第四四話【ディアボロスの帰還Ⅴ】
犯人グループのリーダーが現状にイライラを募らせていた時、コクピットに行っていた部下が戻ってきたのか、階段の方から足音が聞こえた。
「おいっ、遅いぞ!何をやっていた!・・・ん?」
男は階段から降りてくる部下を見るや、怪訝な表情を浮かべる。
部下の後ろからは、眼帯を付けた少年があとをついて階段から降りて来ているのだから当然である。
「おっまたせしましたー。」
相変わらずの馬鹿っぽい部下にいい加減ウンザリする男ではあったが、戦闘能力においては、間違いなく仲間の中でトップクラスの実力を持つこの男には一目置いているため、余程の事が無いかぎり、この男を切り捨てたりはしないが、部下が連れて帰ってきた少年を見ても今一状況が掴めない。
「なんだ、そのガキは?」
まぁ、当然の質問である。
「いやぁ、ちょっとした暇つぶしついでに、コイツに裏切り者を探して貰おうかと思いまして(笑)」
男は、目眩を起こし、傍にあった椅子に手を付いた。
―――どうしてコイツは、馬鹿なんだ。
気が付けば目頭に涙がたまっており、それを服で拭う。
そして、男を睨みつける。
「ちょちょっ、兄貴!目が逝ってますよ⁉やめて下さいよそんな目で見るのはー。」
「俺の銃がうっかり暴発してしまっても、事故だから恨むなよ?」
「わーまったまった!話を聞いて―!」
―――なんで、こんな人たちにハイジャックなんて出来たんだろう?
可哀想な物を見るように熾輝は、目の前の三流喜劇を見ながら、こんな人たちにハイジャックされた自分達を情けなく思うのだった。
「―――てなわけで、このまま何もしないよりは、子供の発想で奴を見つけて貰おうって・・・もちろん、その間に俺達も何かアイディアを考えますよ!?だから銃口を向けるのやめてー。」
部下の馬鹿さ加減に、もう怒る気力を無くしたのか、男は今日一番の深い溜息を吐いてから傍に立つ熾輝へと視線を向ける。
「・・・いいだろう、まぁ無駄だとは思うが、やらせてみろ。」
もはや藁にも縋る思いの男は、投げやりといってもいい心情で熾輝に彼らの裏切り者探しをさせる事にした。
「さっすがリーダー♪出来る男はやっぱり違うねぇ☆」
「・・・撃っていいか?」
部下を殺す事を本気で何とも思わなくなった男の目は、馬鹿に銃を向けるが、熾輝を盾にして身を隠したため、銃口を男から外した。
「おい、餓鬼やったな、リーダーのお許しを貰ったからゲームを始めちまおうぜ♪」
「・・・わかりました。でも僕が勝ったら薬を直ぐに返して下さい。」
「オッケー、オッケー分かってるって。」
「くすり?なんの事だ?」
事情を呑み込めていないリーダーを他所に、熾輝の裏切り者探しが始まった。
勝負内容は、熾輝が搭乗客の中から彼らの組織の裏切り者を探し出す事で、熾輝が勝った場合、犯人の男が奪った老人の薬を返す事と、速やかな人質の解放が約束された。
そもそも、彼らの目的は裏切り者を見つけ出し、始末することなのだから、当初の予定どおり、裏切り者だけが殺されて、他の乗客は無事に解放されるのだ。
「じゃあ、そろそろゲームを始めようか。」
「その前に、目標の情報を下さい。どんな人を探すのか、ノーヒントでは見当もつきません。」
「おっと、いけねぇ。そりゃそうだわな。」
犯人の男は、熾輝に自分達が探している裏切り者の情報を開示した。
「――――てなわけで、その裏切り者は日本の警察に護衛されながらこの機内にいる。」
「素性の知れない相手を組織に組み込んで、それで良く組織として動けていましたね。」
「結局裏切られちまったけどな。」
笑いながら答える男は、まるで他人事のように考えているのか、現状を楽しんでいる風にしか見えなかった。
――――結局、目標を殺せたとしても、こんな事件を起こしたんだ、この人達は空港で捕まるって事を考えていないのか?
