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レイが解体されたウサギを手に山小屋に戻ってくると、
「レイ!明日は森を出て町に行くんだよね!町ってどんななのかな?たくさん人が住んでるんだよね?はじめてだからすごく楽しみ!」とまたも山小屋に入ってきたレイに引っ付いたままリーンは琥珀色の瞳を輝かせて言った。
「行ったら、分かる」とレイは無表情でいい、明日の昼用にウサギの肉を切っていた。
「もう!レイはそればっかり!」と地団駄を踏みながら頬を膨らませてリーンは言った。
「明日は朝早くに出かける、持ち物は大丈夫か?」とレイが手元の作業を止めずにいうと、リーンは怒っているのも忘れて、確認しなきゃと自分の部屋に戻っていった。
その後姿を見ながら、レイははじめてリーンと会った時のことを思い出していた。
レイの最初の記憶はこの山小屋にいるときからはじまる。
捨て子なのかどうかもわからない。
リーンの森の入り口に籠に入ってたのを森の魔女と呼ばれてた老婆に拾われ、物心つくまで育てられた。
生きて行くための全てを老婆から教わった。
その老婆もレイが数え年で6歳になる頃に厳しい冬の寒さに耐えられず、呆気なく逝った。
リーンに出会ったのは老婆が亡くなり、はじめてひとりで
森の厳しい冬を過ごしていた時だ。