17
俺は膝をついているスキンヘッドの男を横目に見ながら、カウンターに向かい歩いていく。途中で男の仲間なのか、テーブルを横切る時に座っていた男が俺に足をかけてきた。しかし、男の予想とは違い、俺は何食わぬ顔で横を通りすぎる。
不思議に思った男は、次の瞬間に自分の足からくる激痛に視線を下に向ける。そして、男は自分の脛がくの字に折れていることに気付く。男の顔は真っ青になり、額からは脂汗がでる。
「足がっ!いてーっ、足がぁーっ!」
そして、俺がただのガキじゃないことに気づいたのか、ちょっかいをかけようとしてた奴らは後ろに下がりだす。俺の進路方向にいた奴らが一斉に避けたため、カウンターまで伸びる道ができた。
「冒険者登録をしたいので手続きをお願いします。」
「は、はい。かしこまりました。」
今の一部始終を見ていたのか、受付のお姉さんは引きつった笑顔で対応してくれた。
インパクトが強かったためか、仮面をつけていても特に聞かれずに手続きができた。
「こちらの紙に記入をお願いします。」
その紙には、名前、性別、種族、職業、スキル、魔法属性、ギフトと書かれていた。
「この空欄は全部記入しないといけませんか?」
俺の魔法属性は雷なのだが、教会ではわからないということになっているので書くのを躊躇する。もう既に目立っているのに、これ以上トラブルに愛されたくない。
『今更ですね。認めたくないかもしれませんが、あなたは生まれた時からトラブルに愛されています。』
『ひでーな。愛されるのは雫や家族、女性以外からはノーサンキューなのに。』
そんな感じで脳内嫁と会話をしているとカウンターのお姉さんが「必ず記入する必要はありません。現にスキルやギフトなどを申告しない冒険者の方はいます。ですが、この記入事項は冒険者カードに反映するので、臨時でパーティを組む時など、相手がそれを見て判断したりします。記入されているほうが信用できるので、なるべく記入した方がいいと思います。また、申告は後からされても反映することができます。」
なるほどね。
まぁ、命の価値が低いこの世界では何が起きるかわからないし、自分の身は自分で守らないといけない。裏切られることもあるかもしれないから自分の切り札はなるべく知られたくないってことかね。
『そうですね。2つ以上の属性をもっていても1つしか申告しない方もいると思います。あと、名前も偽名にした方がいいとですね。』
『そだね、仮面をする意味が半減しちゃうし。』
俺は名前、性別、種族、スキルの一部を書くことにした。
名前 イナズマ
性別 ♂
種族 ハーフエルフ
スキル 剣術2 弓術2 短剣1 体術1
「では、こちらのカードに血を垂らしてください。このカードは血を垂らした本人の魔力に反応して光ります。再発行には大銀貨5枚になりますので無くさないでくださいね。」