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作者は私  作者: わた
9/17

5-2

ルーカスの思いとは裏腹に馬車は今回の会場である精霊主様の間がある教会に到着した。

先に降りエリシアに対して手を伸ばす。

緊張した面持ちでルーカスの手を握り馬車を降りるエリシア。

次に母エマにも手を伸ばし傍目からは完璧な紳士としてエスコートする。

そんなルーカスの振る舞いに面白そうに目を細めるエマ。


「あら、ルーカス覚悟は決まって?」

「善処するだけです」

「ふふふふ」

「でも、あくまで主役はエリーねぇ様なので僕は目立たないようにします」

「あら、そんなこと言ってもさっきの約束は守ってもらうわよ?」

「……」


じゃあ先に行ってるわねと言って美しく去って行くエマ。

それを呆然と見つめるルーカス。


「ねぇ、ルー私たちも行きましょう?」

「……はい」



エリシアとともに会場に入るとすでにその中には着飾った子供達が楽しそうに集まっていた。

その周りでは保護者であろう大人たちが思い思いにグループを作り会話をしている。

その中には一際輝きを放つ母エマの姿もある。

ちらっと目が合いウインクをするエマ。

悪寒がして体に力が入る。


「ルー?大丈夫?具合悪い?」


はっとして隣を見ると心配そうに見つめるエリシア。


「いや、大丈夫。飲み物でも取ってくるよ」

「それなら私も一緒に」

「エリー!」


一緒に歩き出そうとした2人の後方から声をかけられ振り向く。


「ジェシカ!アン!」


知り合いなのか声の主を見た途端駆け出そうとするエリシア。

普段よりも高めのヒールを履いていることを忘れていたのかつまづいて体が傾く。

慌ててルーカスがエリシアの体を支える。


「エリーねぇ様、いい加減に直さないとルーナが怒りで倒れる」

「ルーナには言わないで」

「どうしようかな」

「ルー」

「いやいや、ねぇ様の為だよ。ほらいい加減起き上がって。今日のねぇ様は一段と重いんだから」

「最低」


慌てて自らの力で立つエリシア。


「冗談だよ。ほら飲み物取ってきてあげるから機嫌なおして」

「ケーキも」

「ほら友達が待ってるよ」


こっちを見ていたジェシカとアンと呼ばれた2人とエスコート役であるのだろう2人よりも少し年上の男2人に軽くお辞儀をして立ち去る。

礼儀のことを考えるならばあまり褒められたものではないが、ルーカスとしては姉がいるとしても知らない人に囲まれるのは心の底から御免被りたいので早急にその場を離れた。


果実水を2つと、エリシアが好きなチョコレートケーキを取り 会場を見渡す。

バルコニー近くで楽しそうに話しているエリシアを見つける。

さっさと渡して少し離れたところで存在を消していようと決意し歩き出す。


「ちょっと、何その服。仮にも貴族ならもっとマシなもの着て来たらどうなの?」

「アリア、そんなこと言ったらかわいそうよ。だってこの子の家、とってもお金がないんだもの」

「そうそう。この前私の家に頭下げに来てたわよこの子の父上」

「あらやだ乞食じゃない」


女の子の不快な笑い声が響く。

言われたい放題の男の子は俯く。

綺麗に着飾った女の子3人はボサボサ頭の男の子を座らせ囲っていた。


「本当にあるんだなこういうの。この年齢でもやっぱり人間はクソしかいない」


思わずと言った感じで足を止めてしまったルーカス。

さっきの声は聞こえないようにボソッと呟いた。

すぐに興味を失せたルーカスは巻き込まれないようさっさとその場から離れ、エリシアの元へ行くため少年から視線を外す。

よくある物語みたいに助けるなんてことはしない。

なんでわざわざそんなことをしなくちゃいけないのかわからない。

困っている人がいたら助けなきゃいけないわけじゃないし。

親切はあくまで自己満だ。

と自分の中で言い聞かせ前を向いて歩みだしたその時、ルーカスにぶつかりながらもこちらを見ようともせず女の子たちに突進していく1人の女の子がいた。

一瞬見えた女の子の見た目はブロンドのふわふわの髪に碧眼、ピンクの唇の絵に描いたような美少女だった。


「ちょっと、何やっているのよ!その子が何をしたっていうの!」


突然現れた少女に周りは呆然としている。

ルーカスも少女とぶつかった拍子に持っていた果実水とケーキをもろに被り大惨事だ。


「こんなところでこの子に正座させてあなた達何様なの?謝りなさいよ!」


呆然とルーカスもその少女を見つめる。


「いや、まずお前が謝れよ」


関わるのが面倒だが言わずにいられなかったルーカスが思わず口にしたが、周りはみんな彼女を注視していた為気づいた人はいなかった。


「この子が何をしたっていうの!ほら、あなたも立って。男の子でしょ」


周りが自分に注視していることに気づいた男の子は恥ずかしげに立ち上がる。


「……だれよあなた」

「私?私はマリー・スチュアートよ」


少女の名前を聞き、改めてルーカスは離れようと歩みだした足を止め少女をまじまじと見る。


「マリー・スチュアート…あいつが?」


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