第八話 星が少ない星空
カラオケ大会はその後、三時間続いた。
結局、夕夏はその後歌うことは無く、僕と四号さんがほとんど歌った。マリも数曲キャラソンがあったので、それを四号さんとマリで歌った。夕夏は僕に歌わされた腹いせなのか、僕に四曲連続で歌わせてきた。狂ったように歌ったので、後半の二曲に関しては何を歌ったのかさえも覚えていない。四号さんは日ごろからカラオケによく行くのか、疲れる様子もなく、ずっと歌い続けていた。選曲のバリエーションも豊富で、昔の特撮から最近のJポップとさまざまだった。
途中、四号さんが突然「今日の記念に、四人で集合写真を撮ろう」と提案してきた。
夕夏は「いいね。撮ろう、撮ろう!」と、なぜか乗り気だった。
四号さん、僕、夕夏が横に一直線に並ぶ。マリは四号さんが大事に抱えていた。
ガラステーブルにスマホを立て、タイマーをかける。
「じゃあ、行きますよ」
僕はタイマーを押し、カウントダウンが始まる。急いで夕夏の隣に戻る。僕は少し夕夏と距離を取っていたが、夕夏は僕の手を自らの方に引き、嬉しそうにカメラに向かってピースサインをした。そして、シャッターが切られる。
一見、僕と四号さんとぬいぐるみのマリの三人の集合写真というなんとも奇妙な写真ができた。それでも、確かに僕は夕夏の姿が見える。笑って、ピースサインをこちらに向けている夕夏。こうしてみると、彼女が僕と歳がそこまで違わない少女ということが身に染みてわかる。
戦闘によってつけられた傷がピースサインのいたるところに確認できることも、よくわかった。
それでも、彼女の笑顔は本当にまぶしかった。
こんな笑顔を独り占めしていいのだろうかと思わず不安になる。
カラオケ大会が終わるころには、夕夏はソファーに座りながら寝てしまっていた。
僕が紙コップに残ったぬるいコーラを飲み干していると、「君たちがしている旅は、君と夕夏の関係に何か影響を及ぼす旅なんだね」と、四号さんが話しかけてきた。新しく持ってきたビール缶をあおっていた。
「……そうですかね」
「そうだよ。終わりの旅なのか、始まりの旅なのか」
さすがに飲みすぎたのか、四号さんは天井を向き、アルコールを抜くように大きく息を吐く。
「関係が変わるって、実に良いことだよね」
「そうなんですか?」
「勿論」
「変わらない良さもあるんじゃないですか?」
「そんなの、ただの嘘さ。実際は静かに心が死んでいくだけだ」
何かを嚙み締めるような言い方だった。
「僕とマリさんの生活は確かに平和で幸せなものだけど、それでも、どこか変化を求めている自分もいる。いや、求めているとかそんな大層なことじゃなく、ただ怖いだけなんだ。ずっと、自分がこのままなのが。学生の頃は変化していくのが普通だった。いや、変化しないといけない場所だった。それを億劫に感じてもいたし、逆に心地よくもあった。でも、今は違う。考える時間はあるんだ。学生の頃なんか比じゃないくらいの膨大な時間が。その時間をマリさんと過ごせるのは確かに良いことだけど、これ以上、僕とマリさんの関係が変わらないことが怖いんだ。もっとマリさんと……いわゆる次のステップに進みたい」
四号さんはビール缶を机に置く。缶を置く音がやけに大きく聞こえた。
「これはまだ他人に話したことが無いことなんだけど、聞いてもらえるかな」
「もうすでに、だいぶ聞いてますよ」
四号さんが小さく笑った。
「……マリさんと結婚しようと思う」
四号さんは黙っている僕に「驚いた?」と聞いてくる。
「……はい」
「今の日本、ツイッターなんか見ればアニメキャラとの結婚なんて珍しくもない。でも……これは僕にとって大きな一歩なんだ。もちろん、マリさんとよく話し合って決めたことだよ」
