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警戒体制を取ってからレイが開けた扉の前には、中年の男がいた。
服は長袖ではあるが真冬を過ごす為のものではなく、寒さで自然と震えていた。
その男はマントに包まれた゛塊゛を抱いていた。
レイは素早く周りに再度゛探索゛を働かせたが、男が言うようにここには目の前で震えている男とマントに包まれた゛お嬢様゛がいるだけであった。
男が最初に声を出した時に探索をかけてふたりしかいないことはわかっていたが、警戒することに越したことはない。
レイを見て驚いた顔をした男は山小屋からまだ幼い子どもが出てくるとは思わなかったのだろう。
扉と風の音で声だけでは年齢まではわからなかったのだろう。
「入れ」と声をかけると、男は戸惑いながらも急いで山小屋の中に入った。
周りに視線を配っている男は他に誰かいるかと探しているのだろう。
生憎今はレイひとりだけだ。
扉の鍵を閉めたレイはテーブルの横にある長椅子に座るよう促した。
男は長椅子にマントの塊をゆっくり寝かせると、マントの合わせ目を開いた。
中からは長い金髪に熱で赤く染まった頬の小さな女の子が現れた。
息苦しそうな呼吸音が聞こえる。
男はこちらに向き、膝をついて
「助けていただきありがとうございます。
私はムスタと申します。リーンお嬢様の護衛をしております。突然のことで申し訳ないのですが、こちらには熱冷ましの薬などありますでしょか?お金ならあります!」
頭を下げるムスタに対してレイは、懐に忍ばせた短剣をそのままに春に取っておいた薬草を置いてある棚に行き、熱冷ましの薬草を取るとムスタに投げ渡した。