(3)
「うん、すごく綺麗だ。似合ってるよ」
「ありがと。裕君こそ、とってもカッコイイよ」
普段のスーツ姿もカッコイイが、純白のスーツもきっちり似合ってしまうあたり、やはりさすがだなと思う。普段派手で奇抜なオシャレなんて決してしないしむしろファッションはいつも地味目だが、スタイルが整っているのでいくらでもオシャレをしようと思えば出来てしまうし、普段着ないようなものでもすっとはまってしまう。改めて目の前の彼の姿に惚れ惚れしてしまう。
私の方は大丈夫だろうか。どうしても着ているドレスへの違和感が拭えなかった。こんな煌びやかな姿を、私がしても問題いないだろうか。そんな不安を抱えていたが、彼の一言が全てを吹き飛ばしてくれた。
もうそろそろネガティブな事を言ったり考えたりするのはやめよう。私は私でいいんだ。周りがどう言おうが自信を持っていればいいし、いちいち気にする必要などない。何より彼は私を選んでくれた。私が私でいられる大きな自信。
――変わったな。
いかに今まで感情が死んでいたかを、彼と過ごしていると気づかされる。
大人になるにつれ、周りを気にしなくなっていった。自分は自分でいい。でもそれは今とまるで意味合いが違う。周りに対して無関心で、排他的な思想だった。
「最高の一日にしよう」
変わった。
色をなくしていた心はすっかり潤い、今は様々な色彩に彩られている。それらは全て、裕君がくれたものだ。
「うん」
彼の差し出す手を掴む。細く薄い、でも握る手には力強さがしっかり籠っている。掌から強い優しさが伝わってくる。
この手を放したくない。放してほしくない。ずっとずっとこのままでいたい。
私は堂々と彼とウエディングロードを歩いた。
式には大切な若草の面々。そして真紀。職場で私のこの姿を見せてもいいと思えたのは真紀だけだったが、呼ばれる真紀の方からすれば気まずいだろうと心配だった。それでも真紀は来てくれると言ってくれた。感謝しかなかった。そんな彼女は、若草のメンバーとも楽しく話をしていて、私はほっと胸をなでおろした。
二次会では固い雰囲気からフランクな空気へ変わり、遠慮のない祝福と冷やかしに晒された。愛に溢れた洗礼に、私は幸せでいっぱいだった。横には裕君がいてくれて、周りにはこれだけの仲間がいてくれる。
幸せなんてどうせ私には、そんなふうに思っていた私はとうの昔に消え去っていた。
「美咲の今の幸せは、間違いなく花まる百点満点だね」
酔った翠が私に抱きつき、ばんばんと背中を痛いた。少々痛かったが、親友の祝福を心地よく感じた。
――この幸せを、私はずっと大事にする。
心の中で私はそう誓った。