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最強の霊媒師③-カース・オブ・リボン-

ある朝

グラサンの大男が霊媒師の元を訪ねてきた


依頼者

「私は主人の使いで参った、この辺りに凄腕の霊媒師がいると伺い、極秘裏に拝見しに参りました」


霊媒師

「それはどうもわざわざ

…ぜひお引き取りを」


サエコ

「おーい!」


即断る霊媒師


サエコ

「初の依頼者だよ!儲かるチャンス!歓迎しなきゃ!」


霊媒師

「うるせーな、関係ねーよ

俺引退した身だしな、つかお前もなんで当たり前のように俺の家にいるんだ、秘書ヅラすんな帰れ」


依頼者

「そう言うと思いまして…」


依頼者がゴソゴソと懐から何かを取り出す


依頼者

「これで手を打ちます」


札束を机にポンと置く依頼者


サエコ

「うぉ〜…100万円…」


霊媒師

「諭吉が束ねられている…!?」


霊媒師は目の前の札束にしばらく目を奪われる


サエコ

「それで"今回"はどんな御用件で?」


霊媒師

「おい、勝手に進めんな」


依頼者

「実は…」


依頼者は事情を説明して

霊媒師は渋々承諾し、指定された場所へと向かった


ーーー


札束を眺める霊媒師


サエコ

「すごい豪邸…やっぱり、あの依頼者さんお金持ちの方なんだ!緊張しますね!先生!」


霊媒師

「そうだなぁ、よし早速厄介になるか

じゃあな」


サエコに挨拶をして1人屋敷に入ろうと門をくぐる霊媒師


サエコ

「あ、ちょっと待ってください!」


サエコが慌てて霊媒師を呼び止める


霊媒師

「なんだよ、まだ何か用あんのか?」


サエコ

「私もご一緒します!」


霊媒師

「ダメだ帰れ、これは俺の仕事だ

お前は関係ない(学校行け)」


サエコ

「で、でも…!」


その時、門の先の扉が開き、中から依頼者が出てくる


依頼者

「お待ちしておりました、さぁこちらへ

お付きの方もどうぞ」


サエコに微笑む依頼者


霊媒師は無言でサエコを見る


サエコ

「さぁ、行きましょう先生」


ふふんと得意げな顔をするサエコ


ーーー


依頼者

「紹介します、彼女がこの屋敷の〜」


令嬢の紹介をする依頼者


サエコ

「お嬢様…!」


興奮気味のサエコに鬱陶しそうな顔をする霊媒師


依頼者

「ほらお嬢様、ご挨拶を」


依頼者が彼女の肩に手を触れた瞬間


令嬢

「納得いきませんわ!」


令嬢が突然大きな声で霊媒師達を拒絶する


令嬢

「どうして私があなた達のような庶民に

助けを乞わなければいけないの?」


令嬢

「そんな貧乏で、埃まみれ

それに…何これ…!死体臭い…!」


思わず鼻をつまむ令嬢


サエコ

「わかります」


霊媒師

「帰っていいか」


令嬢

「私は高貴な一族の家系ですわよ

あなた達とは違うの」


依頼人

「お嬢様、そう言わないでください

主人も心配であなたの事を…」


令嬢

「ふん、お父様は過干渉なのですわ

私はこの通りピンピンしてますもの

呪いなんて迷信に決まっています!!」 


令嬢は腰に手を当て、フンッてする


霊媒師

「…で、例のものは?」


依頼者

「あぁ、はい

まずは部屋にご案内を

お嬢様?」


令嬢

「こんな不潔な方をお部屋に招きたくありません!」


依頼者

「お嬢様ッッ!!」


依頼者が怒ると令嬢はビクッと体を硬直させ、汗を流す


依頼者

「どうもすみません…さぁどうぞ

お嬢様についていってください」


ーーー


サエコ

「わー…すごーい…!」


令嬢の部屋に興奮するサエコ

赤いベッドに近づくサエコを静止する令嬢


令嬢

「お触り厳禁ですわ、汚い手で触れないで」


霊媒師

「それで?例のリボンは?」  


ため息を吐きながら令嬢に尋ねる霊媒師


令嬢は装飾が施された箱を持ってきて中身を見せる

そこにはピンク色の煌びやかなリボンが入っていた


サエコ

「わぁ、かわいい」


霊媒師

「これが呪いのリボン?」


令嬢

「呪いですって!?なんと失礼な!!

これは高貴なリボンですわよ!

