4月12日
「え? 依頼ってゴブリン討伐ですか…?」
ロソーの街の依頼人、大ロート商会ロソー支部の番頭から説明された話を総合すると、昨日、道で倒したゴブリンが討伐依頼対象だった可能性が非常に高いという事が分かった…。
「倒してしまった可能性が…」
「そ、そうですか…」
剣士フジクが俯きながら言い、番頭さんもあちゃーという顔をして言った。
もちろん、ゴブリンを倒したこと自体は、商会にとっても、あるいはロソーや周辺の街の住民にとってもいいことである。
実際に、昨日のように襲われる可能性がなくなったのであるから。
だが、依頼外で倒してしまった以上、冒険者ギルドが認める功績にはならないため、ポイントがもらえない。
それはつまり、まだ10級から9級に上がるのが遅くなるということでもあった。
「あ、あの、報酬に関しましてはお支払いしますので…」
番頭さんは善い人であった。
四人は大ロート商会ロソー支部を辞し、酒場に入った。
まだ午前中だが、それほど大きな街でもないロソーにおいては、カフェのようなお洒落なものはない…そのため、酒場が時間を潰す場となっていた。
「参ったな…」
「困ったね…」
「ゴブリンがいけないのよね…」
「このハチミツ酒というのは甘くて美味しいですね」
剣士フジクが落ち込み、斥候アンナが顔をしかめ、魔術師シェラザードがタイミング悪く出てきたゴブリンのせいにし、受肉二日目にしてハチミツ酒に出会ったミカエルが喜んでいた。
ニコニコとハチミツ酒を舐めるように飲んでいるミカエルを見て、フジクは言い放った。
「ぐちぐち言ってても仕方ねえ。一杯飲んだらバランの街に戻るぞ。気持ちを切り替えていこう!」
「そうね、仕方ないか」
「まあ、そうですわね」
斥候アンナも魔術師シェラザードも、フジクの言葉に頷いた。
剣士フジクは、リーダーなのである。
そんな三人を、ミカエルはニコニコしながら見ている。
そんなミカエルに、フジクは話しかけた。
「ミカエルさん、そんなわけで、依頼は無くなってしまったんだが…今後の予定は? っていうか、ミカエルさんの職業って、治癒師でいいのかな?」
「予定は別にないですよ。ゆったりとしたスローライフを送ろうと思っているのですが」
「スローライフってのがよくわからんが…もし、もうしばらくこの辺りにいるというのなら、その間だけでもうちのパーティーの治癒師として手伝ってもらえないかな。これから戻るバランの街で冒険者登録をすれば、冒険者になれる。そうすれば、報酬は四等分で活動できる。確かに、俺らはまだ10級冒険者だが…治癒師がいないと、今日みたいな地上依頼も、あるいはダンジョンに潜ることも出来ないんだ。助けてもらえないだろうか」
フジクはそう言うと、立ち上がって頭を下げた。
同時に、アンナとシェラザードも立ち上がって頭を下げる。
ミカエルは、いつものようにニコニコしながら首をちょっと傾げた。
「そうですね…いろいろ興味があるので、しばらくそのバランの街に滞在するのも悪くないかもしれません」
「おぉ! それじゃ?」
ミカエルの答えに、フジクはバッと顔をあげて尋ねる。
「はい、しばらくお世話になります。よろしくお願いしますね」
「やった~!」
アンナがガッツポーズをし、シェラザードは嬉しそうに何度も頷いた。
フジクは、少し目に涙を浮かべている。
こうして、新生『天使の微笑み』が立ち上がったのであった。