誓い
「ありがとーございましたぁ〜」
「ちょっと駄目よぉ?もう少し本当は安静にしないとなんだから…」
病院内には、陸斗の退院のあいさつが響いた。
陸斗の母は、異常なくらい明るくなった陸斗を見て驚いていた。
「あなた、まだ具合悪いんじゃ、」
「んなわけねぇーよぉ…こんなに元気じゃんッ♪」
美雨の母も、陸斗の退院祝いに来ていた。
「陸斗くん…なんだかテンションが美雨に似てるわぁ……あのコが男の子になっただけみたいな…」
「んなことありませんよ…みぃは、俺よりも明るくて可愛いッスから」
陸斗が苦笑いをしながら否定した。
陸斗に意識が戻ってから3ヶ月。
なぜか入院していて、ずっと美雨のお墓に行っていなかった。
今日は美雨に会いに行く日だから…。
陸斗はそう心の中で言っていた。
悲しんだままお墓参りに行ったら、美雨が泣く。
そう思ったのだ。
好きな子の笑顔が曇るのは嫌、そうずっと思いながら美雨と一緒にいたから。
美雨の最後の言葉、陸斗にだけ聞こえるように、美雨は消える瞬間に陸斗に一言だけ言葉を贈っていた。
『陸が泣いたら、美雨と一生会えないからね…陸のこと、ずっと好きだよ…』
陸は、最後に言われた言葉が嬉しかった。
「俺たち、両思いだったのになぁ…」
好き。
美雨からちゃんと聞けた。
陸斗は、美雨と凛のお墓の前で手を合わせていた。
「みぃ、神野…ずっと見守っててくれよ…?」
陸斗は胸元にかけたペンダントを開いた。
そこに写っていたのは、笑顔で陸斗にくっつく美雨と、ちょっと嫌そうで嬉しそうな陸斗の姿だった。
「まぁ、みぃも神野も…俺の中では生きてるからな……」
優しく微笑む陸斗の姿を、誰かがこっそりと見つめていた。
陸斗は気づかないまま…。
いいや、気づかなくていい…。
美雨がそこにいるだけだから……。
俺は神に誓う。
もし神様っていうやつがいないなら、俺は美雨に誓う。
100年後でも200年後でも、遠い未来にはもう一度…。
美雨に会うから…。




