4月11日 続続
フジク率いる『天使の微笑み』は、ミカエルを臨時のパーティーメンバーとして雇うことに成功した。
そして、ロソーの街に同行してもらったのだ。
だが、街の入口で問題が起きた。
「冒険者カードのない者は、銀貨一枚払わねばならない」
衛兵にそう言われたのである。
天使の微笑みの三人は、冒険者登録してあるため、もちろんカードを持っている。
そして、街に入る際にはいつも提示していたために、完全に失念していたのである。
普通は入門税が必要だという事を。
もちろん、三人も銀貨の持ち合わせくらいはある。
だが、お金はありすぎて困ることはない。
そして、無くなった時に限って、足りなくて困るのだ。
そんなことを逡巡していると、ニコニコと微笑んだままのミカエルがフジクに聞いた。
「フジクさん、銀貨ってどれですか?」
「え? あ、ああ、これだ」
フジクはそう言うと、ポケットから銀貨を一枚出してミカエルに見せた。
ミカエルは、表も裏もじっくり見ると、一言呟いた。
「なるほど」
そう言うと、ポケットに手を突っ込み、そして手を出した。
そこには、銀貨が一枚握られていた。
「では、これで」
そのまま衛兵に銀貨を渡す。
「うむ。確かに受け取った。通ってよし」
衛兵は鷹揚に頷き、四人は街に入れたのだった。
「ミカエルさん、すまんな…今の分だ。受け取ってくれ」
フジクはそう言うと、銀貨を一枚ミカエルに渡そうとした。
自分たちの都合で来てもらった人に、お金を払わせたままなどさすがに礼儀にもとると考えたのだ。
それはアンナもシェラザードも同じ考えらしく、申し訳なさそうな顔をしている。
だが、
「ああ、大丈夫ですよ。お金には困っていませんから」
ミカエルはそう言うと、そのまま歩き出そうとする。
「いや、そういうわけにはいかない」
フジクは結構頑固である。
「う~ん、そうですか…。ああ、でしたら、この街で美味しいご飯を奢ってください。それで貸し借り無しという事で」
その夜、ミカエルは、初めて食事というものを楽しんだ。
あちらの世界では、食事を摂る必要性がないのだから当然と言えば当然なのであるが。
メニューは、豚モモ肉の山賊焼きを中心とした料理であった。
思い切り堪能した後、ミカエルは、心の底から思ったのだ。
「食事が美味しい、この一事だけでも、受肉したかいがありました!」