四号さんはソファーに座っているマリの頭をなでる。
「実際の役所に僕とマリさんの婚姻届を出しても受け取ってくれないけど、それを受けってくれる企業もあるみたいなんだ。まあ、仮だけど、それでも当の本人たちにとっては結婚だ。……親や同僚からの目はより悪くなるだろうね。世間は僕たちの結婚をまだまだ認めてくれない。でも、そんなのどうでもいい。ただ僕はマリさんとの生活をより深いものにしたいし、よりマリさんとの繋がりを強くしたい」
そこまで話し、四号さんは僕と目を合わせてくる。
「……君は夕夏とこの先、どうなりたいの?」
「僕は……」
僕は、その質問に答えることができなかった。
夕夏との仲をどうしたいかなんて考えたこともなかった。
結婚の話はそこで終わり、そこから僕と四号さんは他愛ない話を続け、気が付いたら僕はソファーで横になって寝ていた。
変なところで寝たのか体の節々が痛い。重たい体を起き上がらせ、壁掛け時計を見ると時刻は午前二時過ぎだった。
テーブルの上はお菓子の袋と食べ残しと飲みかけのコーラと空のビール缶でぐちゃぐちゃになっていた。
四号さんはマリを両手で抱き寄せ、大きないびきをかきながら床で寝ていた。
あれ? 夕夏は?
僕は周りを見渡すと、ベランダに出ている夕夏の姿を見つけることができた。ガラス戸は閉まっており、夕夏は上を見上げ、空を眺めている。
僕は立ち上がり、ベランダに近づく。夕夏は僕に気が付かず、空を眺めたままだ。
ガラス戸の奥に見える夕夏の姿に既視感を覚える。そうか、画面の中にいた夕夏を見ていたときに似ているんだ。こちらから触れることができず、ただ見るだけ。
ガラス戸をノックすると、夕夏は僕に気が付き、目が合う。
ガラス戸を開け、ベランダに出る。都会にしては割と静かなところで、車が遠くを通る音が時々聞こえる以外はほとんどなにも聞こえなかった。風はなかったものの、肌寒い。
「……起こしちゃった?」
「いや、自然に起きただけ。寒くないの?」
「うん。大丈夫」
夕夏は再び、空を見上げる。
夕夏の呼吸がかすかに聞こえる。
その音をまじまじと聞いてはいけないような気がして、僕は上を見上げ、星を探してみる。しかし都心の明るさに星はかき消され、はっきりと見える星は五つくらいのものだった。けれど、夕夏はそれで満足しているのか、嬉しそうに星空を見上げていた。
「星、好きだっけ?」
「私が住んでいる組織の施設は夜間の外出は禁止されていたし、地下施設だからあまり見たことがなかったの。夜間の出動の合間に見るとか、施設内で資料映像でしか見たことがなかった」
「……ここで星の解説ができればいいんだけど、僕は星座とかからっきしなんだ」
夕夏はフッと笑う。
「私も教えることができるほど詳しくないよ。……でも、綺麗だということはわかる」
「もっと田舎に行けば、もっと綺麗な星空を見ることができるよ。それこそ、一面、星だからけでまぶしいくらいに」
「そうなんだ! 見てみたいなぁ」
夕夏はそんな夜空に思いをはせるように、星がよく見えない夜空に目を向ける。
そんな夕夏の横顔を眺めていると、やるせない気持ちになってくる。
「……ごめん」
僕は絞り出すような声でつぶやく。
「……なんで太一さんが謝るの?」
「夕夏を清水さんに会わすことができなかった」
あともう少し早く、清水さんの元へたどり着くことができていたら。あのタクシーを止めることができていれば。もっと早く、清水さんの控室を見つけることができていたら。
だんだん自分が情けなくなってきた。もし、あのとき、ああしていたら。そんな考えが頭の中でずっと巡り続ける。
