ロイド編(7)
厄介な疫病が国の端から急拡大しつつあった。
今年の流行り病は、症状が重い上に感染力も桁違いに強い。
何とかして薬をー
「殿下〜、グレイス嬢から手紙が届いてますよ?」
……何か新たな要求か?
言っておくが、教師は手配済みだぞ。
訝しげに手紙を開くと、そこに記されていたのは恐ろしく……
簡潔な一文で……
また軽々と俺の理解を超えてきた。
薬を手に入れられるかもしれないだと!?
大陸一と言われる我が国の医師と薬師が苦心を重ねても、未だ完成の糸口すらみつからないというのに。
どういうことだ?
まさか!
女神様の遣いチートとかいうやつなのか!?
「……駄目だ」
「凡人の俺には分からん」
「殿下」
「あーやだやだ。その顔面で、国の一、ニを争う剣の腕かつ一国の王子が何言ってんですか。今、サラッと世界中の男を敵に回しましたね」
俺はアレンに構わず兄上に報告をして、グレイス嬢の元へと急いだ。
「詳しくはお伝え出来ませんが、薬師が我が領にいる可能性があります。他国の方ですので、協力して頂けるかは分かりません。ですが、少しでも可能性があるのなら探しに行きたいと思います」
他国の薬師だと?
この疫病の薬を開発できるだけの知識と技術を持つ者など非常に限られる。
というか、ある幻の一族しか思い付かないんだが。
大陸中の国々が秘密裏に一族を取り込もうとこぞって接触を試みているが、未だに居場所すら特定出来ないのだ。
深淵の森を彷徨い続ける事になったり、還らぬ者になったという報告もある。
まさか、我が国に居るはずが……
いや。今はそれよりも薬を手に入れることが優先だな。
「兄上は君を一人で行かせるのは不安な様だから、俺も一緒に行こう。気乗りはしないが、権力が必要な時は任せておけ」
「レオナルド殿下が……」
兄上の名前を大切そうに呟くグレイス嬢は、俺の前で見せたこともない柔らかな顔をしていた。
俺は、一瞬で対俺通常モードの無表情に戻ったグレイス嬢に苦笑いしながらポンと頭に手を載せー
兄上の幸せ全てを守るのが自身の務めだと、密かに喝をいれ直した。
◇ ◇ ◇
「月佳草を摘みに、湖畔を訪れる可能性が高いと思います」
辿り着いたコートネイ領の湖は、澄んだ湖水の水面を日の光がキラキラと反射していて、その場に居るだけで自身まで清らかになるような感覚を覚える美しい場所だった。
湖畔を少し行くと、白い花が一面に広がる一帯が見える。
人影が……
こちらが気付いた瞬間、ナイフの様に恐ろしく鋭い気を纏わせた男が振り返った。
そしてグレイス嬢を見留めた途端に、もの凄い速さで距離を詰めてきた。
かなりの強者…!
俺は反射的に剣に手を掛けたのだがー
……その直後、あのグレイス嬢が女神様の遣いだったという時点で『頭で理解する』という行為を手放す必要があったことを再認識したのだった。
最後までお読み下さり、ありがとうございました!
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