに。どこかで湧いたか?」
「湧く?大江少佐。湧くとは?」
「真田技術少佐か。湧くとは魔物独特の生態でな。生態とも言えないかも知れないが、一応生態と言うことにしてある。魔素溜りというのがあって、魔物はそこから出現する事が多い。それをこの星では湧くと言っている。もちろん普通に繁殖もする」
「不思議ですね」
「良し。あいつらを訓練目標にする」
「大江少佐、殺すと言うことですか」
「江間中尉。そうだ。多分もうすぐ数の差を考えずに襲ってくるぞ」
「逃げないのですか」
「魔物は何故か非常に好戦的な種族が多くてな。特にゴブリンとオークは完全に敵だ。教えているはずだが」
「申し訳ありません。やはりあまりの現実味の無さに思考が追いついていません」
「俺たちも始めはそうだった。しかし、負傷者が出ると良く分かった。アルガレータ法国の奴らと同じくらいの敵だと」
「アルガレータ……そういうことなら」
「戦闘準備」
剣を抜き槍を構える。刃物の扱いが苦手な者達は棍棒や弓を使う。銃を使わないのは、現地に銃が無いからだ。
戦闘が終わった後、そこら中にへたり込んでいる者とそのそばには焼いていない酸っぱい臭いのするお好み焼きがあった。
「そうか。初めてだな。俺たちも多かったよ」
「生き物を直接殺すのはきついです。まだ手が震えています」
「アルガレータ法国の奴らと白兵戦になったことは数回しか無いからな。みんな虫や釣った魚以外は殺したことが無いだろう」
「確かにそうです。慣れるのでしょか」
「慣れて貰わないと、冒険者としての活動が厳しいぞ。ただ、生き物を殺すのを平気にはなるなよ。正気を失うぞ。その結果が自滅紛争だ」
「いやですね。なりません」
大江少佐と江間中尉が話している。江間中尉の足下にも有った。
その後も大江少佐の部隊から教えを受ける。そしてルシンドラに降り立ってから2ヶ月。
「冒険者の基礎は出来たと思う。途中からはコードネームで呼び合う事もして貰った。コードネームに慣れたか。現地で冒険者になる時はコードネームでの登録だからな。間違っても漢字で本名を書くな。ルシンドラ言語を使え。では、これで訓練を終了とする」
「「「「「「ありがとうございます」」」」」」
「はあ~。終わった。終わったのね」
心底疲れているのは稲州技官だ。無理もない。戦闘訓練も戦術教育も受けていない、ただの一般人である。かなりつらかっただろう。
「いや。稲州技官。すまん、間違えた。イネス、本番はこれからだぞ」
「西大尉ではなく、クワトロさん。もう止めたい」
「残念だが、その選択肢は無い。最後まで付き合って貰う」
「最後までって、プロポーズですか。困ります。どうしよう」
頬に手を当ててクネクネしているが振りだろうし、俺にそんな気は無い。
「作戦終了までだ。なに勘違いしている」
(クッ。ダメか)
「何か言ったか」
「何でも」
2カ月間の訓練が終了し、いよいよ現地で冒険者になる時がやって来た。
次回更新 12月21日 05:00
次回「異世界」
コードネーム
調査隊
大江少佐 シュテン
小島中尉 ヨシオ
木村大尉 ショウフク 通称ショウ
新型チーム@元凶
西大尉 クワトロ
稲州技官 イネス
江間中尉 エマ
安室一曹 アムロ
小林二曹 ハヤト
南部チーム
大高二曹 ケン
鷲野二曹 ジョー
竜田二曹 リュウ
白鳥三曹 ジュン
燕上等兵 チンペイ
住友技術大尉 エムツー
イスカチーム
真田技術少佐 ユキムラ
徳川機関少佐 ヒコザ
森主計中尉 ユキ
加藤中尉 サブロー
古代中尉 ススム
万久里チーム
穂刈少佐 フォッカー
早瀬中尉 ミサ
一条二曹 ヒカル
満久二曹 ジーナス
羽里二曹 ミリア




