合流する銀狼族と悪魔族
「ゲノムの魔力を辿ってみれば。シロは何をしているの?」
慣れているのか、急に現れた黒髪の少女に、銀色の少女、シロは驚きもせず、悲しそうな瞳で地面を見つめる。
「あぁ、ゲヘナですか。私のお肉が持ち去られてしまったのですよぅ」
ゲノムの魔力を辿り転移魔術で移動する途中、単角の黒髪、ゲヘナは地面にのの字を描き続けるシロを見つけ、声を掛けたのだ。
「······ゲノムはどこ?」
辺り一面に描かれたのの字に興味を示さず、ゲヘナは問う。
「あっちの街なのです。真っ白な、大きな街なのです」
「わかった。ん? なんか騒がしい」
「なんかさっきからうるさいのですよ。少し静かにして欲しいのです」
「まあいい。行く」
「待つのです。私達が街に入れば酷いことされるのです」
「······むぅ」
魔力を灯し、転移の準備をするゲヘナを、シロは止める。
「そうすればゲノムにも迷惑がかかるのです。また怒って大変な目に合うのですよ」
「むぅむぅ」
彼女達は自分たちのせいで彼の魔術が公になってしまったことを後悔していた。さらにそれだけではなく、彼は大陸中から狙われる立場になってしまった。
「だから今は待ての時間なのです。ゲヘナも待っていればゲノムから沢山ペロペロされるのですよ」
「ゲノムから······」
想像し、彼女の頬に微かに赤みが増す。
「······分かった。なら、食料を調達」
「承知したのです! 狩りならおまかせなのですよ」
二人は森の奥へ掛けて行った。
☆
「どうですか!? 私の獲物の方が大きいのです!」
「私の方が多い。先に大漁と言ったのはシロ。数で勝負」
「むむむ、ゲヘナは屁理屈ばっかり捏ねるのです。捏ねるならお団子にしてください」
暗くなり辺りが見えない森の前で、二人の少女が言い争いをしていた。
ゲヘナとシロである。
『あら、じゃあ肉団子のスープはどうかしら? 夜も更けてきたし暖まるわよ』
そんな中、急に飛び出す太い声。
「この声は、ゴル姉なのです。匂いはしませんが、ゴル姉も来たですか?」
キョロキョロと辺りを見渡すが、彼女の大きな体は見つけられない。
『ここよ、こ、こ』
代わりに声を出していたのはゲヘナの持つ薄い板。板には「ゴル姉」と表示されていて、確かに彼女の声がした。
「私の魔術連絡機。魔連だと嫌な組織と被るから、ケータイ。携帯出来るから」
「連絡用魔道具ですか? ならばそれでゲノムに私達が近くに居ることを伝えばいいです」
妙に冴えたことを言うシロに、ゲノムは口をへの字に歪める。
「むり。これは二台ないと効果をは持たない。ゲノムには渡す前だった」
「肝心な所で役に立たないゲヘナなのですよ」
「うるさい」
『まあまあ。きっと彼ならピンピンして戻ってくるわ。それは私より、あなた達の方が詳しいんじゃなくて?』
「「············」」
ゴル姉の言葉に二人は顔を見合わせる。その表情は安堵とは掛け離れた複雑なものだったが。
『いい女は待つのも上手なのよ。今は肉団子スープを作っていましょう! 私の言う通りにね』
「「はい(なのです)」」