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第07話 マサシ 友達?から電話がかかってくる

 『……ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。失敗した。斎藤が悪い。斎藤が悪い。斎藤が悪い。斎藤が悪い。斎藤が悪い。斎藤が悪い。斎藤が悪い。斎藤が悪い。斎藤が悪い……』


 俺は原稿用紙に反省の言葉を書き記していた。400字詰め原稿用紙5枚、合計2000文字の反省文を書けとか巫山戯ふざけている。最初は真面目に反省の言葉を書いていたが、途中から考えることをやめることにした。そして現在、字の書き過ぎで手首が痛くなっている。腱鞘炎になるんじゃなかろうか。


 「ふー」


 生活指導の先生が出ていったので、俺は少し休憩することにした。廊下には斎藤(しんゆう)を待たせてある。俺は親友を教室に招き入れ、続きを書くように促した。


 「え? 何これ? え? 続きを書けって? え? え?」


 要領を得ない親友がいると大変だ。俺は埋めれば良いと告げ、窓辺の机に腰を乗せる。夕日が沈もうとしていた。もう秋だな。俺はニヒルな表情で感傷に浸ることにした。



 しかし、この世界はどうなっているんだろう?

 意味がわからないことだらけだ。

 セクスィ……

 結合系……

 軍服の母親……

 ハラッセオと言いながら拍手する教師……

 意味不明な量の反省文……

 ……一体どうやって真実を調べれば良いんだろう。


 「インターネッツ!!!」 


 俺は凄いことを思いつき(当社比)声を荒らげる。

 インターネットで検索すれば良いんだ。

 今の世の中、インターネットで調べられないことはない。

 小倉のヅラだって、インターネットで調べられる。


 俺はスマホを取り出し、Geegle検索をタップする。

 『セクシー』と素早くフリック入力する。

 素早いフリックは男子高校生のたしなみだ。


 そして、スマホの画面にはセクシーな女性達の写真が一面に出てきた。


 「セクシー女優やん!」


 俺はスマホに突っ込みを入れる。


 セクシー女優とはAV女優の隠語である。『金の舌』というテレビ番組で『キス我慢選手権』というコーナーにおいて、セクシー女優と濁して呼ばれたことが発端と言われている。最近ではAV男優もセクシー男優と呼ばれることもしばしば。


 検索結果の画像に、ちょっと可愛いセクシー女優がいたS倉まなという名前だ。艶めかしいGIFアニメーションが映されている。


 GIFとは『Graphics Interchange Format』の略で画像ファイルフォーマットの1つで、拡張子『.gif』が使われる。256色しか扱えないが、1つのファイル無いに複数の画像を保存することができるのが特徴だ。この複数の画像を連続で表示することによりあたかも動画のように見ることができる。これをGIFアニメーションと言う。


 思考が逸れてしまったな。

 いまはGIFより、S倉まなだ。俺は画像をクリックしリンク先へ移動する。これも世界を調べるために必要なんだ。どれだけ俺が知っている世界と相違点があるのか。それをきちんと調べる必要性がある。……おおっと、これはなんてテクニカルな動きなんだ。まるで腰の上でダンスを踊るかのように「ゴッ!」


 突然、激しい痛みが俺を襲い。床へと倒れ込む。


 「くっ。何が起きた。俺のセクシーの秘密が目的か?」

 「……それは確かに魅力的な内容だが、そういうことじゃない。何で斎藤が反省文を書いて、お前はエロ画像を見ているんだ。そもそも、ペアレンタルコントロールはどうなってる? 親に連絡しておくからな」


 倒れる俺の傍らに生活指導の竹中が仁王立ちしていた。


 「なっ! なんと無慈悲な」


 今の世の中、教師は皆、ロリコンで、ショタコンで、ペドフィリアだ。ニュースを見れば教師の不祥事だらけ。校長が児童買春の伝説を築く時代だ。善良な教師はもう日本にはいないのだろう。


 俺が愛情の枯れた砂漠のような時代に涙していると、セクシー女優のGIF画像が、突然、着信画面に切り替わり音楽が流れ出した。ショロム・セクンダ作曲のドナドナだ。

 画面には『漆黒のヴォルフガング。取らないとキレて何するかわからない。名前を必ず何度も聞く事』と説明付きで表示されていた。


 どう見ても、『混沌のマサシ』関連の人物だ。


 oh……


 俺は困り果てて、竹中にスマホの画面をみせる。


 「……さっさと出ろ。粗相のないようにな」


 なんと、竹中から了承が得られた。『漆黒のヴォルフガング』は教師にも知られるほどの傍若無人のようだ。どんな(いか)ついおっさんなんだろう。髭ともみあげが繋がっていることは間違えない。


 「マサシか? 私だ。何故直ぐに出ない」


  着信に応じた俺を迎えたのは、綺麗な声だった。


 「誰でしょうか?」

 「……くっ! わ……私だ。わかるだろう」


 素で疑問を上げてしまった。

 ふと脳裏に浮かぶ先程の言葉『名前を必ず何度も聞く事』……もしかしていじられキャラか?


 「私ではわかりません。誰でしょうか?」

 「くっ……貴様……しっ……漆黒の……ヴォルフ……ガング……」


 『漆黒のヴォルフガング』は消え入りそうな声で可愛らしく答える。


 「すみません。生活指導の竹中先生の声が大きくて、聞こえませんでした。もう一度お願いします」

 「なっ! まっ! 違う。違うから」


 面白くなってきたので、もう一度聞くことにした。何故か竹中は隣で焦っている。『漆黒のヴォルフガング』は相当偉い身分と思われる。


 「ヴォルフガングだ! これで満足か?」

 「何のヴォルフガングさんでしょうか?」


 大声で答えた彼女を俺は煽る。やべえ。超楽しい。


 プツン。ツーツーツー


 通話は途絶えた。彼女は怒ってしまったようだ。


 「おおお、俺は知らない」


 竹中はそう言うと、ダッシュで教室を出ていった。斎藤しんゆうは竹中の走り去った後を呆然と見ていた。まだ2000字は埋められていなかったので、俺は続きを書くように促すと再び、夕日を眺める。



 ……『キレて何するかわからない』


 電話に表示された着信履歴に残るその一言に、一抹の不安を感じた。



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