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闇夜に輝く幻想魔術~幻術師は世界から狙われている様です~  作者: 流れる蛍
【第二章】愛と泪の都
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噛み合わぬ戦い

ゴル姉の案内で通された場所は、光り輝くネオンが立ち並ぶ街並みとはうってかわって、物語に出てきそうな白くシンプルで美しい建物だった。


この建物はこの都の最奥に位置していて、建物とおなじ色の塀があり、城門にはいなかった門番が立っている。

スーツ姿の腰に細く長い剣を刺してあり、違和感を拭えない。


その建物に感嘆のため息をする一同は、ゴル姉の顔パスにより、簡単に中に入る。

そして再び感嘆の息を吐くのだった。


「······凄い」

「お城なのです!」

「ここって場所的に前来たところじゃん。かなり綺麗になってるけど」

「なんとまあ······」

「私、ここに来てから何度驚いたことでしょう······」

「素晴らしい調度品の数々です」


内部の壁も建物と同様の白を基調とした色で統一されていた。


シロはお城の様だと言ったが、大きさはそれほど広くない。

しかし、高い天井にシャンデリア、鬱陶しいと感じられない適度な数の彫像や剥製、調度品。

アクセントとして深紅の絨毯が広がり、白い壁と相まって一層高級感を際立たせている。

ここは玄関ホールの為、招いた者の第一印象を良くするためだろう。


「ここは王族の方々に泊まって頂く為に造られた迎賓館よ。こないだ完成したばかりだから、まだ泊まる人はいないから、好きにていいわ。部屋も準備してあるから、それぞれ好きに割り振ってね」


