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12歳になり、俺とユリナは迷宮都市ランバルンに来た。ユリナは商業ギルドが管理する寮に、俺は自分の稼ぎがあるので学校から近い場所に賃貸契約することにした。
ユリナは学校に行きながら商業ギルドに紹介してもらった雑貨屋さんで見習いとして働くと言っていた。12歳から冒険者登録ができるので、俺は登録だけして授業が終わった後や学校がない日はじいちゃんの商会に納品するポーション類を作ったり、冒険者の依頼を受けたりする予定だ。
とりあえず、冒険者登録しに行くか。
『あなた、ギフトがバレたりすると厄介なので、顔を隠して登録した方がいいと思います。』
『あーなるほど。アイテムボックスの中の物とかも、そろそろ処分したいし、必ず目立つからそうするよ。てか、顔隠した状態でも登録できるの?』
『正直、行ってみないとわからないです。最悪の場合、違う都市で登録して、こちらでは仮面をつけて依頼を受けるなどできますしね。』
『そうだね。じゃあ、仮面を用意しなきゃ。』
そうして、俺は人気のない所に移動し、錬金術Lv4で使える錬成で、アイテムボックスに入ってるミスリルを使い仮面を作る。
仮面はシンプルに作り、左の目下には雫の名前の由来になった涙の形を彫り、右の目には俺の魔法属性である雷を瞼部分にまたがって彫ることにした。
そして、仮面をして冒険者へ向かうが回りの視線が気になる。多分、小さい子がごっこ遊びの延長みたいなことをやっているのだろうというような微笑ましい視線に恥ずかしくなり、歩くスピードが速くなる。
歩くこと20分。盾に剣と弓がクロスした看板が掛かった大きな3階建ての建物に着いた。中に入ると、筋肉が引き締まった屈強な男達やローブを着た男女、綺麗に割れた腹筋が露出した格好をした女達が、扉の開く音に反応してこちらに視線を向ける。
「おいっ!ここはガキの遊び場じゃねぇぞ。」
そう言って、入り口の一番近くにいたスキンヘッドの男がこちらに近づいて来た。
「ガキが聞こえてなかったのか?ここはガキの遊び場じゃねぇって言って・・・お前、その仮面はミスリルか?」
スキンヘッドの男は仮面を指指しながら尋ねると同時に俺を上から下まで再度確認するように見る。ミスリルは値段が高い。相場が大体1kg金貨2枚(20万前後)、そんな高価な仮面をしている俺をどこかのボンボンか貴族の血縁者かもしれないと思ったみたいだ。
「すみません。冒険者登録をしたいので、そこを退いてもらえますか?」
「あア"!登録だ?お前みたいなガキにはまだはえぇ。お家でママのお乳でも吸ってろ。」
俺の服装から貴族ではなく、どっかの金持ちのボンボンだと判断した男は俺のつけている仮面へと手を伸ばしてきた。
「へへ、お前みたいなガキにはミスリルは勿体ないから俺が有効活用してやる。感謝するんだな。」
男が仮面に触れた瞬間、(バチンッ!!)と音がすると同時に男の手が見えない何かに勢いよく弾かれた。見ると男の指は向いては行けない方向にネジ曲がり、遅れてやってきた痛みに男は叫ぶ。
「・・・・ぎゃああぁぁっ!ゆびが、俺の指がぁぁ!」
それをシカトして、俺は奥のカウンターに歩きだす。