表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

聖女は悪女?

第二王子アッサムの誓いと罪

作者: 桜田 律 

レイラ・ブルーイットが死んだ?

何故だ!ありえない!

あれだけ国のためにと王妃になる勉強も、聖女としての役目を果たしてきたのに。


「ヨルゲン、レイラ嬢が何故亡くなったのか、どんなことでもいい。探れ!それに関わっていた者全て許しはしない。彼女を傷つけた者にはそれ相当等の報いを受けさせる!!」

「このヨルゲンにとっても、レイラお嬢様は救世主そのものでした。その命を何としてでも完遂させてみせます!!」

「頼んだぞ!もしもあのバカ兄が関わっていたのなら、レイラ嬢と僕との婚姻を認めて下さらなかった父上にも、力尽くでも玉座から降りて貰う」



聖女レイラ・ブルーイットが死んだと訃報が国民中を駆け巡った。

死因は名誉のために伏せられたが、人の口に戸は立てられぬというがまさにその通りで、穢されたという噂を苦に自殺したと広まった。

貴族の者はそれを信じたが、僕と同じように民衆はレイラの死に疑問を持った。それが本当であれば、穢そうとした者を公開処刑にしろとまで嘆願書が集まるほどに。

今までにない民衆の憤りに王家も堪えられなかったのだろう。犯人捜しが躍起になって行われた。

適当に捕まえた罪人を仕立て上げたのだろう。

その男達3人が公開処刑をされたが、それでも民衆は収まらなかった。

民衆の中に密かに流れる噂があった。

『王太子が殺した』


始めは不敬罪になる為にあの女好きが…としか囁かれていなかったが、それが尤もらしかったためにそれが原因では?と民衆は思い始めたのだ。その証拠に婚約者だったレイラが亡くなったにも関わらず、喪に服するように行動が控えめになるわけでもなく、枷がなくなったとばかりに女遊びが激しさを増してきているのだ。

始めは寂しさを紛らわすためにと同情的だった貴族達でさえ、顔を顰める始末。

直接的に殺したという意味でなく、王太子がレイラの身の純潔を信じなかった為に悲観した、という間接的な意味であったが、その言葉はいつしか真実だとされていった。


もちろん煽ったのはアッサム・リリェホルム第二王子だ。

その間にブルーイット侯爵を中心に王太子廃嫡を狙い、自分の側近となる者を作っていった。

そして見つけたのだ、一筋の光を。

ルディ・フライベルクが王太子に穢せばいいと助言したことを聞いた侍女を見つけ保護した。それを皮切りに口を閉じていた貴族達が証言を出し始めた。


そして王太子自ら手を下した事実を、突き止めた。


アッサムは王に退位と王太子廃嫡を促したが、王はそれに応じなかった。

「では、父上力尽くでも王座を降りて頂きます。民衆はこれでやっと納得して頂けるでしょう!」

「なにを馬鹿なことを!」

「馬鹿はあなたですよ。私の婚約者にしておけばレイラは死なずにすんだ。聖女を殺した王太子などこの世から消えてしまえば良い。そしてあなたは世界の理を曲げる為の礎になって頂く。時の神も王と王太子の命なら納得して頂けるでしょう」

「禁術を使う気か!」

「そうですよ。どうせこのままなら疫病がこの国を襲い、その為に滅ぶ。それを止める術レイラを失ったのですから」

本当に滅ぶかどうかは賭となるだろう。レイラがあの村で行おうとしていたことを国内で徹底できれば、あるいは…。そんなこともしらない国王など国の妨げにしかならない。

「…まさか!」

「あなたはこれ以上知らなくても良いことです。この国のためレイラの為に、命を捧げて貰うのですから」



ああ、これで僕もあなたの傍に行くことが出来る。

禁術は王城の隠し扉の中にあったのを偶然見つけた。その方法を知った時歓喜した。

これで王家の血は断絶し、新しい血でもって別の国へと生まれ変わることが出来る。


禁忌を行うには王族直系の血3人以上がいる、と分かった時には地団駄を踏んだ。

マルティンを公開処刑にしなかった理由はそこにある。何とも腹立たしい。民衆の前で断罪をしたくとも出来ず、仕方なくルディだけを公開処刑にした。

王太子マルティンを平民に堕としただけでは納得できていない民衆も、弊害がある王族の血の断絶、これで納得してもらおう。


「後のことは皆に任せた、ヨルゲン」

「御意に」



「時の神よ。我アッサム・リリェホルム、レイラ・ブルーイットの復活を願う者なり。

王太子並びに愚王たる父そして私自身を御身に捧げます。どうかこの恋に焦がれる男の願いを叶えたまえ」

これは一種の賭けだった。

時の神は男神とも女神とも記載されていなかったが、現世では恋の神とも呼ばれていた。


『来世でも出会えますように』

想う相手の髪を小指に結び付けて願うことで叶うというお呪い。

レイラの髪を小指に結びつけ、父と兄の首を刎ねれば血に反応して陣が浮かぶ。

大きな渦から女神がゆっくりと浮かび微笑んだ。

「そなたの望み、確と心に届いた。だが、今世の罪は魂に刻まれよう」

「はい。覚悟の上です」


目礼した後すぐにアッサムは渦の中に飛び込み、儀式を完成させた。

すぐに意識は途絶え、暗闇へと暗転した。


魂に刻まれた罪が何なのかはすぐにわかった。

あの後すぐにこの世界ではないところに生まれ落ちた。

麗良レイラの弟として。

どんなに恋焦がれても、血の繋がった弟。

記憶がなければきっと、ここまで苦しまなかっただろう。

麗良は姉として愛しんでくれたが、男としては見てはくれなかった。

これが罪。

その世は独身で通して、麗良よりも先に世を去った。

贖罪は続く。

次の世は兄として生まれ、次の世は子として生まれた。

どの世も呪いのように出会い続けたが、結ばれることはなかった。

それでもレイラ復活を信じ、時を曲げることへの贖罪の旅を続けた。


何度目かの没後、閉ざされまた世界に光が差してきたとき、またどこかの世界に生まれるのだと思った。

今度はどんな出会いになるのか。

生まれ落ちる準備を静かに待っていた時、あの女神が現れた。


「罪は償われた。お前の望む世界へ戻ると良い」


ああ、懐かしい世界。

アッサム・リリェホルムとして、もう一度生まれた。

レイラ、君を絶対に死なせたりしない。

そして絶対に君を手に入れる。

伊達に異世界を渡っていないからね、覚悟していて。

『僕の可愛いレイラ』



まあ、突っ込みどころ満載ですが脳内補完でお願いします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