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田舎の子  作者: 雨世界
1/1

1 ねえ、私と一緒に走ろうよ。

 田舎の子


 プロローグ


 あなたに会えて、本当に良かった。


 本編


 ねえ、私と一緒に走ろうよ。


 三井稲穂がいつものように、友達の深川美来と一緒に田舎の町の中を走っていると、「本当になんにもないね。この町」と周囲の田んぼの広がる風景を見ながら、稲穂が言った。

「そんなの今更言ってもしょうがないでしょ? 昔っからずっとそうじゃん」と自転車に乗って稲穂を先導し、引っ張っている美来が言った。


「でも最近、大型の商業施設ができたじゃん。それで十分じゃない?」美来が言う。

「まあ、そうだけどさ」稲穂が言う。

 稲穂が今きているピンク色の線が入った真っ白なジャージも、真っ白な靴も、その最近できた緒方の商業施設の中にあるスポーツショップで買ったものだった。


「最近楽しいことなにかあった?」

 美来が言った。

「うーん、まあ、一応あった」

 自分の前を自転車で走っている美来のゆらゆらと風に揺れる小さな三つ編みを見ながら、稲穂は言った。

「え? なにかあったんだ? それってなに?」美来が言う。

 美来はいつも通りの軽い口調で会話をしている。

 どうせ、この田舎にある町で起こる楽しいことなんて、大したことではないと田舎育ちの美来はよくわかっていたからだった。


「……好きな人ができた」


 小さな声で(でもはっきりとした口調で)稲穂は言った。


「え?」

 驚いて美来は思わず後ろを振り返って走っている稲穂のことを、すごく驚いた表情して見つめた。瞬間、美来の漕いでいる自転車のバランスが崩れて、左右にすごく自転車が揺れて蛇行した。

「ほら、美来。危ないよ。前見て、前」美来の自転車を支えながら稲穂が言う。


「うん」美来は言う。

 それから二人は少しの間無言になった。

 無言になって、黙々といつものランニングコースを走り続けていた。


「それで、稲穂の好きになった人って誰?」

 会話を切り出すタイミングを見計らって、今度は前を見ながら美来は言った。


「……北里くん」少し照れながら、稲穂が言う。

「北里くんって、隣の教室の北里香かおるくん?」美来が言う。

「うん。その北里くん」稲穂は小さな声で美来に答える。

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