第2話 織畑栖衣
「お待ちしておりました。安田敦様、紅雀楓様」
呼び鈴を押すと、赤いドレスに身を包んだ綺麗な女性が予定調和のように出て来て、私達を館の中へと誘った。
彼女は織畑教志郎の長女・織畑栖衣。私の企画に快諾してくれた理解者だ。
楓の事も含めて、すんなりと受け入れてくれたのだ。
「事故現場をまずは見ますか? それとも、織畑教志郎のこれまでの奇跡を綴った映像を鑑賞しますか?」
つい先日、織畑教志郎の転落死事故が起こったような口ぶりに私は違和感を覚えるも、楓は何も感じていないようで、
「奇跡なんてどうでもいいから、事故当日の映像があるなら見てみたい」
織畑栖衣は嫌な顔一つせずに『こちらへ』と言って、一階の大型のモニターだけではなく座席まである小劇場のような部屋へと案内した。
「検証のために用意していますので」
私は端っこの方の席に座ると、楓は些細な事さえ見逃すまいという心意気なのか、モニターの真ん前に陣取った。
「今回見ていただく映像は、とある記者から提供してもらったものを四十分に短縮したものです。他にも同様の映像が七点ほど存在します。私と兄とで全ての映像を確認しており、音声、音、経過など、どの映像も視点の違いはあれど差異はありません」
「これを見れば、他を見る必要はないって事?」
「はい」
「なら、始めてよ」
楓は座席にふんぞり返るように座ってそう促した。