まったく庶民はこれだから」


令嬢

「この輝き、香り、フォルム

どれをとっても見劣りしない

これこそまさしく究極の美ですわ

センスのないあなた達庶民にはわからないでしょうけど」


霊媒師

「これのせいで命を失うやつが続出してるらしいが?」


「ふん、そんなの嘘に決まっています

たしかにこのリボンを持った人は

謎の死を遂げているけれどそれは偶然ですわ

こんな美しいリボンのどこに

そんな不吉な物が宿ると言うのです?」


「ほら見てご覧なさい、眺めるだけで心が洗われますわ」


令嬢はうっとりとした表情でリボンを眺める


ーーー


依頼者

「私は主人から使用人として雇われておりまして

家事洗濯からお嬢様の教育係も任されているのです」


「主人は骨董集めが趣味で

あのリボンも元々骨董屋で手に入れた古い品物で

お嬢様の誕生日プレゼントとして用意したもの」


「お嬢様はプライドが高い故、私は受け取らないだろうと思っていたのですが、意外にも反応は良く」


依頼者

「お嬢様はそのリボンにすっかり魅せられてしまい、母の形見であるあの箱に入れて片時も手を離さなくなりました。

そのリボンが実は曰く付きのものだったと知ったのも

つい最近でして…」


サエコ

「災いを呼ぶリボン…」


霊媒師

「ホイホイ系の呪いか、厄介だな」


サエコ

「(ホイホイ系…?)」


依頼者

「被害者は全員女性、資料によれば

女性に裏切られた男の

怨念が込められているとか」


「呪いの類など信じない家系だったのですが

実際に資料が存在する

確かな機関から入手しました

あれは本物だ」


「お嬢様はリボンに取り憑かれてしまった…」


「お願いです!お嬢様を!お嬢様を助けてやってください!呪いから解放してくださーーー」


「何を話しているの?」


令嬢が冷たい眼差しで依頼者を睨む


依頼者

「お嬢様…!」


令嬢

「お父様もあなたもどうかしてますわ!

呪いなどあるはずがない!!私が証明して見せます!!」


そう言って令嬢は自分の部屋へ戻っていく



令嬢

「何が呪いよ!みんなあのリボンの価値をわかっていないんだわ!見てよこの輝き、あぁ…美しい」


令嬢はリボンをつける


霊媒師

「おいアバズレ、いい加減にーーー」


令嬢の頭上に落下するシャンデリア


霊媒師は咄嗟に走り出す


ガシャーンッッッと大きな音が

屋敷内に響き渡る


ーーー


令嬢に馬乗りになる霊媒師


霊媒師

「無事か?」


令嬢は大きな悲鳴をあげる


令嬢

「なんと下品な!ケダモノ!野獣!!

私は高貴ですのよ!?庶民如きが図々しくも

その…う、馬乗りになるなんて!!」


顔を真っ赤にして怒る令嬢


サエコ

「先生!無事ですか!!」


使用人

「お嬢様!!」


令嬢

「使用人!この者を捕らえてください!

私に…私に…如何わしいことを…!!」


霊媒師

「うるせ」


使用人

「お嬢様!!彼はあなたをお守りしようと!!」


令嬢

「これだから庶民など信じたくなかったのです!

貧乏で下劣で下等な身分にも関わらず

対等だと思い込むその図々しさが!!」


使用人

「お嬢様ッッ!!」


令嬢

「ッッ!!」


使用人が令嬢の頬を叩く


霊媒師/サエコ

「!!」


使用人

「いい加減にしてください!!

お父上の言う高貴とは人の上に立ち威張ることではありません

どっちが下劣か、よくお考えになってください!」


サエコ

「シャンデリアが…」


床に散らばるシャンデリアの残骸を見て

令嬢もついに観念する


令嬢

「…わかりましたわ」


ムスッとしながらリボンに手を置く令嬢


サエコ

「これからどうします?先生」


霊媒師

「とりあえずリボン霊視して、早いとこ燃やす」


サエコ

「も、燃やすんですか…?」


霊媒師とサエコが話を交わすその後ろで

リボンの紐を一生懸命引っ張る令嬢


霊媒師

「おいアバ…お嬢様、リボンをこっちに」


令嬢は振り向く


令嬢

「どうしよう…リボンが、、取れな…」


一同

「!?」


無数の黒い手が令嬢を包み

壁の中へと吸い込む


サエコ

「せ、先生ッ!お嬢様が…!!