犯人グループ達の余りにも酷い計画を目の当たりにして、熾輝は内心呆れていたが、しかし、こんなことをする彼らが、何の考えも無しに計画を実行するとは思えなかった。・・・思えなかったが、目の前の男は、明らかに後先を考えずに刹那的快楽を求めて今も熾輝にゲームを持ち掛けているため、根っこの部分では、本当に無計画なのではと、思ってしまう。
「さて、じゃあゲームを始めようか。」
そう言って、男はアナウンス用のマイクを手に持った。
「アテンションプリーズ♪えー、人質にされた302便の皆さんこんにちは、大変ご迷惑をお掛けしています。」
なんの真似だ?と思いながら熾輝は男の方を見つめ、それに気が付いたのか、男は熾輝に視線を向けると、何を思ったのか、熾輝の視線に対しウィンクで答えた。
「長々と椅子に座らせられている状況も飽きてきたと思いますので、ここらで一つ余興をしたいと思います。――――――実は、この機内には、俺達が殺したい相手が居るんですけど、そのターゲットの顔が分からなくて困っています。ぶっちゃけ、皆さんはソイツの巻き添えを喰らっちゃったんだよね。」
ご愁傷さまと手を合わせる男は、更に言葉を続ける。
乗客の反応はバラバラで、ふざけるなと憤る者や、何でこんな目にといった表情を浮かべる者と千差万別であった。
しかし、犯人が武器を所持している以上、だれも声を出して異議を唱える者はいない。
「そこで、この坊やに俺達のターゲットを見つけ出してもらう事にしました。」
ハイ拍手といって、男は手を叩く。
機内の隅っこでは、男の仲間が目を覆い、呆れかえっている。
「この坊やが勝った場合、坊やが望む物をプレゼントします。」
男は右手に持ったケースを掲げる。
「この中には、今ファーストクラスで苦しんでいる爺さんの薬が入っています。ぶっちゃけコレが無いと爺さんが天に召されます。爺さんがあの世に行っちゃう前に頑張って犯人を見つけてね♪」
再びウィンクを熾輝に送る男は、今のこの現状を心底楽しんでいた。
「あっ、そうそう!言い忘れていたけど、もしも坊やがターゲットを探せなかった場合、もちろん爺さんが死ぬけど、それとプラスで10人程死んでもらいます。」
男の言葉に機内がざわつく。
「聞いていませんよ。」
当然、熾輝は反論する。
しかし、男はニヤリと口角を上げて告げる。
「だって、今思いついたんだもん。それに勝負にはさ、リスクが付きものなんだよ。それと、殺す10人の中には、お前の妹も含まれているからな。」
今、この現状を支配しているのは、明らかに目の前の男だ。
もしも下手に逆らったら、どんな被害が出るか分からない以上、逆らう訳にもいかない。
「それじゃあ頑張って探して見よう♪制限時間は爺さんが死ぬまでだ☆」
そう言って、マイクを切った男は、乗務員用のシートにどっかりと腰かけた。
――――――さて、どうするか。
男に言いたいことは山ほどある。
しかし、今は与えられた情報を元に思考する他ないと理解しているので、熾輝はゆっくりと瞼を閉じて、情報整理を行い、深い思考の海へと意識を沈めた。
―――――――――――――
犯人の男の突然のアナウンスが終わり、エコノミーシートの一部の乗客が、現状の打開をどうしたものかと選択を強いられていた。
「クソッ!なんなんだよアレは!」
毒づいたのは、彼らのターゲットである男だった。
「静かにしていろ、見つかるぞ。」
男の狼狽っぷりを見かねて小声で注意を促すのは、彼の護衛を任された鈴木という警察官だ。
こんな映画みたいな状況に対し、彼もまた冷静ではいられない。
なにせ目の前の犯人グループは、あろうことか、子供にこの男を探させようとしていて、しかも、出来なければ乗客を10人殺すと言っているのだ。
「参ったね、これは。」
「何を呑気な事を言っているんですか。」