ゴル姉の言葉に、シロが手を上げる。


「なら、探検するのです!」

「私もついて行く」

「あら、いいですわね。お姉様も御一緒しません?」

「ええ、行きましょう。ゴル姉様、案内はお願い出来ますの?」


ラピスの言葉に、ゴル姉は申し訳なさそうに頭を下げる。


「ごめんなさい。御一緒したいのは山々なんですが、私は少し仕事があるんです。失礼は承知ですが、迎賓館にはいますので、お食事の時間には呼びに行きますので」

「あら、残念ですわ。なら、シロさん、ゲヘナさん。私たちと一緒に回りましょう。ジークはどうするの?」

「············私は少々ゲノムさんとお話が」


ジークは横目でシロとゲヘナに引っ張られるゲノムを見る。


「え、僕? 僕は少しの間、横になろうと思ったんだけど。なんか寝不足でなんかテンションがおかしくなっててさ」

「申し訳御座いません。お時間は取らせませんので」

「············ああ、なるほどね。うんうん。分かった! 付き合うよ」

「ありがとうございます」


ゲノムは物知り顔で頷き、ジークの話を聞くことにした。

彼は、ジークが男性用の街道を下見に街に出ようとしていると考えたのだ。「やっぱり気が合うな」等と呟いている。


「ゲノム、一緒に来ないのですか?」

「ごめんね、少し重要な話なんだ」

「なら、私がゲノムについて行く」

「それも駄目なんだ。ね、ジーク?」


シロとゲヘナに詰め寄られながらもゲノムは首を振り、優しく二人を突き放した。


「え、ええ。······? 確かに私は二人だけの方がいいですが······」

ジークはゲノムの目配せに、困惑しながら頷いた。


「ですので、お嬢様方。私は少しの間席を外します。何か御座いましたらお呼びください。瞬時に参りますので」

「あら、分かったわ。お食事までには戻るのよ?」

「むふ······こほん。ジーク、ごゆっくりなさって下さいな」


ゲヘナとシロは名残惜しそうにしながらも、四人は階段を登って行った。二階から探索する様だ。

ゴル姉は一階の通路を進んで行った。


「では、ゲノムさん。庭で」

「庭? ああ、今行くわけじゃ無いんだ」

「え? ええ。私はお嬢様方と過度に離れる訳には行きませんので。ですが室内だとお嬢様方に聞かれる場合がありますから」

「なるほど、その為の作戦会議ね! 了解!」

「作戦? ええ。よく分かりませんが、その通りです」


どこか楽しそうはゲノムと、無表情ながらどこか緊張するジークの二人は、揃って迎賓館を出ていった。





迎賓館の庭は、芝生と小さな花が咲くだけの少し寂しげな庭だった。

木は植えてあるが、植えたばかりなのだろう、小さな苗木があるばかりだ。


そこには一脚のベンチがあるが、誰も座っておらず、二人の男は向かい合って立っていた。


ゲノムは眠たげに無防備で立ち尽くし、ジークは腰を軽く落として戦闘態勢だ。


「······ねえジーク。そんなに緊張しなくても、僕は君の主人にチクッたりしないよ」

「······流石の余裕ですね。チクるの意味は分かりかねますが、世界に狙われ続けられながら生き延びているだけはあります」


「······? ああ、僕が幻術師って知ってたんだ」

「ええ。名前を聞いてもしやと思いました。私はお嬢様方の脅威となる可能性のある者は全て記憶しておりますので」

「脅威? 大袈裟だな。そんなにバレるのが嫌なら僕一人で行くけど」

「先手を譲るつもりはありません!」

「なら、一緒に行こうよ」

「············私の速度に付いて行けると······?」

「意外に凄いやる気だね。······そんなの、やってみないと分からないよ」

「······ならば、見せてみて下さい」

「分かった。······全力を出すのは久しぶりだ」


そして二人は同時に駆け出す。


ジークは消えたと思わせる速度でゲノムの元へ。

ゲノムは迎賓館の外へ。


「っ!? この一撃を躱すとは」

「っ!? あっぶなあ。それって反則じゃない?」


ゲノムはジークの風圧で飛ばされ尻もちをついていた。

ジークが駆け出した場所の地面は大きく抉れ、彼が恐ろしい力で地面を蹴っていたのか分かる。


「その様な言葉は聞き慣れております」

「······成程。僕は君の事を勘違いしていたみたいだ。もっと真っ直ぐな人だと思ってたよ」

「······ほう。私のフェイントすら見抜くとは。これは本当に一筋縄では参りませんね」

「······そう言うルールね。妨害アリなら初めに言って欲しいよ。全く」


そこで初めてゲノムは魔術を使う。


「ジーク、何をしているのですかっ」

「ジーク、食事の準備はまだですの?」


「っ! お嬢様方!」

「スキあり!」


ジークの耳に入って来た二人の主人の声に彼は反応してしまう。

その隙にゲノムは再び走り出す。迎賓館の外へ向かって。


「っ!? 卑怯な!! これが貴方の戦い方ですか!」

「それを君が言う!?」


ジークはゲノムに向かって拳を振り下ろすが、当たったかと思われた拳はすり抜けてしまう。


「くっ、幻術がこれ程厄介とは······っ」

「うっわぁ、あれ当たったら死んじゃうよ」

「後ろかっ!?」

「残念、ハズレ」


ジークの振り返り様に振るった蹴りはまたもや空振ってしまう。


その後も足音で、声で、幻で翻弄するゲノムに、ジークは苦戦する。


魔力が減り、次第に息を切らせるジーク。


「もう止めなって。僕は幻術と魔力にだけは自信あるんだ。これ以上は無益だよ」

「し、しかし、私はお嬢様方に害成す者を放置する訳には······っ!」

「だから、チクらないって! こうしている間も時間は減っていくんだ」

「っ! 何かを企んでいるのですか!?」

「それは君だろ、ジーク! 君から持ちかけた話じゃないか!」

「何を世迷言をっ! 私がお嬢様方を裏切る訳が無い!」

「世迷言はどっちだよ! 早くしないと探検を終えた皆が帰ってくる!」

「つまり貴方にはタイムリミットがあるのですね。それまで私が君を足止めすればっ」

「え? え? 何だか話が噛み合って無い気がする! ちょ、ストップ!」

「待ちません。この命が尽きようとも、お嬢様方への御恩をお返しする!」


ジークは疲労が蓄積する足に鞭打ち、駆け出す。

地面が陥没し、神速の蹴りが放たれる。

ゲノムは寝不足と動揺から、幻術を発動出来なかった。

ジークの足が目を瞑るゲノムを捉える。


だが、命中するかと思われたその蹴りは、硬い何かに当たり、弾け飛ぶ。


止めないか(ヤメナイカ)


ゲノムを庇うかの様に立つ、白髪頭の男。

片手に分厚い本を持ち、胸元を大きく開いたスーツを着ている。

剥き出しの胸元からは鍛えられた胸筋と、腹筋が見える。


男は本を持つ手とは別の手で持つ黒い槍で、ジークの蹴りを受け止めたのだ。


「君達は何やら誤解がある様だ。少しそこのベンチで話し合おうじゃないか」

「あ、君は······?」


その男は姿は多少変わっていたが、嘗て最強の槍使いて言われた、魔槍のストラスだった。

ここでようやく真面なバトル展開でした。

直ぐに終わりましたが(笑)


ジークの足を止めた男のルビはミスではありません。

元ネタを知らない方は一文字だけ変えて検索してみよう!

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