先せ…ッ!?」


霊媒師は目を閉じながら呪文を唱える


「ハッッ!!」


霊媒師が壁に向けて指を指すと

黒い空間が出現


「こいつは冥界へ続く穴だ

あの女はこの先にいる、ちょっと待ってろ」


そう言って霊媒師は穴へと消えていった。


ーーー


木の上にぶら下がる大きな鳥籠

その中に閉じ込められた令嬢


「美しい…」


令嬢

「誰ですの…?」


「君の愛する者さ」


鳥籠を見上げる霊媒師


「愛してるよ」


令嬢

「んん…(身体が…動きませんわ…)」


男が令嬢にキスをしようとする


霊媒師

「お邪魔か?」


霊媒師が鳥籠内に侵入

パイプレンチを片手に男を牽制する


「ーー!!」


令嬢

「庶民…」


男は霊媒師を冷たい眼差しで睨みつけ

静かにつぶやく


「僕は君のことを知っている…

他人の愛に土足で踏み込む卑しい男だ」


霊媒師

「まぁ…そういうことにしとく」


霊媒師は呆れながら除霊に集中する


「彼女は渡さないぞ

彼女は私のそばにいてくれた

私だけを愛してくれていたんだ!」


霊媒師

「そいつが愛してたのはリボンだ

お前じゃない」


「黙れ!!人の恋路の邪魔をするな!!」


霊媒師

「待ってろ、今連れて帰ってやる」


令嬢にそう叫び、霊媒師は男目掛けてパイプレンチを振り下ろした


「ぐぁぁっ!くそぉ!よくもぉぉぉ!!」


男は頭を押さえながら霊媒師に反撃をする


霊媒師の体がプルプルと震え出し

次の瞬間、服だけを残して体が弾け飛ぶ


辺りに散らばる肉片と雨のように降り注ぐ血


その光景を見て令嬢は怯えた顔をする


「これで邪魔者はいなくなった…

さぁ続きを始めようか」


男が令嬢に近づいたその時


霊媒師

「除霊完了」


復活した霊媒師に背後から頭部へ思いっきりパイプレンチを叩き込まれて男は断末魔を上げながら

消滅


令嬢は驚いた表情で霊媒師を静かに見つめる


霊媒師

「出るぞ、まだ完全に消えたわけじゃない

ここは奴のテリトリーだ」


霊媒師は令嬢を横抱きで抱え、階段を駆け降りていく


「オォォォォオオォ…!!」


2人の行手を阻むかのように

地面から無数の黒い手が伸びる


令嬢が「これは…」とつぶやくと

霊媒師はコクッとうなずき

「リボンに魅せられた者たちの

成れの果てだ」と答える


亡者

「オォォォォオオォ…!!」


浅黒い肌、白い目をした亡者が恨めしそうに叫ぶ


「アイツはお前を(あの世へ)引きずり込もうとしている

コイツらはその手助けをしているんだ

道連れにするために」


霊媒師はそう言って懐から水晶を取り出し

それを掲げると亡者達が退いていく


「アレが出口だ!しっかり掴まれ!」


霊媒師は光り輝く穴を指差し

令嬢を抱えてその穴に飛び込んだ


ーーー


屋敷の庭へと出る霊媒師


令嬢

「……」


霊媒師

「ふぅ、どうにか出てこれたな

間に合ってよかった」


へたり込む令嬢に「立てるか?」と声をかける霊媒師


令嬢は静かに頷き、立ち上がろうとする


令嬢

「!」


令嬢はふと落ちてるリボンを拾い上げ

悲しそうな顔をしながらリボンを見つめる


令嬢

「…彼は寂しかったのですわ

ずっと愛を求めて…

私もお母様がいなくなって

お父様も多忙で…寂しくて…」


「先生〜!!」「お嬢様〜!!」


令嬢を無事救出した霊媒師。


その後、リボンはお焚き上げ供養をして

この世から消滅。


霊媒師は依頼者から感謝されたあと、屋敷を後にした。


ーーー


使用人

「申し訳ございません!教育係とは言えお嬢様に手をあげてしまいーー」


屋敷の主

「なに、気にすることはない

あいつもいい薬になっただろう

本当は私が叱ってやらなければならない事だ

お前には苦労をかける」


使用人

「ご主人様…!」


屋敷の主とやりとりを交わす使用人


屋敷の主

「しかし、その霊媒師

確かな実力を備えてるようだな

今度ぜひまた礼をしたい」


ーーー


屋敷の庭でペットの餌やりをする令嬢


令嬢

「セバスチャン、エリザベス

ご飯ですわよ」


ペットが餌を食べる姿を見ながら

令嬢はポケ〜っと空を見上げた



おしまい



しばらく日が経った頃

皿洗いをする霊媒師


ピンポーンとチャイムが鳴る


霊媒師

「はいはいはい」


ガチャっとドアを開くと

そこには1人の若い女性が立っていた


霊媒師は静かに女性を部屋に招くーーー。



最強の霊媒師③(完)

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