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作者は私  作者: わた
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3-2

とっさに呪文を唱えたおかげで直撃は免れたが、その魔法はルーカスの身体を掠っていった。


「いってぇ……」

「ルーカス!」


後ろからエリシアの悲鳴が聞こえる。

アルフレッドも顔を真っ青にしてこちらを見ている。

大丈夫だと知らせるため手をひらひら振る。


「さて、お返しだ」


目の前のライオンを見つめる。

そして、左手を前に出す。


「ルーカス、まさか!」


アルフレッドが慌てて立ち上がろうとするが、肋骨をやったのか立ち上がれず、その場に戻る。


「止めろ!お前じゃまだ無理だ!」


アルフレッドの言葉を無視してルーカスは始める。


「我が魂において誓約する。我に下れ」


すると、左手が淡く光手の甲に陣が浮ぶ。

そして相手と目を合わせもう一度いう。

ルーカスの真黒な目は黄金色に輝いている。


「下れ」


一度誓約の儀が始まると誰も邪魔することが出来ない。

精霊が折れるか術者が力が尽きて死ぬかの二択である。

睨み合うルーカスと精霊を周りが心配そうに見つめる。

エリシアはアルフレッドに近づき手当てをする。


「ルーカス」


アルフレッドは不安で震えるエリシアを抱きしめる。

大丈夫とは簡単には言えなかった。





「アル!エリー!ルー!無事か!」


メイドに呼ばれたであろう父アレキサンダーが数名の兵を連れてやって来た。

今日は会議があるといっていたから知らせを聞いて飛んで帰って来たのだろう。

額には玉のような汗が浮かんでいる。

座り込んでいるアルフレッドとエリシアに駆け寄り現状を見て顔をしかめる。


「どういうことだ、アルフレッド」

「……お昼を食べていたらいきなりあの精霊が現れて」

「アル兄様は私たちを守ろうとしてくれたわ!」


叫ぶエリシアとボロボロのアルフレッドを抱きしめる。

エリシアは父の腕で泣き崩れる。


「ルーカスはいつから調伏を始めた?」

「30分くらい前です」

「私が散歩になんて誘わなければ…私が…」

「エリシア!そんなわけないだろう!」

「でもお父様」


さらに強くエリシアを抱きしめ、ルーカスを見る。

右腕から血を流しているのが見える。


「ルーカスは怪我をしているのか」

「……はい、私をかばって」


俯くアルフレッド。

肩を叩くアレク。


「じゃあ帰ったらあいつを褒めてやらなきゃならないな!」


明るく笑うアレク。

そんな父を見て苦笑するアルフレッド。




「しかし長いな」

「はい」


アレクが到着してさらに2時間が経った。

日が傾き始めた頃、ライオンの精霊がぶるっと震え消えた。

崩れ落ちるルーカスに駆け寄る。


「ルーカス!」


虚ろな目で父たちを見つめるルーカス。


「あれ、父様」

「あれ、父様じゃないよ!心配かけて!」

「なんか、ごめんなさい」

「…無事でよかったって言ってるんだよ!」


アレクに抱きしめられ穏やかな笑顔を浮かべるルーカス。


「兄様もごめんなさい。怪我は」

「お前ほどじゃないよ」

「よかっ」


パシンッ


一瞬何が起こったのかわからず、固まる。


「馬鹿!なんで逃げないの!本当に本当に心配したんだから。怪我してるくせに良かったなんて言わないで!」

「……ごめんなさいエリーねぇ様」

「本当に本当に死んじゃったらって……」


痛む手を伸ばしエリシアの涙を拭う。


「ごめんなさい」


エリシアは耐えられずルーカスを抱き締める。

ルーカスも震えるエリシアに腕を回し抱き締める。

そんなルーカスのエリシアに回された左手の甲は魔方陣が刻まれていた。


「よし、屋敷に帰るぞ」

「はい」


アレクに抱えられ屋敷に戻る。

その途中で力つき寝てしまったルーカス。

目覚めてから母エマからもこっぴどく叱られた。

母は2度と怒らすまいと心に決めたルーカスであった。


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