表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/14

ロイド編(10)

俺が近づいてくるのにいち早く気付いたレティスは、淑女の笑みのまま目を細めて視線を鋭くした。


まるで、獲物を仕留めにかかる獣のようだな。


「レティス嬢、久しいな」


「長らくご無沙汰しておりまして申し訳ございません。ロイド殿下」


レティスは目付きはそのままに、全くブレのない美しいカーテシーをしてみせた。


「幼少期以来だが、その様子だと変わりないようだな」


「……試してご覧になりますか?」


扇越しにニヤリと笑ったのが分かる。

やれやれ、本当に変わりがないな。

ここは鍛錬場じゃないんだぞ。


「では、ダンスを一曲お付き合い願おう」


「……喜んで、お受けいたしますわ」


差し出した俺の手を取りつつ、明らかに落胆した様子だ。


だが、グレイス嬢に続くレティスのこのつれない態度を面白いと感じる俺は一体どうしたものか。


「どこまで付いてこれるか、お手並み拝見だな」


「殿下こそ、私に遅れを取らぬようお気を付け下さいませ」


ダンスが始まり、レティスの磨きがかかった身体能力に調子に乗った俺は、高難度のステップを次々と繰り出しながら、この時間を心の底から楽しんでいた。


「そういえば、デビュタントの年の舞踏会はどうした」

「病気療養と聞いたが」


「療養というのは本当です。……正確には怪我ですが」

「鍛錬中に少々ヘマをしました」


一般的な少々ではないだろうな。

年頃の令嬢が、一体どんな鍛錬を積んでいるのやら。


「まぁ、病気でないなら安心した」


「ふふ……病気ではなく怪我での療養と聞いて安心するのは殿下位です」


「……明後日の朝8時だ」


「承知いたしました」


高難度のダンス中も挑発的な視線を向けてくるレティスに対して、俺もつい昔に戻ったかのように剣を合わせてみたい衝動が抑えきれなくなった。


こうして俺の誘いを勝ち取ったレティスは、満足げな様子で貴族たちの輪に戻っていった。


――約束通りの時間、子供の頃にいつも兄上達と使っていた鍛錬場にレティスが姿を表した。


彼女はスタンリー辺境伯家の令嬢で、幼い頃は俺達や兄のマークと共に剣の指導を受けていた。

辺境伯家は代々国境の守護を任されており、歴代当主も剣豪揃いだ。そしてその血が流れるレティスは、あどけない少女の顔をしながらも恐ろしい身体能力で当時の俺達と互角に剣を交えていたのだ。


「殿下、訓練用の剣をお借りできますか」


「構わないが……お前の剣はどうした」


レティスは珍しく言い淀んだ。


「……実は、父より剣の鍛錬の謹慎を言いつかっておりまして。私の所有する剣は全て取り上げられております」


「おい?」

「何だそれは。聞いてないぞ」


「大した理由ではありません。婚約者候補達を全員完膚なきまでに叩きのめしてやっただけです。あの男たちが弱いのが悪いのです」


「……はぁ。で、婚約はどうなったんだ」


「全て白紙になりました」

「令嬢に負けたなど外聞が悪いので慰謝料の請求は来ていませんが、これでは嫁の貰い手がなくなると言って両親に呆れられこの様です」

「自分より弱い男と結婚する位なら、生涯独身を貫きこの剣で国を守り続けた方が幸せですのに」


「俺をダシに使ったな?謹慎中に剣の相手にをさせたなんてバレたら、辺境伯に文句を言われるな……」


「流石の父も、殿下ならば大目に見てくれるでしょう」

「では、参ります!」


そう言って、突如猛スピードで斬り掛かってきた。


重さはないが、早い……!!

そして身体のバネを自在に使い、多方面から鋭く緻密な連続攻撃を仕掛けてきた。


先程の発言といい、レティスが令嬢なのが惜しまれる。

男ならば胸を張って思う存分振り剣を振り、さぞかし活躍出来たに違いない。


女性の筋力でこれほど剣の腕を磨き上げるのには、相当な努力を要しただろうな……


などと考えながら打ち合いを続けていると、レティスの兄であり次期辺境伯のマークが現れた。


「マークか」


「殿下のもとに伺いましたら、侍女殿にこちらだと聞きましたので」

「レティス。父上には黙っておいてやるが程々にしろ」


「殿下。妹の相手をして下さり、ありがとうございます」

「ですが、万一妹に傷を付けた場合には……宜しくお願いしますね?」


マークは基本穏やかな男だが、笑顔の圧で相手を殺す術でも習得したのか?

恐ろしい奴だ。


「傷など付けぬから安心しろ。万一の場合も分かっている」


俺に傷を負わされた責任で娶られるなど、レティスには屈辱以外の何物でもないだろうがな。


「分かっている……って何ですか殿下!?」

「もう!兄様も変な事を言わないでよね!!」


「レティス、今日はここまでだ。午後からコートネイ伯爵令嬢達との茶会があるのだろう」


「そうでした!」

「では殿下、手合わせありがとうございました!!」


黙って座っていればそれなりの令嬢に見えるのに、本当に相変わらずだ。

あっという間に姿が見えなくなった。


「グレイス嬢の護衛兼、話し相手といったところか」


「そうですね。妹は少々変わっていますので、コートネイ伯爵令嬢と気が合えばですが。先日の舞踏会で公爵家のご令嬢が派手にやらかしましたし、反王制派のこともあるで念のためです」


「女神様の愛し子であるグレイス嬢は、国にとっても重要な存在だ。感謝する」

「だが……グレイス嬢とレティスの茶会か。一般的な令嬢とかけ離れた2人がどんな会話をするのか全く想像がつかんな」


後で兄上から茶会について聞いた俺は、グレイス嬢とレティスがすっかり意気投合し、レティスはようやく己の剣を取り戻したことを聞いた。


また鍛錬に誘ってみるか。


俺はカイルから習得したばかりの新たな剣の技術を早速レティスに披露しようと密かに楽しみにしつつ、執務をいつも以上の猛スピードで捌いていった。

最後までお読み下さり、ありがとうございました!

執筆超初心者ですので、【まだまだだな】【面白かった】など教えて頂けると大変参考になります。

宜しくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