「いやいや、別に呑気になんかしていないよ。流石の私も少々焦っている。しかし、この状況をどうにかするには必ず大きなリスクを抱え込むことになる。」
「・・・どうにかって、なにか作戦があるんですか?」
「ああ。乗客が何人か死んでしまうが、私たちが犯人を取り押さえる。」
「却下です。」
「でしょうね。そもそも、犯人は気絶している奴らを除けば4人もいる。数の上では勝算が低すぎる。」
「では、どうするんですか?」
その問に対し、彼の上司はチラリと二人の間に座る男に視線を移した。
「最悪、彼方を差し出すかな?」
「ちょっ、待ってくれよ。」
「冗談よ。」
嘘だと言ってはいるが、鈴木には彼女が本気で考えている事が直ぐに分かった。
「しかし、現状我々には手出しが出来ない。であれば、この現状を変えられる可能性を秘めているのは、あの少年だな。」
「子供に期待するんですか?」
この上司は、何を考えているのかという呆れた眼差しを鈴木は向けた。
「期待はしてない。だけど、希望っていうのは、いつ何処からやってくるか分からないものよ。案外あの少年の身体は子供でも頭脳は大人かもしれないし。」
「どこの名探偵ですか。」
そんな会話をしている中、ようやく状況が動き出した。
――――――――――――――――――――――――
――――考察終了。・・・やっぱり、ある程度の絞り込みは出来るけど、特定には情報が少なすぎる。
「すみません、機内を見て回ってもいいですか?」
暫く考察したが、結局のところ、ターゲットを見つけ出す事が出来ない熾輝は、機内の乗客を見て回る事で、観察し、少しでも情報を集めようとした。
「いいぜ。一応俺が付いて回る。変な真似はするなよ。」
そう言うと、犯人の男が銃口を熾輝の背中に向けながら後に続いて歩き始めた。
じっくりと観察すること10分。
熾輝は、エコノミークラスの乗客をしっかりと見分した。
「他のクラスは見ないのか?」
エコノミークラスの見分を終えて、他のクラスのシートを確認しようとしない熾輝に疑問を持ったのか、先程まで現状を見ていたリーダー格の男が質問する。
「必要ありません。ビジネスクラスはシートとシートの間に通路があります。それでは、護衛する際に何か起きた場合に対処できませんし、僕だったら対処を守るために最低二人でサンドイッチする形で座ります。同じ理由でファーストクラスも除外します。」
熾輝の答えを聞いて、犯人の男たちからは関心の眼差しが向けられた。
しかし、犯罪者にそんな眼差しを向けられて嬉しくもなんともない。
「・・・すみません。トイレに行ってもいいですか?」
そんな熾輝を関心していた犯人達だったが、トイレに行きたいという熾輝の言葉に一瞬肩透かしを食らった感がある。
「離陸してから一度も行ってないんです。」
「・・・行かせてやれ。」
犯人側からの許可が下りたので、熾輝は通路奥にあるトイレへと向かおうとした。
当然、先程の様に銃を突きつけられてだ。
しかし、トイレへ続く通路の中程まで来たところで、少年の足が止まった。
「あの、それ向けるのやめて貰えません?出る物も出なくなります。」
「そういう訳には行かない。お前を見張ってなきゃならないしな。」
「僕みたいな子供に何が出来るっていうんですか。僕を見張るなら・・・お姉さん、」
唐突に、声を掛けられた乗客は驚いたのか、一瞬自分に声を掛けてきたことに気が付かなかった。
「え?わたし?」
「はい。トイレに着いて来て下さい。こんな恐い人に見張られながらだと出来ません。」
「何を勝手に『おいっ、どうでもいいから早く行かせてやれ、漏らされたらたまったもんじゃない。』」
見張りの男の声を遮って、リーダー核の男の声が、熾輝達が居るところまで届く。
「・・・早くしろよ。」
