第三一話
日本には、対霊災専門の国家組織が存在する。
【超自然対策課】公には公表されていない組織だが、日本の公共機関の一つであり、彼らの主な任務は、霊的災害の対処及び犯罪魔術師及び能力者の検挙を任務としている。
その組織のトップである12人を十二神将と呼び、公には五柱に次ぐ実力者達とされている。
また、国家組織の他に、古くから日本の霊災を払う仕事を生業としてきた一族も数多く存在し、その一族を取りまとめる十の一族の長と肩を並べると言われている。
一族の長ともなればそう簡単に現場へと出る事が出来ないが、同じ力量を持つ彼らは国の要請あれば、どんな現場にも駆けつける事が出来ることから、その機動性は日本にとって貴重ともいえる。
そんな十二神将の一人、風間透は目下、一人の女性に正座を強いられ、お説教を受けていた。
「ねぇ風間君、なんで熾輝君に攻撃なんてしたの?」
五柱東雲葵は、特に権力がある訳ではないただの民間人に該当するが、日本でも五指の実力者である。
「・・・すみません。」
「謝ってほしいわけじゃないの。私は理由を聞いてるだけなんだけど?」
「・・・。」
「なんで黙っちゃうのかな?」
葵は、努めて笑顔を作っているが、目が笑っていないことは、明白である。
何も出来ないと判断した熾輝は清十郎の傍で、葵の説教が終わるのを待っていた。
そんな折、熾輝たちがいる場所に揃って到着する2人の人影が草木を掻き分けてきた。
昇雲と白影である。
到着早々、なんともシュールな状況に揃って状況が呑み込めていない。
「師範、老師。」
そんな二人の元へ熾輝が駆け寄ると、二人も揃って清十郎と熾輝の方へと歩みを進めた。
「おお、熾輝さん怪我はありませんかな?」
「怪我はしましたが、大したことはありません。」
熾輝のボロボロな体を見た白影だったが、葵がこの場に居ることから、既に診察を終え、問題ないと言われているのだと理解した。
「それにしても、これは、どういう状況だい?」
現場には、正座をさせられた男が葵から説教を受け、その他に気絶したガラの悪い男と、清十郎に見張られている男がいる。
事情を知らないものから見れば混沌だ。
熾輝は、事のあらましを二人に説明した。
それはもう懇切丁寧に。
気が付けば老人二人が加わった3人から説教を受ける風間。
一応言っておくが、彼は十二神将
日本の国家組織である超自然対策課の12人のトップである。
公務員であり、警察と同じ逮捕権をもったいわばお巡りさんと同じ権限をもった人。
偉い人である。
「・・・わざとじゃないよな?」
「?」
弟子を溺愛する二人に今までの経緯を話せば、こうなることは予想できる清十郎は、念のため熾輝に確認を取るが、誤解無きように、熾輝はいたって真面目に話をしただけである。
「その辺にしておかんかい」
いきなり声を掛けてきたのは、熾輝のもう一人の師である佐良志奈円空だった。
何時の間に現れたのか、4人の師匠の誰もが彼の接近に気が付けなかった。
「法師」
「おう、熾輝無事でなによりだ。」
熾輝の頭を二回ほど軽く叩いた円空は、説教をしていた3人の元へ行く。
「馬鹿者共が、弟子の前で恥ずかしい事してんじゃねえ。」
円空のたった一言で、風間を解放した3人は、トボトボと熾輝の元まで戻ってきた。
「(老師は、ともかく師範を黙らせた。・・・法師すごい。)」
等と思っていた矢先、円空は大方の事情を既に把握しており、風間に熾輝を襲った結社の身柄を引き渡す旨の話を始めた。
「結社の連中は、全員生(大半が半殺し以上)かして捕縛しておいた。あとお前さんの部下なんだが・・・」
「何か?」
「いやぁ、結社の連中と間違えて一緒に捕縛しちゃった。」
数百歳の人間がテヘっと、とんでもない事を言った。
「先生、確か十二神将って公務員だから、もしかして公務執行妨害で逮捕されちゃう?」
「・・・。」
葵はその質問には、答えられなかった。
仮にも彼らは公務員。
そんな彼らに手を出せば、罪に問われることは間違いない。
ちなみに葵も風間に正座をさせていたのだが、これも立派な強要罪である。
「あちゃぁ、まったくだらしのない部下で、お恥ずかしい。」
「もしかして儂、捕まっちゃう?」
「いえいえ、これもいい勉強になったでしょう。実力を認められてウチの組織に入った彼らは、どいつもこいつもプライドばっかり高い連中で、正直いつ鼻っ柱をへし折ってやろうかって思っていたので、丁度良かったですよ。」
二人してガハハハハと大口を開けて笑っているが、正直駄目な公務員と熾輝は心の中で思ってしまった。
「さてと、まあ、そこら辺の話はこれで終わりとしてだ。」
そう言った円空の顔が急に引き締まり、思わず風間も身構えてしまう。
「お前さん、こいつらのアジトを教えてくれねぇかな。」
円空の問い掛けに対し、一瞬にして風間の顔色が変わった。




