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約束

 泣いても泣いても結果だけはかわらない。

 結局、好きな子を傍にいさせてあげることすら出来ない。


 皮肉だな…。


 どんなに好きでも、思うだけじゃ何も出来なかった。

 自分自身も弱くもろかったから。

 悲しませるだけが男なら、俺は男じゃなくていい。

 「それでも、俺は美雨が好き」

 出来れば、美雨にはもっと笑って欲しかった。

 もっともっと、今以上に…。

 壊れそうになるほど、今を楽しんで笑って、そして生きて欲しかった。

 美雨は俺の…お(よめ)さんになるんだ。

 いつの約束だっただろうか。

 そう言えば、美雨とそんな約束もしてたような…。


 ・・・9年前・・・


 5歳になったばかりの俺は、シロツメクサのたくさんある結婚式場にいた。

 もちろん、その時も美雨と一緒。

 『結婚式なんだよねぇ?ここ…』

 『そうだよ…』   

 美雨はクローバーで何かを作りながら、陸斗に笑いかけていた。

 陸斗はそんな美雨を見て、呟いていた。

 『みぃなら、僕のお嫁さんにするから…っ!』

 その時も美雨はニッコリと笑顔を陸斗に向けていた。

 真っ直ぐな()を俺に向けて。

 『みぃちゃんも陸のお嫁さんになるもん!』

 


 嬉しかったし、愛おしかった。

 今じゃそう思う。

 でも、結婚の夢でさえ今は叶わない。


 

 ・・・ケホッ・・・


 病院では、陸斗の意識が戻り始めていた。

 陸斗の目に浮かぶ涙がそれを証明していた。

 「先生っ!陸斗が、…陸斗の意識が、」

 「そうみたいですね。後は安静にしていれば大丈夫ですよ…」

 途切れる会話、体には痛みが先走る。

 生きてる証拠(しょうこ)(あかし)




 「美雨ちゃん…陸斗くん、戻ったみたいね……」

 凛は美雨の顔を見ないでおいた。

 泣いているのはわかっていたことだから。

 「陸はあたしのぶんまで長生きしなきゃなんだもんッ♪でもぉ、あたしじゃない人が彼女だとちょっと気がなぁ〜…」

 未来を予想した美雨が、陸斗の未来の彼女を想い浮かべて笑った。

 「美雨ちゃん、次はあたしたちが戻らないといけないよ…?」

 泣いてると思っていた美雨は笑顔だった。

 本当に幸せそうに笑って、何事も無かったかのように。

 「そうだね、凛ちゃん…事故現場かぁ〜、あんまり行きたくない場所だなぁ〜」

 美雨はそう言いながらも病院を後にした。



 

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