「太一さん……清水さんと会えなかったのは全部太一さんのせいじゃないよ」
「でも」
「私もあの時、もっと早く太一さんの手を引っ張っていればよかった。そうしていれば、間に合ったのかもしれない。もっと上手く動くことができたのかも……私と太一さんは二人で清水さんの元を目指しているの。だから、責任、私にも持たせて」
「……そうだよな。ごめん」
「あ、また謝った」
「あ、えっと……次も頑張ろう!」
「うん。おー!」
拳を高く上げる夕夏。そこからしばらく、二人で夜空を眺めた。少し寒かったけど、いられないほどではなかった。僕たちは並んでガラス戸の枠に座る。
「七……八。全部で八つ」
僕は一つ一つ見える星を指さして数える。夕夏も僕の真似をして星の数を数える。
「六……七……八……九だよ。一つ忘れてる」
「え? 八だよ」
「九だよ」
「八だよ。一……二……三…………あれ、今度は十になったんだけど」
「そんなわけ…………え? 七になった」
夕夏と顔を見合わす。思わず二人して吹いてしまった。
彼女の肩が僕の肩に当たる。もう一度、夕夏と顔を合わせた。
彼女の姿は僕だけが目にすることができる。彼女の瞳や唇、綺麗に切り揃えられた前髪も、はっきり見ることができる。
「太一さんは私の大ファンなんだよね」
夕夏が独り言のようにつぶやく。
「……うん。そうだよ」
「それって私のこと、好きってことだよね?」
「えっ」
僕は思わず夕夏の方を向く。夕夏は真剣な面持ちでこちらを見てくる。
「……うん」
「どうして私のことを好きになったの?」
どうしてそんなことを聞いてくるんだ? 好きなところなんて、何百でも言うことができるが、それを本人に言うのはあまりにも恥ずかしい。
しばらくの間、沈黙が流れる。夕夏は一行に譲らないつもりなのか、僕のことをじっと見続けている。
夕夏に根負けした僕は赤面しながら答える。
「初めて『サイキックズ』を観たとき……笑顔がめちゃくちゃ可愛いと思ったから」
顔面の水分が沸騰したように顔が熱い。めちゃくちゃ恥ずかしい。
僕が中学三年生、人生初めての受験勉強に精神がすり切れられそうになっているとき、たまたまつけたテレビで『サイキックズ』が流れていた。一目惚れだった。二次元キャラクターに対して、あそこまで目が釘付けになったのは最初で最後だった。
恐る恐る夕夏の方を見る。夕夏は驚いたように目を丸くしていた。
え、まずいこと言っちゃったかな。何が気に食わなかったんだろう。馬鹿正直に言わず、もっと別のこと言えばよかったのかな。
「太一さん」
夕夏は手で自らの口角を上げ、不自然に口角が吊り上がった顔を見せてくる。
「どう? 可愛い?」
口裂け女?とつい口に出しそうになり、それを飲み込み「あ、ああ、うん」と変な返事をすることしかできなかった。
夕夏は口元から手を離す。頬がほんのり赤くなっていた。
「初めて言われた、笑顔が可愛いだなんて。それもめちゃくちゃ可愛いって。いつも施設の人たちからは戦っている姿が可憐とか、カッコイイとかしか言われなかったから、……嬉しい。それに、初めて同年代くらいの男子から言われた」
もう一度、手で口角を上げ、見せてくる。不思議とそのしぐさもだんだん可愛く見えてくる。
そこで僕は先ほどの四号さんの言葉を思い出す。
『マリさんと結婚しようと思う』
……そっか。
僕、夕夏のことが好きなんだ。
ずっと、手に届かない。届いてはいけないものだと思っていた。
でも、今は違う。夕夏と恋人として一緒にいたい。楽しくおしゃべりして、一緒にご飯食べて、時々デートに出かける。そういう生活を夕夏と送りたい。
そして僕にはそれが可能なんだ。だって、今、目の前に夕夏がいるから。
