46/47
Cage-Out 翠(4)
「美咲……なんで……?」
よろよろと翠が立ち上がる。
私は彼女に駆け寄り、ぎゅっとその身体を抱きしめる。
私でなければならない理由。
翠の中で、私は死んでいた。きっと彼女の中では、自分が私を殺してしまったと思っているのだろう。そうして自分の心を責め立て追い込んだ結果か、彼女は自分を戒めるように終わりのない眠りについた。
私が全ての歯車を狂わせた。
それで自分だけ満足して勝手に死のうだなんて、あまりにも都合が良すぎた。
それに、こんな私でも親友だと必要としてくれる人もいるのだ。
「ちゃんと、私はこうして生きてるから。だから、起きてよ翠!」
私もあなたが必要なの。
もう自分を責めないで。
あなたが責められるような事も、謝らなきゃいけない事も、そんな事は一つもない。
だから、どうか――。
「戻ってきて、翠」
世界が白に包まれた。
建物も、車も、雨も、そして、私達全てを包んだ。
「美咲。ありがとう」
白い世界の中で、翠の声だけがはっきりと聞こえた。