エピローグ
先日、栖衣の兄の自殺により、織畑教志郎が本物である可能性が高い事が証明されたという記事が雑誌に掲載された。
反響はそれなりにあり、功労者の紅雀楓のグラビアを四ページ載せることが編集長の判断で決まり、この日、打ち合わせで楓が訪問してきていた。
「超能力者って本当にいるものなんですね」
途中、私が何の気なしに言うと、楓は馬鹿にするように鼻で笑った。
「あたしは、エンターテイナーって言ったはずだよ」
「はい?」
「織畑教志郎が『床や壁に抜け道がない事を確認してください』と言っていたよね? お前達には見抜けないだろう、という意味を含んでいたんじゃないかと思っている。床が動く仕掛け以外にも、人一人通れる道が現れる装置もあって、それの起動用のリモコンがあったんじゃないかって。でも、この十年で失われてしまったんじゃないかな」
「十年前は超能力の誤作動ではなく不慮の事故と?」
楓の顔が不意に曇った。
「過去の織畑教志郎の超能力を使ったという映像を見て、織畑教志郎の言う超能力の九割方はそのからくりが見抜けたんだけど、残りの一割は見抜けなかった。本当の超能力者だった可能性も捨てきれない。当人が死んでしまっているので曝きようがないんだけど……。生きていたら、ペテン師だって曝きたかった……かな」
そんな楓の目は獲物を見失って寂しそうにしている猛獣の目そのものであった。