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『アナタノコウフクドハ、60点、デス』
創り上げ、築き上げるのは容易い事ではない。でもそれだけに充実は大きく深く、一段登る毎にその一歩が尊く大切に感じられ、その足場を大事にしていきたいと思う。
だが逆に、崩し壊すのはあっけないほど簡単だ。
『アナタノコウフクドハ、50点、デス』
ズキッ。また頭が痛む。
裕の態度はあからさまに冷たいものとなった。これまであんなにも温かい家庭を築けてきたのに、そんなものは幻だったかのようにもうどこにもなかった。
帰りは今まで以上に遅くなり、帰ってきても私の料理には一切手をつけようとしなかった。
拒絶。いや、もはや存在すら認めないといった、無への扱いに近い。
私達の変化は雅にも当然伝わり、娘の表情はいつも沈んだように暗いものになった。会話もほとんどしなくなっていた。
『アナタノコウフクドハ、40点、デス』
下降する幸福を止められない。このままでは幸福どころか普通ですらなくなってしまう。
――私は、掴もうとしたのに。
ちゃんと幸せを。真剣に幸せと向き合おうとしてきた。
なのに、誰のせいだ。
――裕。
彼のせいだ。彼が私の幸福を邪魔している。
彼といると私は幸せになれない。
邪魔。邪魔邪魔。幸せの邪魔虫。
そもそも彼の最近の行動も気に食わない。ほとんど家で顔を合わすこともない彼は、本当に外で仕事だけをしているのだろうか。
私の不幸の一方で、彼は自分の幸せを得ていやしないだろうか。前から抱き始めていた彼への不信。もしそんな事であれば見過ごす事など出来ない。そのせいで私の幸福にも影響しているのだから。
このままでは気が治まらない。やるなら徹底的にやってやろう。
やると決めたら行動だ。あなたはいつもそうだった。
「そうよね。裕」