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鍛鉄の英雄  作者: 紅井竜人(旧:小学3年生の僕)
大魔導士の後継者編【中】
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第一二二話【逃走中Ⅶ】

教会の外壁に体を大の字にして埋められたシルバリオンを前に円空が相対する。


「…やはり、俺の見立てに間違いは無かった」


外壁からゆっくりと体を引き剥がしたシルバリオンが嬉しそうに顔を緩ませる。


そして、円空の一撃によって砕かれた鎧が音を立てて弾け飛んだ。


「この鎧は俺の力を抑えるための封印!それが解かれたという事は、つまり!お前は全力の俺と戦わなければならないという事だ!」

「そ、そんな!聖騎士長はいったいどれ程の力を隠しているというんだ!」

(エンクウさま!逃げて!)


溢れ出す力が大気を震わせ、濃密なエネルギーがシルバリオンの姿を揺らす。


「いいから掛かって来い」


対する円空は柳に風の如く!右手でクイクイと手招きをして挑発をしている。


「フ…そうだな!」


弾かれたように飛び出したシルバリオン、その高速の動きをパーシアは目で追う事が出来ず、刹那の瞬間に円空の前に躍り出た様に見えた。


放たれる高速の拳、残像すら残さず破壊の連打が円空を襲う。


しかし、円空は襲い来る拳の雨を全て捌く!捌く!捌く!捌く!


「ふははは!楽しいな!サラシナ!」


連打を浴びせるシルバリオンの動きが急に止まった・・・かと思えば、一瞬で円空の背後に回り込み蹴りを放つ!


(エンクウさま!!)


防御が間に合わず、振り向いた瞬間に一撃を喰らうと、そのまま先程シルバリオンを吹き飛ばした協会に向かって吹き飛んだ!


だが、飛ばされる最中、ジグザグに大地を踏み鳴らして勢いを殺しつつ距離を取る。


「逃がさんぞ!」


再度、高速で円空との距離を殺し、拳と蹴りを叩きこむ!しかし、その全てを防御し、直撃を避けつつ後退を続ける。


「ああ!危ない!」


後ろには教会の壁がある。このままでは逃げ場を失って、外壁に激突してしまう・・・・しかし!円空は後ろを振り向くことなく、壁に足を付けて直角に登り始めた!


「か、壁走り!?」


まるで重力を無視した円空の動きにパーシアとステイシーが驚愕する。


そして、円空を追うシルバリオンは、自らのオーラを放出して教会の外壁を登り始める。


激しい衝突音が大気を震わせ、教会の至る所が戦いの余波で破壊されていく。


建物の天辺に到達した円空が跳躍する間際、1つの影が彼を追い越した。


「ふははは!上を取ったぞ!」

「……。」


戦いにおいて、相手の上を取るという事は、勝負を分けるステータスとも言える。しかし、円空はシルバリオンが飛び越す間際、彼の足を掴んで、そのまま地面に投げつけた。


「なに!?」


凄まじい落下スピードに体勢を立て直す暇すら無く地面に激突すると、勢いそのままに木々を薙ぎ倒しながら森の奥へと吹き飛んでいく。


円空は追撃すべく跳躍すると、森の中を今も吹き飛んでいたシルバリオンを踏みつけるように着地した!


グハッ!と体内にある酸素を外に吐き出す音を漏らす。


だが次の瞬間にはギロリと円空を睨みつけ、連打を繰り出す。


地を背にしたシルバリオンと空を背にした円空の応酬が森の地形を変えていく。


気が付けば森の中を疾走して常に攻撃を繰り出し合う両者


「やはり強いなサラシナ!この俺と互角に戦える相手は初めてだ!」


歓喜に湧くシルバリオンに「そうかい」と短く返した円空は、更に「喋ると舌を噛むぞ」と忠告して、一気に間合いを詰め、一撃を叩きこむ。


再びグハッ!と息を吐き出し、巨木に体を打ち付けるシルバリオンだったが、決して倒れない。


「ははは!どうやら体術は貴様に分があると見た…ならば!」


シルバリオンは帯刀していた2本の内、1本の長剣を抜刀した。


「この聖剣は名を不滅の刃デュランダル、刃毀れ1つせず、また折れる事もない!この剣に切れぬ物は無いと言い伝えられている…そして!」


抜き放ったデュランダルで空を切った瞬間、見えない斬撃が放たれた!


それを円空が身体を仰け反らせて躱すと、後方の樹木が切断された!


「俺の能力は視界に収めた物体に力を伝える!故に間合い要らずの必殺剣をいつでも放てる!」


体勢を崩した円空に向けて更に斬撃の嵐を浴びせる。が、円空が地に手を付いた途端、大地が隆起して大きな壁が一瞬にして形成される。


しかし、デュランダルの斬撃が壁に衝突した瞬間、スパッ!という小気味よい音と共に障壁が切断された。


ガラガラと崩れ落ちる壁の向こうが露あらわになると、そこに円空が・・・いなかった。


「ヤツめ!何処に――!?」


グッ!と息を詰まらせる。円空の姿を見失ったと思った瞬間には、いつの間にか背後を取られ一撃を貰っていた。


再び森の木々を薙ぎ倒しながら吹き飛び、森を抜けた先には元居た教会に戻ってきていた。


「な!?」

(エンクウさま!?)


まるでトラックに跳ねられたような勢いで森から現れたシルバリオンに驚愕する2人、そんな彼女等に目もくれず、デュランダルで地面を突き刺す事で衝撃を殺して急停止を掛けて止まる。


「そうだ!それでこそ倒し甲斐がある―――」

「千手拳」


森の中に居たハズの円空が突然、目の前に現れたかと思えば、次の瞬間には、まるで円空から1000の腕が生えているかのような光景が視界に映った途端…


ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!


それが一斉にシルバリオンを襲った!


「ぐはあああっ!!」


ボロ雑巾の如く身体をボロボロにしたシルバリオンが宙を舞った!


「ま、…まだだ!ならば、もう1つの切札と奥の手を使おう!」


瞬間、彼の右肩にある小さな痣が脈打つように光り輝き、同時にシルバリオンの身体が発行した。そして腰に携えたもう1本の短剣を引き抜いた。


「聖剣ベリサルダ!聖痕スティグマを開放した状態の一撃を喰らえば雑魚など塵も残さず消滅する!」


全エネルギーをベリサルダに集中させ、地上に居る円空に向けて消滅の一撃を放った。


「ならば、こちらも応えよう。」


迫る消滅の光刃に円空は腰高に構えた拳に力を集束させていく。


「秘拳…鳴鳳決殺(めいほうけっさつ)


消滅の一撃と円空の拳が激突した瞬間に勝負は決まった!放たれた一撃を完全に押し返し、シルバリオンを呑み込むと、破壊の余波が雲の海に大穴を開けて、そのまま天を貫いた。


次の瞬間には力を使い果たし、満身創痍となったシルバリオンがドサリと音を立てて空から降ってきたのだった。


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