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闇夜に輝く幻想魔術~幻術師は世界から狙われている様です~  作者: 流れる蛍
【第一章】夕闇に輝く幻想魔術
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【閑話】シロとゲヘナ

急遽話を差し込みます。

「ゲヘナって、今から僕たちを村まで送ることってできる?」

グランリノでの帰り道、ゲノムは合流した、捻角で単角の悪魔族の少女、ゲヘナに尋ねる。

帰り際グランリノで貰った素材はゲヘナの時空空間に収納されている。


「無理。実は凄く疲れてる。おんぶして」

「はいはい」


ゲヘナが扱う魔術は時空魔術といい、思い浮かべた場所への転移や、異次元に物を収納出来たりする便利な魔術だ。

ゲノムの幻術程ではないが、悪魔族は希少な魔術が発言しやすいといった特徴がある。当然デメリットも大きいが。

彼女の場合は魔術発動後、酷い疲労感に襲われる。それは、規模が大きいほど反動は大きくなる。


「方角はこっちでいいの?」

ゲヘナをおんぶしながらゲノムはもう一人の少女に問う。

その間背おられているゲヘナは必死に胸を擦りつけているが、ゲノムは気にしない。

彼女の胸が小さいからではなく、ゲノムは彼女達のことを家族としてしか認識していなかった。


「はいなのです。ずっと真っ直ぐなのですよ」

ゲノムに答える少女は銀狼族のシロ。

銀狼族は過去の戦争で酷い行いをし、長い年月が経った今でも迫害されている種族だ。


最も彼女は気にしていないが。


「多分、このまま一ヶ月歩き続ければ森に到着するのです」

「え、ちょっと待って。一ヶ月?」

「はい。私頑張りました!」

「僕はそんなに遠くに飛ばされたのか······」

「ユウの実験に巻き込まれたと聞いている」

「うん。珍しく僕を呼び出したと思ったら、いきなりね。大変だったよ」


ゲヘナの言葉にゲノムは当時の事を思い出す。

彼の研究所に着くなり「フハハ、ゲノムよ。そこの刻印の上に立つがよい」と半ば無理やり転移魔術が刻印された床に立たされ、グランリノ周辺へ飛ばされたのだ。


「本当、無事で良かった」

「シロはゲノムは無事だって信じていたのです!」

「良く言う。マキナが事故の事を伝えると泣き出したくせに」


マキナとは、ゲノムを転移したユウと言う男と一緒に住んでいる女性の事だ。


「ぐ、ゲヘナだって涙目になっていたのです! 」

「なってない。私が連れてきたユウを殺そうとしたくせに」

「それはゲヘナではないですか!」

「······君達が仲良いのは分かったから、どこか休める場所を探そう?」


言い合いが止まらなくなった二人の間に、ゲノムは口を挟み無理矢理止めさせる。このままでは甲高いシロの声で耳が痛くなるのだ。


「······あっちに小さな村が見える」

「あ、本当なのです。沢山の人の匂いがするのです」

ゲヘナが魔術で、シロが匂いで村の存在を発見する。

「建物が粗末な村。でも村人の体つきが変」

「んー······大体五十人くらいでしょうか。魔物に襲われて逃げてきたって感じでも無いのです」


「この辺りは魔物が少ないって聞いてるからな。盗賊とかの方が信憑性あるね。とりあえず、あそこにお邪魔させて貰おう」

「はいなのです!」

「待って」


飛び出そうとするシロの襟首をゲヘナがつかみ、シロは女の子らしからぬ声で泣いた。

「何するのですか!」

「シロ、自分の姿を確認。ゲノムのローブは?」

「そう言えば、忘れてきたのでした······。私はお留守番ですか?」

「うん。私とゲノムは一緒に寝る」

「いや寝ないよ。ほら、僕のローブを貸してあげるから」


ゲノムは自分のローブをシロに被せた。

このローブも、ゲヘナが来ているローブもどちらもゲノムが作った魔道具である。

グランリノで彼が作った魔道具より精密な刻印が施されている、姿を変える事が出来る魔道具だ。

シロとゲヘナはどちらも世間体が悪い種族なので、彼のローブを身につけていないと人前に出ることが出来ない。


「はすぅ。ゲノムの匂いなのです」

「シロ、没収。私のとチェンジ」

「これは私が貰ったのです。ゲノムが返してって言っても返さないのです!」

「いや、貸しただけ······」

「違う、私の。ほら、交換して。私の方が姉。姉の言うことは絶対」

「駄目なのでーす。私のでーす!」

「とりあえず、早く村に行こうよ······。僕、お風呂に入りたい······」


ゲノムはシロに見つけて貰うため、お風呂や水浴びを我慢していた。


「ほら見てよ。髪だってボサボサだし、肌はシロに舐められて汚れは無いけど匂いが」

「シロ臭い」

「私は臭くないのです! ゲノムから私の匂いがしていい気分なのです。聞いてますか!?」

そうして一行は近くの村を目指すことにした。



「申し訳ありません。この村は最近できたばかりで······旅の方をお泊めする場所がないんです」


村に入ると、一人の老人がやって来てゲノム達を迎え出た。


「大丈夫大丈夫。屋根がある場所さえあれば僕らはいいんで」

ゲノムの言葉に老人は「恐縮です」と頭を下げた。


「あ、申し遅れました。私、この村の代表を務めております、ザイルと申します」

「あ、僕はゲノムです。こっちの黒髪の獣人族はシロ、同じく黒髪の人間族はゲヘナです」

現在ゲノムのローブによってシロは髪と尻尾を黒色に、ゲヘナは角を隠している。


「ほう、獣人族とは珍しい。南の出身ですかな?」

「ええ、まあ······」

「それに、そちらの女の子も可愛らしい。見ての通りこの村は男性が多く······良かったらどちらか一人でも我らの村で伴侶を見つけられては?」

「ははは、ご冗談を」

「「············」」


シロとゲヘナはゲノムの後ろにくっついたまま一言も話していない。

「ふむ。冗談のつもりではないのですが······」

「いえ、冗談と言うことにしておきます。ところで、この村に湯浴みが出来る場所はありませんか? 無ければ水浴びでも」

「申し訳ない。先も言いましたが、この村はまだ出来たばかりで井戸すら掘っていないのですよ。水浴びでしたら少し離れた所に沢がありますが」

「そうですか。ではそちらで水浴びをさせて頂きます」

「その前に、寝泊まりできる場所へ案内しましょう。馬小屋で申し訳ないのですが」

「あ、いえ大丈夫です。よろしくお願いします」


ゲノムはお礼を言い、ザイルと共に村の中を歩き出した。

後ろからシロとゲヘナがゲノムの後に続く。




「······ゲノム、変」

道中、ゲヘナがゲノムに耳打ちする。

彼女は村に入ると同時に自分の足で歩いている。


「あ、気が付いた?」

「うん。ゲノムの言葉が丁寧」

「あ、そっち?」

二人の会話を聞き、シロが鼻を鳴らす。

「············鉄と油の匂いがするのです」

「うん。この村、多分、賞金稼ぎの集まりだ」


鉄は武器の匂い。油は武器を手入れするものだろう。


「ゲヘナ、魔術師はいそう?」

「多分いない」

「僕がグランリノにいるって嗅ぎ付けたんだろうね」

「ゲノム、どうしますか?」

「グランリノじゃ、僕は裏方だったからね。少し揶揄おうか」

にやりと笑うゲノムに、ゲヘナとシロはうんざりとした表情を浮かべる。

「ほどほどに」

「きっとトラウマになっちゃうのです······」

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