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闇夜に輝く幻想魔術~幻術師は世界から狙われている様です~  作者: 流れる蛍
【第一章】夕闇に輝く幻想魔術
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グランリノに到着

先んじてクライマックス編を書き終わり、気持ちが逸っております( ̄▽ ̄;)

「だからごめんって」

「許さない」

「嘘ついたのは謝るから。ね?」

「駄目。無理」

「扉に耳つけて聞いていただけだって」

「殺す」

「あ、違う。ユウとの通話が終わったら部屋に戻ったから」

「······本当?」

「っ! 本当本当」

「嘘くさい」

「いや、本当だって。信じて」

「添い寝一回」

「え?」

「添い寝一回してくれれば許す」

「うん! いくらでもするよ!」

「一回でいい。約束」

「うん。約束ね」


「······なんだか、ゲヘナが怖いのです」

「そうね。勘違いを棚に上げて、自分に有利な条件を突きつけたわね。自爆したのは自分なのに」

「見てください。ゲヘナ、にやけてますよ」

「ついでに抱きしめられている状況を楽しんでるわね」

「切り替えが早すぎるのです!」

「女ってそんなものよ。シロちゃんにもいずれ分かるわ」

「同い年なのです! あ、こっち見てピースしたのです! 見てください、ピース!」





中央諸国魔術師連合の面々は、馬車で目的地へ向かっていた。

「まだ着かないのでしょうか」

「もう少しですよ。明日には着くでしょう」

「最速の馬車を使って五日。あまり良い休暇とは言えませんな」

「ガタガタと落ち着きませんし、馬はともかく、この馬車は粗悪品では? 広いのはいいのですが、隙間風が······」

「仕方ないでしょう。これしか用意できなかったと泣き付かれてしまったのですから。急に言い渡したのは我々。寛大な心で許してあげましょう」


彼らは無駄に装飾品の付いた、大きな馬車に乗っていた。数人なら中で寝ることもできる程中は広い。ただし至る所に傷があり、高速で進む馬車は走る度、揺れる度にどこかが軋む音がしている。


「念の為、情報を整理しておきませんか?」

「確かに。この時間は有意義に使うべきですな」

「ふむ。では我々がグランリノに着いてから、何するかですな」

「やはり、宿を探すのが一番でしょうな。グランリノには評判の良い宿があると聞きます。なんでも、強面の店主がいるという」

「ほう。冒険者あがりですかな。ならばセキュリティも万全と言うもの。ナンバーズたる我々に相応しい」


五人は口々に話し合う。本来の目的は脱走した解析班を探すのと、幻術師を探す事なのだが、既に彼らの頭には存在しておらず、どの温泉に入るとか、観光名所はどこか等を話し合っていた。


「思ったのですが、持ち出す魔道具はこれだけで良かったのですか?」

「我々は無数の攻撃魔術を習得している。防御の魔術だけあれば充分と言うもの。一回防げば壊れてしまうが、大丈夫でしょう」

「これは念の為のものです。魔力を最大に込めれば致命傷の一撃すら防げる。まあ、無用の用心でしょうがね」

「それに、我々にはこれがある。東の帝国から買い付けた銃という兵器だ。魔力を失ってもこれさえあれば攻撃手段に困ることは無い」


彼らは懐から小さな鉄の塊を取り出し、不敵に笑う。

東の帝国から高値で買った銃と言う武器だ。

実はこれは、東の帝国ではまず使う人はいない、劣化品である。魔術による火力向上が無い、火薬のみで発射する骨董品。


さらに、彼らが防御の魔道具しか持てなかったのには理由がある。

元々魔連にはこの馬車や、魔道具が多く用意されていた。だが、内々の横領を誤魔化す為、全て売ってしまっていた。

魔道具は高く売れるので、とっくに無い。五人が持っているのは、彼らが個人的に保管していた物だ。彼らは他の魔道具を探しすらしていなかったが。


五人が乗っているのは、重要な部品に傷がある為、売ることが出来なかった馬車。外から見れば装飾品が擦れ、今にも剥がれ落ちそうだ。むしろここまで来られた事自体が奇跡であった。