そう言って、見張りの男は乗客の女を立たせて、熾輝についていくように促した。
トイレ自体、そんなに長くは掛からなかった。
時間にして凡そ3分弱といったところだろう。
きちんと手を洗って、女性に礼を言った熾輝は、犯人グループ達の所まで戻っていった。
「お待たせしました。」
「・・・それで、分かったのか?」
「分かりません。だけど、かなり絞り込めると思いますので、後は残った人たちを消去法で消していって、目標を探します。」
「へぇー、そりゃすごい♪だけど、あてずっぽだったら罰ゲームを受けて貰うぜ。」
四人の犯人に見下ろされるままの熾輝を心配しているのか、それとも自分たちの事を心配しているのか、乗客は様々な考えを巡らせて、視線を向けている。
「面白い、ならやってみろ。」
最初は、全然乗り気ではなかったリーダー核の男や他の仲間も、いつの間にか熾輝の行動に一目置いていた。
それは、最初に熾輝が披露した推理が、余りにも得心がいくものであり、もしかしたらという期待が彼らの中に生まれたからなのかもしれない。
「それじゃあ、僕の言う通りに乗客をこっちのビジネスへと移動してもらいます。」
そういうと、まず熾輝が移動させたのは、通路側に座る乗客だった。
理由としては、先程熾輝が言ったとおり、警察官が護衛する対象を外側に配置するハズが無いため、通路側の乗客を除外したのだ。
次に同じ苗字の席の者、これは家族での旅行客を除外するためである。
たったこれだけの事で、200人近くいた乗客が残り30人ほどにまで絞り込まれた。
もともと、旅行シーズンでないこの時期だからこそ、利用客も少ないため、ここまで絞り込むことが出来たと言えるだろう。
「驚いた、まさかこれだけの事で、ここまで人数を絞り込むとは。」
正直、目の前の少年が此処まで出来るとは思っていなかった犯人は、再度、熾輝に関心の目を向ける。
犯人達の思いを知ってか知らずか、熾輝は新たに絞り込みを開始した。
「転売名簿は、ありますか?」
「なに?そんな物どうする。」
「お酒を買わなかった乗客を調べます。警察官なら職務中にお酒は飲めないですから、買わなかった人で、3人以上の並び若しくは、3人の並びで真ん中の人だけが飲んでいる者が怪しいので、それ以外は除外します。」
熾輝の説明に得心がいったのか、犯人は乗務員に転売記録を持ってくるように命令をし、早速熾輝のいうとおりに乗客を除外し、除外した者達をビジネスに移動させた。
「・・・まさかここまでとは。」
除外した後、残った乗客はたったの9人にまでなっていた。
いずれの乗客も3人が並んで座っており、それぞれが不安そうな顔をこちらに向けている。
「おい、次はどうすればいい?」
ここまで来たらもう見つけたも同然だと言わんばかりに熾輝をまくしたてるが、犯人は熾輝が黙っていると、支持が中々でてこない事に疑問を感じた。
「おい、どうした?」
「情報で除外出来るのはここまでです。あとは、どんな情報を使っても、彼方達を納得させられる理由が思いつかない。」
「なんだと?」
ここまで絞り込んでおいて、結局は見つけ出せないのかと落胆しそうになった時、熾輝の新たな一言で希望がでた。
「あとは、実際に乗客を見て判断します。」
そう言うと、熾輝は男たちを置き去りにして歩き始めた。
犯人の男4人が先行する熾輝にあわてて付いて行く。
そして、前列に座る1組目の前で足を止めた。
その3人をじっくりと観察する熾輝は、暫く黙っていた後、ようやく口を開いた。
「この人達は違います。」
「何故だ?」
当然のように理由を伺う犯人は、熾輝の回答を待った。
「まず第一に、手前の人と一番奥の人は、見た目が20歳前後で護衛任務に就く警察官にしては若すぎますし、新人をこんな任務に起用するとは思えない。僕だったら絶対にそんな素人に守られたくありません。それに真ん中の人は、同じ年くらいに見えますし、もしも目標が彼方達に協力していたのが5年以上前だったら、年齢的に15歳から協力していた事になりますけど?」
