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鍛鉄の英雄  作者: 紅井竜人(旧:小学3年生の僕)
大魔導士の後継者編【下】
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第一六一話 羅漢vs剛鬼

「覚悟しな、おっさん!こうなた俺は誰にも止められないぜ!」


羅漢との戦闘で、劣勢を強いられていた剛鬼であったが、遂に己が内に宿る魔力を開放させ、魔術を使用する事を決めた。


発動した魔術は、身体強化ハイパーフィジカル粉砕クラッシュの2つ…


しかも、剛鬼は人間とは違い、身体の一部を欠損させても魔術発動をするために必要な集中力を欠くと言う事はない。…そのため、再生を発動させるのに何の支障もないのだ。


「ならば、私は貴様の全てを受け切って見せる」

「へっ、強がってんじゃあねぇ。魔術を解放させた俺達、死鬼神を甘く見るんじゃあねぇぜ!」


言って、最初に仕掛けたのは、やはり剛鬼の方だ。


爆発的に底上げされた身体能力によって、一瞬で羅漢へと肉薄した。


「喰らいな!クラアアアアァッシュ!」


手にしていた鉄球を投げるのではなく、直接叩きつけた。


しかし、羅漢の十字防御クロスアームブロックに触れた瞬間、先と同様に威力を逃がした事により大地が割れる。


「無駄だ。その技は既に見切った」

「チィッ―――!!?」


無効化され、舌打ちをした直後、剛鬼の頭が吹き飛んだ。


「いくら身体強化を施したところで、技術の足りない貴様に私を傷つける事はできない」

「――――、………くそ、マジかよ…アンタの身体、一体どうなってやがる!」


吹き飛ばされた頭部が再生の効力によって即座に修復された剛鬼は、羅漢に対し悪態を吐いた。


主砲である粉砕クラッシュがまるで通じていない…正直、剛鬼が使える魔術は、多くはない。


魔導書の術の中でも、適性があるのは、数種類。…その中でもクラッシュは彼の使える魔術の中で一番の威力がある。


捕捉するならば、肉弾戦に長けた術が相性がよく、それ以外は大した効果を発揮する事ができない。


これは、刹那にも言える事だ。


「……来ないのか?」

「ッ、―――」

「では、こちらから行くぞ」


主砲を破られた事から羅漢攻略の手段が見つからず、戸惑っていた剛鬼に対し、今度は羅漢がしかけた。…とは言っても彼の場合は、ただ殴る以外の戦法はない。


「ッ、――!!?」


しかし、その殴ると言う戦法こそが、彼にとっては必殺の型なのだ。


「ッ――ッ―――ッ―ッ――!!!!?」


次々に撃ち込まれていく拳が、剛鬼の四肢を、頭部を吹き飛ばしていく。


「ガァッ、…くそが!」


剛鬼は、決して弱くはない。…羅漢が強すぎるのだ。


秘術によって強化された肉体が意味を成さず、防御の上からでも羅漢の鉄拳は剛鬼の身体を破壊し、吹き飛ばしていく。


「こ、この俺がぁ…魔術も使えない、ただの式神が何故そこまでの力をッ―――!」


破壊されれば再生し、そして再び破壊される。


攻め手を失った剛鬼にとって、羅漢を倒すイメージがまるで湧いてこない。


しかし、再生がある限り剛鬼の負けはない。……今までは、そう思っていた。


「……どうした?早く再生しろ。修復速度が遅くなっているぞ」

「て、テメェッ――!」


再生した頭部が容赦なく吹き飛ぶ。


魔力の喪失……元々、ローリーの秘術は、絶大なる効力を発揮する代わりに膨大な魔力を消費する。


故に、何度でもよみがえると思われた再生にも弱点が存在したのだ。


「死鬼神、…外法げほうの力とは、この程度か」

「ッ!?……な、にも知らねえ奴がァ……知った風な口を叩くなああぁああ!」


まるで相手にならないと語る羅漢…しかし、それが剛鬼の逆鱗に触れた。


磁力マグネットオオオォオオオッ!」


肉弾戦から投擲武器を駆使しての戦法に切り替えた剛鬼、しかし…


「その戦法も承知している」


羅漢には、熾輝との知識共有によって、剛鬼の戦闘記録が存在する。


故に、マグネットの力で軌道を変えられた鉄球に対し、問題なく対処できる。


襲い来る鉄球を難なく受け止めた剛鬼、……だったが、とある違和感に気付いた。


「粉砕の術式が無い…いや、これは―――」

おせえよッ!」


先ほどまで鉄球に込められていたハズの粉砕が起動しない。……その代わりに別の術式が込められていた事に気が付く。


しかし、羅漢が気が付くより先に剛鬼がマグネットを駆使して鉄球に接続されていた鎖を操り羅漢に一瞬で巻き付けた。


「…この程度の拘束、私には無いに等し―――」

「ダアアアァアアアラアアァアアアッ!」


自身の身体を封じていた鎖を引き千切ろうとした瞬間、剛鬼が仕掛けた。


両腕に込めるは、万物を破壊する秘術【粉砕クラッシュ


「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ―――」


怒涛の勢いで撃ち込まれる粉砕の連撃ラッシュ…今までの戦い、羅漢はクラッシュを受ける際、十字防御から威力を逃がす技を使用していた。


―(なら、鎖で両腕を封じられている状態で、クラッシュの連撃を無効化できるか!)


最後の特攻とも呼ぶべき剛鬼の猛攻が羅漢を襲う。しかし…


「……鬼殺おにごろし」

「ッ―――!!?」


撃ち込まれる粉砕クラッシュ、その全てがことごとく受け流され、大地に爪痕を刻んでいく。


「ち、ちくしょおおおおおぉおおおッ!」


ありったけを込めた剛鬼の攻撃は、ついぞその漢に傷を負わすことなく失速し、遂に膝を着いてしまった。


「終わりか?」

「…………あぁ」

「そうか」


全力だった。文字通り全ての力を出し尽くしても目の前の漢には届かなかった。


この仮初かりそめの肉体を手に入れてから剛鬼と言う死鬼神は、強者だった。


普通の式神と違い、高い身体能力、高い霊力、何よりも特別だと言うに相応しい魔術すら使いこなす事ができる。


なのに届かなかった・・・


「最後に言い残す事はあるか?」

「…そうだなぁ」


遺言くらいは聞いてやるという羅漢の言葉に応える様に口を開く。しかし…


「お前達に遥斗はらせねえッ!」


負けを認めたかに見えた剛鬼の目が怪しく光る。


未だ鎖の巻き付いた状態の羅漢に飛びつき、ガシッと組みついた。


りぃなオッサン!一緒に逝ってもらうぜ!」


言った直後、鉄球に潜んでいた術式が起動する。


「俺の全魔力だ!喰らいやがれええぇええッ!」


おとりと見せかけていた鉄球、…しかし、その中に潜んでいた術式は【爆発ボム


剛鬼は、己の敗北を悟り、道連れ…自爆を選んだ。


そして、起動したボムの効果によって、一帯の酸素を燃やし尽くし熱膨張の産物が驚異的な破壊を生み出した―――









そして、…


「――――固すぎだろ、……おっさん」


爆心地から姿を現した2人、…組みついていた手が力なく解かれ、剛鬼は地に倒れ込み、それを見下ろす漢……


「漢は、最後まで諦めてはならない。…敗北を意識した時点で、貴様は負けていた」


最後の特攻を仕掛けた剛鬼、…力を使い果たし、意識を失った状態の彼に羅漢の言葉は、届いたのだろうか―――


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