不意に罪悪感に襲われ、夕夏から目をそらす。
どうして今まで夕夏のことを簡単に直視できたのだろう。
心臓がだんだん高鳴っていく。
夕夏が僕の手を握ってくる。驚きで声が出ない。
僕たちは目が合う。
「太一さんは……四号さんみたいにアニメキャラクターの私と付き合いたいと思ったりするの?」
夕夏の手がこわばっているのがわかる。僕の手も多分、少し震えている。
「……まだ、わからない」
僕は、嘘をついた。
ここでイエスと答えたら、僕たちの関係が良くない方向へと変わってしまうような気がしたから。僕は四号さんとは違った。もう少し、夕夏との今の関係を続けたかった。変えたくなかった。変えるのが怖かった。
「……そっか」
夕夏の手が僕の手から離れていく。
「……変なこと聞いちゃった。忘れて」
夕夏はもう一度口元に手をやり、下手くそな作り笑いを僕に見せてきた。僕はそれを直視することができず、思わず顔を背けてしまった。
僕たちの間に重苦しい空気が流れ、夕夏は居ても立っても居られなくなったのか、「ちょっと外出て、その辺ぐるっと歩いてくる」と言い、立ち上がる。
「え、なら、僕もついて行くよ」
「いや、大丈夫。夜歩くなんてこと、なかなかできないから。一人で歩いて回りたいの。三十分くらいで戻るから」
「……わかった」
彼女は一刻も早く、僕から離れたいんだ。そんな気持ちが手に取るように分かったが、僕から言える言葉はそれ以上なかった。
夕夏は立ち上がり、ガラス戸をすり抜け、部屋に戻った。四号さんはまだ寝ていた。
一人、ベランダから夜空を見上げた。星は相変わらず、点々としか見えなかった。
彼女は一体、どんな気持ちで僕にあのような質問をしたのだろう。イエスと答えたら、どうなっていたのだろう。
夕夏の質問に『わからない』と答えた自分に後悔し始めていた。
でも、イエスなんて言えるわけがない。彼女は二次元の住人で、僕は三次元の住人で。今、ここに 夕夏がいること自体がイレギュラーなんだ。
今の僕と夕夏の関係も、いつ解消するかわからない。
それに、たぶん夕夏は勘違いをしている。
僕は夕夏を夕夏だから助けたのではない。夕夏が大好きなアニメキャラクターだからこそ、助けて手伝っているんだ。自分勝手なんだ。
イエスと答えてしまったら、彼女の僕に対する感謝の気持ちに付け込むようじゃないか。
僕なんかが、夕夏と釣り合うわけがない。
僕は四号さんにはなれない。
近くで見るだけで十分なんだ。
「うわああああ!!!」
すぐ近くから夕夏の叫び声が聞こえた。
僕は反射的に立ち上がり、声が聞こえた部屋の中を見る。
リビングは四号さんとマリが寝ているだけだ。
リビングじゃない。
ガラス戸を開け、中に飛び込み、廊下を目指す。
僕の乱暴な足音によって四号さんは目覚め、「どうしたの?」と僕の背中に向けて聞いてくる。
廊下を見ると、四つある扉のうち、一つだけがかすかに開いていた。四号さんが僕たちにマリを会わせるために、マリを連れ出した部屋だ。
僕はその扉のドアノブに手をかけ、ためらいなく開く。
部屋は暗い。よく目を凝らして見ると、夕夏が床にへたり込んでいた。
僕は壁にあるスイッチを押し、部屋を明るくする。四号さんの寝室兼趣味部屋なのか、リビングよりも少し雑多な感じで、本棚にはあらゆる漫画の単行本が入っており、大きなガラスケースには何体ものフィギュアが並んでいた。大きなハンガーラックがあり、そこにマリの着替えと思わしき原寸大の女性服が何着もかけられていた。セーラー服に、ワンピースに、ナース服に、コスプレ用のマリの戦闘服。
部屋の一番奥にはベッドがある。夕夏はベッドを指さし、怯えていた。
なんだ?