「・・・奴が組織に協力していたのは10年以上前からだ。10歳の餓鬼がそんな事できるわけがねぇ。」
「兄貴、名簿上は、こいつ等3人とも19歳です。」
「お前等、渡航の理由は何だ?」
そう質問をしたところで、三人の内の一人が答える。
「ひっ、えっと、僕たち大学生で、サークルの旅行の帰りなんです。」
「ちっ、んだよ。ただの学生か。・・・おい、行っていいぞ。」
そう言われて、三人は慌ててビジネスクラスへと駆けて行った。
そして、次に同じ列にいた3人組へと足を運び、再び観察を始める。
「・・・この人達ではありません。」
「理由は?」
「日本の警察は、外人を採用しません。3人の内、1人は外国人で、もう一人が恐らく妊婦です。その二人に挟まれているって事は、真ん中の人は必然的に除外されます。」
「なぜ妊婦とわかる?」
「この人が服のポケットに着けている札の様な物は、妊婦だと一目で分かるように国が作った物だからです。」
女性の胸元には、妊婦用のアクセサリー?が付けられており、犯人の男もいつだったか、国がそのような物を配布しているとニュースで見たことがあった。
「よし、お前たちも行っていいぞ。」
この時点で、3人が残された。
つまり、この三人の内の一人が彼らのターゲットになる。
「あん?ちょっといいかい。」
ここで、犯人の一人が声を上げた。
声の主を見ると、熾輝にゲームを持ち掛けた男が挙手をして立っていた。
「なんだ?」
「えーっと、あと3人残っているって事は、3人ともぶっ殺しちまえば、楽じゃないっすか?」
男の提案は予想外過ぎて、流石の熾輝も耳を疑ってしまった。
「お前は、何をいっている。」
「いや、すんません。俺が言いたいのは、もしもそこの坊主が3人の内から見つける事が出来なかったら、3人とも殺せばいいんじゃないかと思っただけで・・・だってもう3人まで絞り込んだんだし、乗客全員を殺すわけじゃなしに、3人だけなら良くないかなぁって。」
「それは、意味が無いと思います。」
男の提案を真っ先に否定したのは、熾輝だった。
「仮に僕が3人の中から目標を見つけられず、3人を殺すとしましょう。だけど、それは、僕の推理が正しかったらの話で、最初の推理が間違っていたら、目標は既にビジネスクラスに移動させた後かもしれません。」
「なんだ、自信がないのか?」
「それをこれから確認します。」
そう言って、男の提案を無理やりに終わらせ、熾輝は歩き始めた。
――――危なかった。それにしても、この人、本当に何をするのか全然読めない。
内心溜息をつきながら、残り3人の席まで熾輝は歩く。
そして、最後の3人の席の前で足を進めた熾輝は、後ろから4人がしっかりと付いて来ているかを確認する。
犯人の内、3人は熾輝の後ろを、そして1人は反対側の通路を歩いている。
いずれも銃で武装している犯人達は、残り3人となった乗客を見据えながら進行する。
そして、ついにその時が訪れた。
「――――見つけました。」
そう言って、熾輝が指を指したのは、先程、トイレに付き添った女性・・・その横に座る一人の男性だった。
その瞬間、犯人達は熾輝を押しのけて、全員が男へと銃を向けた。
「一応理由を聞かせてくれ。」
銃を構えたままの男は視線を裏切り者から外すことなく熾輝に理由を問いかける。
しかし、いくら待っても熾輝は話をしようとしない。
その空白の間がどれ程の間だったのかは分からないが、犯人にとって空白の時間が妙に嫌な予感を狩りてていた。
そして、
ドサッ!
仲間の内の一人、買収した航空警察の男がその場で崩れ落ちたのだ。




