罪
なつかしい匂い。
馴染んだ服。
ここには、思い出がたくさんありすぎる。
「凛ちゃん、ごめんね?家に寄ってっもらっちゃって…」
美雨は、霊界にある自分の家にいた。
何もかもがまったく同じ世界。
違うものは、いつも家で待っていてくれてた人がいないとこ。
「わたしのせいだから、いいの」
凛は涙ぐんだ美雨を見ながら、そう答えた。
「みぃ…」
陸斗は、美雨の家の玄関に立っていた。
凛と美雨の会話を聞いていたのだ。
陸斗は、美雨に声をかけていいのかを悩んでいた。
必死に凛が助けてくれたのに、俺がここに来てよかったのかと考えたからだ。
・・・ガシャッ・・・
「誰…?」
陸斗は、近くにあった鉢植えを落としてしまった。
「みぃ?俺…」
「陸…なんでいるのぉ?あたし、もう会えないと思ってたのに……」
美雨はただ泣いた。
それでも枯れない涙の雨は、とても美しかった。
綺麗で聡明。
「ごめん…俺……」
「違う…」
美雨は何かを否定した。
「違う…陸だけど、陸じゃない…」
「どういう意味だよ…」
「美雨ちゃんのいったとうり…」
凛も美雨と同じ意見だった。
陸斗だけど陸斗では無い。
意味のわからない言葉。
陸斗は軽く混乱していた。
「陸…陸はまだ死んでないよぉ…?何でここに来ちゃったの?駄目だよ、帰んなきゃ」
美雨は陸斗を真っ直ぐ見て言った。
「俺は死んだ…だからここにいる」
「違う違う違うッ!違うよぉ〜っ!!だって陸の瞳、緑色だよ?いけないよ?駄目なんだよ。陸はこっちにいちゃ行けない」
陸斗は、一生懸命説明する美雨に泣いた。
「みぃ、ごめんな…助けてあげられなくてごめんな……?」
陸斗は泣いている美雨にそう誤ることしか出来なかった。
「美雨ちゃん…一回地上に戻らない?」
凛の提案に、美雨たちは笑顔を取り繕っていた。
これは俺の罪。
美雨の痛みは俺が受けなきゃいけなかったんだ。
陸斗はそう思いながら、美雨の横顔を見た。
懐かしく思う、美雨のあの笑顔。
今ここにある。
俺の罪のヒトツ。




