2-1
身体が持ち上げられている感覚で意識が浮上した真由。
ベッドのようなものに優しく置かれたのを感じて目を開ける。
するとそこには藍色のストレートボブの髪に碧眼の見知らぬ少女とメイド服を着た白髪混じりの茶髪に碧眼の老婆の顔があり驚く。
「お母さま!お母さま!目を開けたわ!私の弟が目を開けたのよ!」
少女が近くにいるのであろう母親にかけた大きな声についつい眉間にシワがより不快感をあらわにしてしまうが、少女が再びこちらを見たので表情を戻す。
「髪も目も真っ黒!アル兄様!この子すごい綺麗!」
少女に呼び掛けられたのだろうゆるふわ金髪に深緑の瞳の少年が顔を出す。
「ああ本当だ。我が弟は大物になるかもな」
嬉しそうに笑い合う2人。
「お父様!名前は何になさるか決めたの?」
「ルーカスだよ。男の子ならルーカス」
「ルーカス!」
今度は30代前半の金髪碧眼の男性が顔を出す。
愛おしそうに真由をみる。
「……うぅあう」
いきなり知らない人たちに覗き込まれ驚いた真由は見ないでくださいと言ったつもりだったが出て来た音はおおよそ言葉になっていなかった。
驚きで真由の時間が止まる。
「喋ったわ!もう喋ったのよ!」
皆嬉々としてこちらを見る。
何が何だかわからない真由は思わず泣き出してしまった。
すると今まで黙っていた老婆が抱き上げる。
「お三方、ルーカス様はお生まれになったばかり。あまり近くで騒ぐのはよしていただきたい」
「まぁルーナ、騒いでなんか」
「いいえ、エリシア様。事実、びっくりしてルーカス様は泣き出してしまわれた。レディならわかりますね」
「……」
「ルーナ、そんなに怒らんでも」
「アレク様も同罪です」
老婆に言われた少女は悔しげに下唇を噛み、男性は困ったように笑う。
「ルーナ、そこまでにしてあげて」
「奥様がそう言われるなら」
「ありがとう。アル、エリシアを連れて何か食べていらっしゃい。朝から何も食べてないでしょう。ルーカスも逃げないのだから、ね?エリシア」
「はい、母様」
「はい」
少年が少女の手を引いて出ていく。
母様と呼ばれた黒に近い青のゆるふわ髪に緑色の瞳の女性はベッドの上で優しく微笑んでいた。
「ほら、アレク様も。ついでに私に果物か何か持って来てくださる?」
「もちろんだ。任せろエマ」
男性も慌てて出ていく。
「全く公爵家の主だというのにいつまでたっても落ち着きがない」
「まあまあルーナ」
優しく笑うエマと溜息をつくルーナ。
真由はいきなりの情報の多さにいつのまにか意識を失っていた。
「あら、ルーカスは眠ってしまったのね」
「そうみたいですね」
ゆっくりと真由もといルーカスを先ほどのベビーベッドに戻す。
「元気な子に育ってほしいわ」
「そうですね」