「······む? 何やら妙な音がしましたが」

「そうですか? 私は聞こえませんでしたが」

「そもそも私は馬車に乗ったことがない。こう言う物なのでは?」

「ははは、私もですよ。ずっと研究一筋でしたからな」

「おお、貴方もですか。······そう言えば、この馬車どうやって止まるので?」


「「「「··················」」」」


「まあ、馬は賢いと言いますので、勝手に止まるでしょう」

「馬ですからな。疲れたら止まるでしょう」

「しかしかれこれずっと走り続けてますが」

「実際西に進んでますからな。この馬は優秀だ。問題ないでしょう」

「そうですな。杞憂でしたか」


彼らは知らなかった。

馬車には御者という者が必要なのだと。

彼らが乗る馬車を引くのは、魔物の馬だと。


魔物の馬は止まらない。生命力が非常に高いので、通常の馬より何倍も長い間走り続ける事が出来る。

しかし、ストレスが溜まると気性が荒くなる。例えば、食事を与えなかったり、休ませなかったり。


さらに、馬は西に真っ直ぐ走ってはいなかった。

出発する方向が北にズレていたせいで、到着地点を放物線を描くように遠回りしていた。


馬の走る速度が徐々に上がり、悲鳴を上げる馬車。断末魔は近い。

彼らが目的地に着くのが早いか、馬車が壊れるのが早いか。はたまた馬がキレるのが早いか。


走る棺桶は五人を運ぶ。


彼らの運命は神のみぞ知る。





「そんな訳でやって来ました、グランリノ」

「ユウ後で説教。なんでゲノムが魔道具持ってる」

「まだ入ってないのです。城門の前なのですよ?」


三人はグランリノの城門前に転移していた。

ゲヘナは協力して欲しいとシロと共に転移し、ゲノムはそれを追って、魔道具を使って同じ場所に転移したのだ。

場所は以前シロとゲヘナはが野宿した森の前。


ゴル姉はもしもの時、やる事があるからとお留守番だ。


笑顔のゲノム。

項垂れるゲヘナ。

巻き込まれたシロ。


反応は三者三様だ。

そんな三人は黒いローブを羽織っている。


「久々に着たのです。ゲノムのローブ」

「そう言えば、こないだ僕を迎えに来た時も着てなかったね。ゲヘナは着てたけど」

「あの時シロは慌てて出て行った。誰も止められなかった」

「恥ずかしいのです。気が気でなかったのですよ」

「私達は街に入れない。このローブの魔道具で、ゲノムの幻術で姿を変えないと騒ぎになる」

「だから街に入れなかったのです。街からゲノムの匂いがして生殺しだったのですよ······」

「あー······、あの時はシロが探しやすい様にと思って、お風呂入らなかったからね。せめて着るものだけは綺麗にしておいたけど。······ゲヘナにも見つけられる様に無駄に沢山魔術使ったし」

「どうせ、人をからかうのが楽しくなって連発しただけ」

「ゲヘナ、まだ怒ってる?」

「どうせ味をしめただけなのですよ。怒った振りすればゲノムが見てくれるからって」

「シロ!」

「つーん、なのです」


「まあまあ、じゃあ二人ともローブを着てね。············面白い物が見れるから」

「「············?」」




訝しげな目を向ける二人を先導するようにゲノムが歩き出す。

今二人はゲノムのローブにより、姿が変わっている。

シロは体毛を黒くし、ゲヘナは角を見えなくしている。


同じ背丈であることもあり、まるで双子の様だ。見える姿は獣人族と人間族と違いはあるが。


城門には門番が立っているが、ゲノムの姿を見ると最敬礼で迎える。


「こ、これはゲノム殿! お帰りなさいませ!」


「え、殿? ゲノム、何をした?」

「ゲノム凄いのです。流石なのです」


二人の反応を見たゲノムは、胸を張り、極めてクールに門番に返事をする。


「や。この近くを通ってね」

「は。グランリノの英雄殿が帰還されるならば、事前にお教え下さい。ご連絡頂ければ、相応の出迎えをしましたのに!」

「いいんだ。······僕は目立つのは好きじゃない」

「実に謙虚でいらっしゃる。······後ろの御二方は?」

門番は後ろに控える二人を見る。獣人族はこの辺りでは珍しいので、シロを見た時は驚いていたが、それだけだ。


「妻なのです!」

「違う。妻は私。こっちは妾」

「あ、ゲヘナ! 酷いのです!」

「ははは。元気なお二人ですね。奥方様がお二人とは羨ましいですな。しかし英雄色を好むというのは本当だった様で。それもお若く可愛らしい」


「······違うよ。僕の妹とペットだ」

「げ、ゲノム!」

「妹············」

ショックを受ける二人と、引き気味の門番。しかしゲノムは気にしない。むしろ超真面目に言っていた。


「ぺ、ペットですか? ははは、ゲノム殿は冗談がお得意のようで。あ、リッツ殿をお呼びしましょうか? 親友だと聞いておりますが」

「いや、いいよ。僕から会いに行く。だから、入っていい?」

「そうですか! 本来手続きがありますが、こちらでやっておきます! どうぞ、良き滞在を!」

「ありがとう」


そうしてゲノムは入国する。

奇妙なやり取りに疑問符を大量に浮かべる二人を引き連れながら。


ゲノムは綺麗好きです。

最初にグランリノで小汚かったのはシロに見つけて貰いやすくする為でした。

かなり精神的にキツかったみたいです。

ストレスからか王女を弄ってましたからね。

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