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教会は蜂の巣をつついたような慌ただしさ。
早く報告をしたいのか、司教は少し適当に俺の案内をする。
「最後に君の番ですね。水晶を順番に触れていってください。」
俺は言われた通りに水晶に触れていく。
最初の水晶に触ると、手から温かい何かが身体に入ってくるのがわかった。そして、俺の脳内には生活魔法の使い方が、まるで初めから知っていたかのように自動でわかるようになっていた。
続いて2つ目の水晶に触れた瞬間、マリアが触れた時以上に輝き、紫色の光が教会内を埋め尽くした。
「・・・・・な、なんですかこの光は!?」
適当気味だった司教も、この輝きには驚いたのか、一瞬言葉に詰まる。
「む、紫色?・・・聞いたことがありません。」
そして、ステータスを確認するためか、俺の頭に触れた瞬間「パァンッ!!」と凄い音をたて、見えない何かに手が弾かれた。
どうやら、俺のギフトである反射が発動したみたいだ。この反射は雫に発動を丸投げしているため、雫が認めた人しか俺に触れられないようになっている。
「痛ッ・・・・これはどういうことですか?」
痛かったのか、司教は手を庇いながらも俺に問いかけてきた。
「えっと、わかりません。」俺はしらを切ることを選択した。
「・・・まさか・・ギフトホルダー・・・・?」
その後、司教も納得してくれたのか、最後の水晶を覗きこむ。
そして、俺も最後の水晶に触れる。
「・・・・復讐者?・・・これも聞いたことがない職業です。
このことも中央教会に報告しなくては。」
洗礼の儀式が終わり、俺達は教会をでる。マリアの父親はシスターにマリアの名前や住んでいる村など色々と聞かれていて、教会から出られそうにないので、先に俺、父、マリア、ユリナ、ユリナ父は宿に向かうことにした。
その道中、マリアがテンション高めで話しかけてきた。
「アレンの光、スゴかったね!しばらく、目が見えなかったよ!」
「アレン君のも凄かったけど、マリアちゃんも凄かったよ。」
まだ、興奮が冷めてないのか、ユリナも会話に入ってくる。
「マリアだって、聖女の職業を授かったじゃないか。こんなことなら、マリアのお母さんやウチのお母さんも来ればよかったのに。」
そんな会話をしていると、すぐ後ろから父が声をかけてきた。
「しょうがないだろ、母さんもマリアちゃんのお母さんも妊娠中なんだから。」
そう、お母さんは今、妊娠中なのだ。弟かな?妹かな?今からすごい楽しみだ。
続いて父は、声を小さくして話しはじめる。
「それと、アレン、マリアちゃん、ユリナちゃん。職業が聖女だったってことは今から秘密だ。他の人間に聞かれたらマリアちゃんの身が危険になる可能性がある。わかったかい?」
「うん。」「わかった!」「・・はい。」
そして、俺達は宿で一泊し、馬車で半日かけコロナ村へ帰ることなった。