最強の霊媒師⑧-グリム・リーパー-round1
新聞を読む霊媒師
霊媒師
「鉄柵に挟まれ死亡か…最近こう言うニュース多いな、怖いわ」
ページをめくる霊媒師
サエコ
「せんせ!今日の依頼ですが…」
霊媒師
「ほんとこわい…」
依頼を持ってくるサエコに
心の底から恐怖を感じる霊媒師
ーーー
新聞を読む霊媒師
霊媒師
「怖いよね」
サエコ
「……」
依頼者
「……」
依頼者が冷や汗をかきながら
霊媒師の方を見続ける
霊媒師
「怖いなぁ…怖くない?…怖い」
サエコ
「…あの」
「先生」と呼びかけるサエコに対し
しばらく「怖い」を連呼する霊媒師
サエコ
「何が…怖いんですか?」
霊媒師
「怖い…もう全部が怖いよね…本当
この状況がね、怖いね」
サエコ
「先生、依頼者が来てるんですよ」
霊媒師
「怖い…」
サエコ
「新聞読むのやめてください」
新聞を取り上げられて
霊媒師はしばらく静止したあと
依頼者の方をようやく見る
霊媒師
「……」
サエコ
「……」
依頼者
「……えっと」
霊媒師は無言で依頼者を見続ける
霊媒師
「……」
サエコ
「なんか言ってください」
霊媒師はしばらく依頼者を見た後
ニカッと微笑む
サエコ
「もういいです。依頼者さん依頼内容を話してください」
依頼者
「え?あ、はい!」
サエコは霊媒師の態度に呆れて
勝手に進めることにした
ー
サエコ
「友人が次々と死んでいく?」
依頼者
「はい…友達が死ぬ夢を見た後
本当にソレが現実に起きてしまって…」
サエコ
「ほぉ……」
霊媒師そっちのけで話を進行させるサエコ
サエコ
「偶然とかじゃないんですか?」
依頼者
「僕も初めはそう思ったのですが、
死に方がその、みんな同じなんです…夢と」
怯える依頼者
依頼者
「僕は怖くなってしまったんです
次は誰が死ぬのか…その夢はすごく凄惨なんです…もう本当にむごい死に様で…」
サエコ
「それはお気の毒に…」
依頼者
「これってもしかして…怨念とかじゃないか
とそう思い、凄腕だと評判の霊媒師さんに
相談しに来た次第で…」
サエコ
「任せてください、彼はこんなだけど
色んな難事件を解決してきた実績のある方なんです!きっとその悩みも解決することでしょう。
ね?先生。」
サエコが霊媒師に声をかける
霊媒師
「……」
サエコ
「じゃあ早速、お仕事に取り掛かりましょうか
依頼者さん本日はよろしくお願いします」
依頼者
「あ、はい…!」
一旦依頼者を退却させるサエコ
サエコ
「ふぅ……」
サエコは扉の前で一息ついた後、ニカッと笑い霊媒師に声をかける
サエコ
「良かったですね、先生。新しい依頼が来て」
サエコはソファに腰掛け、霊媒師を見上げる
サエコ
「人が次々に死んでいくなんて
今回の事件はかなり難航しそうですが
霊媒師さんなら余裕ですよね?」
霊媒師、応答せず
サエコ
「せーんせ♪」
霊媒師
「サエコ」
サエコの呼びかけに
霊媒師はようやく反応する
霊媒師
「あなたはなぜ私に御依頼を押し付けてくるのですか?」
サエコ
「先生、お金に困ってそうだもん」
その返答に霊媒師は「ハァ…」っとため息を吐く
サエコ
「それに、先生の力は本物だ
それを世間に公表しないなんて勿体無いよ」
得意げな顔してそう言うサエコ
霊媒師
「サエコさん、先生は言いましたよね?
先生は霊媒師のお仕事を引退したのだと
口を酸っぱくして何度も教えましたよね?
その耳は何のためについているんですか??
人の話はちゃんと聞きましょう」
サエコ
「じゃあ、わかりました
この仕事は無しって事ですね
依頼者さんにそう伝えてきます、この仕事は無理だから降りますって」
サエコが立ち上がると霊媒師は「待て待て待て」と制止する
霊媒師
「わかったわかった、一度引き受けちまったし
もうやるしかないよ、サエコ様、お席へどうぞ」
霊媒師はサエコを再びソファへ座らせる
ーーー
霊媒師
「で、何?人が死ぬ話?"今回"は」
サエコ
「夢で見た事が現実に起きるらしいです」
霊媒師
「夢で見たことが〜??」
疑いの目を向ける霊媒師
サエコ
「実際に心霊現象が起きるくらいです
そういうのがあっても不思議じゃないと思いますよ」
そう諭すサエコ
霊媒師
「正夢なんてのはさ、大体そいつの勘違いなんだよ、多くは偶然同じようなシチュエーションに遭遇して、あたかもソレが夢と同じだと思い込む錯覚なんだ」
サエコ
「それって何か根拠あるんですか?」
霊媒師
「持論だけど?」
霊媒師は当たり前のようにそう返す
サエコ
「でも人が実際死ん…亡くなってるんですよ?
