運命
僕等は出会って14年目を、今日迎えた。
13年目の誕生日。
『おめでとう☆陸!』
『あッ、おめでとう、みぃ』
こんな軽い言葉で、お祝いをした。
幼馴染だった僕等は、生まれたその日からの友達。
誕生日も同じ、生まれた病院も同じ、幼稚園も小学校も同じ。
そして今は…中学も同じ。
運命のような出会いと、全てが同じ奇跡。
有岡陸斗…綾瀬美雨。
僕等はいつも一緒。
私達二人は、クラスだって違ったことがない。
偶然にしても出来すぎだと思っていた。
でもこれが運命ならどうかなぁ?
いつもそう思っている。
『みぃッ!!大丈夫?』
あたしが転んだときに、いつも走って駆けつけてくる陸斗を見て、わたしはなんとなく嬉しかった。
全部わたしのためにやってくれて、泣くのも笑うのもいつも一緒に。
陸斗は、わたしのとって家族と同じぐらい大切。
もしかしたら、家族以上に大切かもしれない。
「ねぇ陸…?」
台所に立ちながら、美雨は焼き上がったホットケーキを抱えていた。
陸斗は何も言わずに、美雨が抱えたお皿を机の上まで運んだ。
「旨そう…みぃ、ありがと。一緒に食べよーよッ☆」
手招きをする陸の優しさにはいつも驚く。
「うんッ♪」
料理が得意な美雨の横顔を、俺はいつも追っている。
好きとか嫌いとか、そんな感情が無くても、あっても。俺はいつも一緒にいられる時間が楽しくて嬉しい。
「ねぇ陸?今回は失敗しちゃったんだぁ〜♪おいしいかなぁ?」
家族として見た台詞。
友達以上だけど、恋人未満のわたし達。
陸斗が好き、そう思っているのもわたしだけ?
今年は告白…挑戦してみようかなぁ。
美雨はそんなことを考えながら頬を赤らめていた。
ここまで気の合う僕等は、そうはいないと俺は思っている。
今まで、違ったことがほとんど無い。
そういえば、ケンカすらしたことなかったっけ。
「絶対うまいから大丈夫!」
陸斗は笑顔でそう言った。
美雨は、そんな陸斗を見て嬉しそうに頬を赤らめて照れた。
しばらくはくだらない話ばかりで盛り上がった美雨は、帰宅時間が迫っていた。
「あッ、美雨もう帰らないとだ」
「じゃあ俺送るよ…」
美雨の帰り支度が終わるまで、陸斗は玄関で待っていた。
家は隣で、1分もかからず帰れる距離だった。
それでも陸斗は、何も言わずに送ってくれていたのだ。
「陸ぅッ!お待てせぇ〜♪ねえねえ、今日は家帰らないで公園行かない?」
「おうっ」
まだ肌寒い2月の夜。
陸斗が温かいホットミルクを買ってきてくれた。
たわいも無い会話をしながら公園のブランコを揺らした。
時間も遅くなり、家から遠すぎる公園。
遠い帰り道を進んだ。
「ねえ陸?美雨たちが生まれて14年になるよ…明日はうち等の誕生日だから」
「だな。でも、俺は知らないフリしとく…。その方がなんか良いことありそうじゃん?」
・・・2月14日・・・
僕等が生まれ、その日のうちに出会い、幼馴染として生活する運命の日。
君は運命を信じますか…?
俺は信じる。
信じないなんて言ったら、俺等が出会った意味すらなくなっちまうと思うから。
公園からの帰り道。
暗く車の通りが多い地域。
「ねぇ陸…今日ね、何か嫌な予感がするの。すごく、こっから動いちゃいけないような気がする」
美雨はそう言いながら陸を見た。
「でも、帰らないとだろ?動かなきゃいけねぇだろ…」
陸斗は戸惑いながらそう告げた。
美雨のカンはよく当たる。そう知っていたから、陸斗は何か嫌な感じがしていた。
再び歩き出した美雨と陸斗は、また会話で時間を紛らわすように心がけていた。
「ねぇ、陸って好きな人いないの?」
星を見上げながら、美雨は照れくさそうに聞いた。
「えっ?秘密…みぃは?」
「あっ!美雨はねぇ」
言いかけの言葉。
答えはこれから。