僕はゆっくりベッドに近づく。ベッドの上には何冊かのアニメ雑誌が置いてあった。その中の一冊に、よく見慣れた顔が表紙にプリントされていた。
それは、夕夏だった。
しかも、……これって……。
ピンク色の背景の前に夕夏が立っており、こちらを見ている。夕夏の金色に輝いている髪には白濁とした粘度の高い液体がかけられ、夕夏の頬は赤く染まっていて……。
目をそらした。
全部わかった。
それ以上、事細かく見る必要は無かった。
作者名は『ノア』。
表紙の端に十八禁のマーク。
これは、夕夏の……。
表紙の感じからして、多分、凌辱系。
振り返り、夕夏と目が合う。その目は恐怖に染まっていた。
そして、廊下に四号さんが立っていた。今にも泣きだしてしまいそうな表情だった。
「ち、違うんだ……それは……」
四号さんの右手はマリの左手と繋がれており、マリはぶらりと四号さんの手から釣り下がっていた。
「……なんで」
夕夏が絞り出すような声でつぶやく。彼女の頬を一筋の雫がつたっていく。
「なんで……どうして私たちが……」
夕夏はあふれる涙を止めようとしなかった。放っておくと、頭の先から崩れてしまいそうだった。これ以上、夕夏はここにいてはいけない。そんな思いが僕の中で膨れ上がっていく。僕は夕夏の腕を掴む。
「行こう」
夕夏はわけがわからないといった表情で僕を見上げてくる。
「行こう」
僕はもう一度言った。今度は僕の言葉が理解できたのか、うなずき、ゆっくりと立ち上がる。
僕は離さないように夕夏の手を強く握り、荷物を取るためにリビングに戻る。
「……夜中だよ。外、寒いよ」
四号さんは出発の準備をしている僕に対して、そんな言葉をかける。しかし、自分に言う資格がないことをすぐに悟り、その後は黙ったままだった。
僕と夕夏は準備を済ませ、玄関に向かい、靴を履く。
四号さんは離れた場所から見ているだけだった。何かを訴えかけてくるような目だったが、僕は無視した。
扉を開け、外に出る。
最後、四号さんが何か言ったような気がするが、扉が閉まる音にかき消され、聞こえなかった。
僕たちは歩き出す。まだ夜は明けていなかったが、外は居られないほど寒いわけではなかった。
僕と夕夏は手を繋いで、住宅街を歩く。向かうべき先など、全くわからない。
「……私、外に出ようと思って」
夕夏がポツリポツリと話し出す。
「それで、廊下を歩いてたら、一つだけ開いている部屋があって……ふと気になって、部屋に入って、それで……」
突然、夕夏が立ち止まる。涙で溜まった目で僕を見てくる。
「なんで……なんで、私たちなの……一生懸命戦っているのに……こんなに、怪我しているのに……どうして……」
地面に夕夏の涙が落ちる。しかし、最初から涙などなかったように、地面に涙の跡は残らない。夕夏はこの世界に歓迎されていない。
夕夏は僕の右手を命綱のように離さず、握り返してくる力が強くなる。彼女の痛みが伝わってくるようだった。
僕は傷だらけの手に自らの左手を添え、優しくなでる。何を言えばいいのかわからなかった。だからせめて、彼女の痛みが減ればいいと思った。
痛いの痛いの飛んでいけ。
飛んで、二度と彼女の元に戻ってくるな。
それから僕は歩いた。夕夏を背中に乗っけて。
彼女はその後も泣き続けた。
夕夏の背負っている僕は周りから見れば、奇妙な奴なのだろう。
けれど、そんなの関係なかった。
かまわなかった。
ただ僕は、彼女の味方になりたかった。
彼女の体の重みは確かに僕に伝わり、一歩一歩、歩いていることを実感することができた。