死に方も酷くて…」
サエコは淡々と死亡した人達の死因を語っていく
「飛んできた鍋の蓋が当たって頭半分を失ったり、鉄パイプが頭に落ちてきて貫通したり、鉄柵に挟まったり…」
霊媒師はそこで「ちょっと待て」と言う
サエコ
「なんですか?」
霊媒師は新聞を確認する
霊媒師
「うん、なるほど…」
サエコ
「?」
霊媒師
「サエコ、こいつは仕組まれてる。
筋書きがあるんだ」
サエコ
「仕組まれてるって誰にですか?」
霊媒師は少しためて言う
霊媒師
「死神だよ」
ーーー
霊媒師
「俺もびっくりだよ
まさか本当にあるなんてな
予知夢。」
サエコ
「予知夢?」
霊媒師
「死を予告する夢だ
その夢を見たやつは必ず夢と同じ通りに死ぬ
いわゆるファイナルデ○ティネーションだな」
サエコ
「ファイナ…え?」
霊媒師
「ファイナルデ○ティネーション、アメリカのホラー映画だ。知らねーの?」
不思議そうな顔をするサエコを見て呆れる霊媒師
霊媒師
「全く…とんだ世間知らずもいたもんだな
ファイナルデ○ティネーションってのは
死の予知夢を見た若者がその後次々と死んでいくっていう映画だよ」
霊媒師
「主人公のアレ○クスくんがな…」
サエコ
「あーはい!わかりました!面白そうですね!」
適当に話を流すサエコ
サエコ
「その、ナントカカントカが今回の事件に関係してるってことですね?要するに」
霊媒師は深く頷く
霊媒師
「今まで五作出てるんだ、四作目は声優にタレント起用しててちょっと微妙だけどな
でも死に様が本当に芸術点高くて…」
サエコ
「いやもういいです、その話は」
呆れつつ本題へ戻すサエコ
ー
霊媒師
「まぁとりあえず、まずは依頼者から適当に話聞いて、そのあと霊視だな」
サエコ
「先生、なんだかいつもよりノリノリじゃないですか?」
霊媒師
「そうか?別にいつもと変わらないと思うがな」
サエコ
「もしかして、そのファイナルなんとかが関係してたりします?」
霊媒師
「俺がそんな不謹慎な奴に見えるか?」
サエコ
「…違うんですか?」
サエコと霊媒師は準備を済ませたあと
依頼者の待つ部屋に移動した
ーーー
依頼者を霊視する霊媒師
霊媒師
「〜」
依頼者
「……」
サエコ
「あの、どうですか?」
霊視を終えて、ゆっくり口を開く霊媒師
霊媒師
「うーん…わからん…何も感じない」
サエコ
「えぇ…」
依頼者は不安な顔をする
霊媒師
「とりあえずさ、お友達だっけ?
ちょっとその人達のとこまで案内してくれない?
移動式だとアレだから」
サエコ
「移動式?」
霊媒師
「人から人へと移動していく霊魂みたいなそんな感じの奴だ、今感じないからこの人には多分
今は憑いてないんだと思う、夢に出てきた友人のところに憑いてる可能性が高い」
霊媒師はそう言って依頼者に友人を紹介するよう要求。
依頼者は友人に電話をして待ち合わせの許可を取ったあと、霊媒師達を友人宅へ案内した。
ーーー
依頼者
「ここです」
友人宅に到着
依頼者の友人が遠くで手を振る
友人
「どうも、はじめまして、霊媒師さん?
本日はよろしくお願いします」
霊媒師
「いえ、こちらこそ」
友人と挨拶を交わしたあと霊媒師は
早速霊視をする事に
サエコ
「先生、どうですか?」
霊媒師
「ダメだ、この人でもないな…」
霊媒師は頭を悩ませる
友人
「何か問題ありましたか?」
霊媒師
「いえ……友達の死について教えていただけませんか?」
霊媒師達は友人の車に乗ってある所へ向かう
友人
「まず初めに死んだのがYの奥さん
彼女は元々最初の事故で亡くなるはずだったらしいのですが、コイツに助けられて…
その時はいつもと変わらない様子でしたが
自宅でカセットコンロが引火して…爆風で飛んできた鍋の蓋に…」
サエコ
「最初の死に様ですね」
霊媒師
「おい、言葉を慎めよ。それで?次は?」
友人
「次はその旦那のYでした
工場の作業中、何かの拍子で跳ねたワイヤーロープが体に接触して…その…」
霊媒師
「真っ二つになったとか?」
友人は静かに頷き、
依頼者は恐ろしいと言う表情を浮かべる
サエコ
「それで次は?」
友人
「えーっと次は、隣町の村上さんって人です
その人は高齢で偶然事故に居合わせた人なのですが、彼もその、先生の言ってた…何でしたっけ?」
霊媒師
「予知夢?」
友人
「そう、その予知夢の犠牲者だったみたいで
我々とは接点はなかったのですが、歩道を歩いていると建設中の建物から落ちてきた鉄パイプで
頭から下を貫かれて亡くなったそうなんです…」
霊媒師
「なるほど…で、次は?」
友人
「次…次はえっと…なんだったかな
なんか鉄柵に挟まった人が多分ソレだったと思います…彼も事故で死ぬはずでした…」
霊媒師
「例の死亡記事のやつか」
サエコ
「最初の事故で生き残ったのに
その後別の形で次々と亡くなっていくなんて恐ろしい話ですね…」
霊媒師
「そうだな…」
サエコは震える
霊媒師/サエコ
「で、次は?」
依頼者
「これで全部です…今のところは…」
友人
「ここからまた犠牲が出るらしいです…彼が言うには…」
霊媒師
「それがあなたと、彼と、これから会うもう一人の友人って事ですか」
友人
「えぇ…。」
次の友人宅へ到着する一同
ー
ワタナベ
「どうも、タカコさん」
タカコ
「ワタナベさん、そちらの方が例の……」
ワタナベ
「あぁ、凄腕の霊媒師さんだ
俺たちを助けてくださる」
霊媒師
「どうも。」
霊媒師とサエコはペコリとお辞儀をする
タカコ
「まだお茶とかご用意してなくて」
霊媒師
「いや、いいんです
すぐに場所を移動するんで」
霊媒師達が車に移動した時
依頼者が血相を変えて叫ぶ
依頼者
「また見ました!予知夢です!!
今度はあなた方二人の…」
それを聞いて驚く霊媒師達
依頼者
「サエコさんはトラックに跳ねられた拍子に川に転落して溺死…」
サエコ
「オーバーキルすぎない!?」
依頼者
「霊媒師さんは…なんかよくわからないけどなんか死んでました…」
霊媒師
「なにそれ?俺だけ適当すぎるだろ」
依頼者
「あぁ…なんてことだ…」
タカコ
「何でこの人たちまで…?」
霊媒師
「どうやらこいつは、予知夢を見た際にその時関わった者も、死のリストに入れられるって奴じゃないか」
サエコ
「そんな…」
ワタナベ
「どうにかならないのか!?」
依頼者
「ぼ、僕には何も…」
霊媒師
「とりあえず、安全そうな場所まで避難しよう
何か対策を考えるんだ、ワタナベさん、車を出してください」
ワタナベに指示を出し、車に乗り込む霊媒師達
ー
揺れる車内
依頼者
「すみません霊媒師さん…あなた達まで巻き込んでしまって…」
霊媒師
「気にするな、こんなの予想できるわけがない」
霊媒師は冷静にそう返す
サエコ
「先生…私達これからどうなるんですか…?」
霊媒師
「さぁな、だが予知夢の通りだとしたら
このままだと二人ともお陀仏だ」
しばらく道路を走行していると
前方の案内標識がグラグラと揺れる
サエコ
「依頼者さん、他に何か見ませんでしたか…?」
依頼者
「え、えーっと…」
ネジが取れ、かたむく看板
タカコ
「サエコちゃん…」
ワタナベ
「大丈夫ですよサエコさん」
霊媒師
「サエコ、あんま無理言わせるな」
剥がれた看板がワタナベの車に直撃
そのままスリップして停車する
ワタナベ
「皆さん!?大丈夫ですか!?」
後ろを振り向くと、そこには
看板によって胴体を分断された依頼者の姿が
車を降りる四人
霊媒師
「とりあえず警察を!」
警察に電話をかけてる最中に
急に頭を押さえるワタナベ
タカコとサエコは突然の出来事にパニックを起こしている
ワタナベは頭を押さえたあと、叫ぶ
ワタナベ
「先生…ッッ!!」
霊媒師
「!?」
瞬間、後続車に跳ねられる霊媒師
悲鳴をあげるタカコ
サエコ
「そんな……」
霊媒師の突然の死にショックを受けるサエコ
霊媒師がそっとサエコを抱き寄せる
霊媒師
「いい奴だった…」